コンテンプト・オブ・コート 7-42
アンカレッジ市内の教会。
礼拝堂には、カーターの棺が安置されていた。祭壇の前には白い花が並び、参列者用の椅子は半分ほど埋まっている。
親族の姿はなかった。
カーターの妻は亡くなっている。子供もおらず、葬儀を取り仕切る親族もいなかった。マイクたちが手配を引き受け、教会で簡素な葬儀を行うことになった。
マイクは棺から少し離れた席に座っていた。隣にはローリーがいる。エイダンとジム、その部下たちも後方に並んでいた。
牧師が聖書を閉じ、参列者を見渡した。
「カーター氏は最後まで自分の信じるものを守ろうとしました。そのことを、私たちは忘れずにいたいと思います」
牧師の言葉が礼拝堂に響いた。
マイクは棺を見つめた。
カーターは市長の殺害に関与していなかった。しかし、警察官としての立場を利用し、コールのために動いていた過去がある。自分が犯した罪を認め、最後にはコールに立ち向かおうとした。
その結果、殺された。
マイクは目を伏せた。
マイクとエイダンはカーターを救出するため、武装した男たちと交戦した。現場では複数の負傷者が出ていたはずだった。
だが、新聞でもテレビでも、その事件は報じられていない。
警察が捜査に入った様子もなかった。
カーターの死については、警察が捜査を進めていると聞いていた。しかし、現場の状況や関係者への聞き取りについて、具体的な進展はほとんど伝わってこない。捜査が止まっているのか、情報が外に出ていないだけなのかも分からなかった。
「不自然ね」
隣でローリーが言った。
マイクは彼女を見た。
「何が?」
「倉庫で銃撃戦があったのに、報道が一切ない。カーターの死についても、警察は何を調べているのか分からない」
「偶然じゃないだろう」
「コールが動いている?」
「可能性はある。だが、今は何も断定できない」
マイクは祭壇に目を戻した。
牧師が祈りを終え、参列者たちが順番に棺の前へ進んだ。花を手向ける者もいれば、黙って頭を下げる者もいる。
マイクは席を立ち、棺の前に立った。
「……遅かったな」
小さくつぶやいた。
カーターに対して言ったのか、自分自身に向けた言葉なのか、マイクにも分からなかった。
そのとき、礼拝堂の入口が開いた。
コールが入ってきた。
黒いスーツに身を包み、付き添いの者を連れずに歩いてくる。参列者の視線が一斉に集まった。ローリーは顔を上げ、コールを見た。
コールは棺の前まで進むと、足を止めた。
「友よ、残念だ。ゆっくり休んでくれ」
まるで長年の友人を悼むような口調だった。
ローリーが立ち上がった。
「殺しておいて弔問とは、ご立派だこと」
コールはゆっくりとローリーに顔を向けた。
「見たのか?俺が殺すところを?」
ローリーは答えなかった。コールの目を見据えたまま、動かなかった。
マイクも何も言わなかった。
コールは二人を順番に見た。やがて棺に視線を戻し、上着の前を整えた。
「失礼する」
それだけ言い、出口へ向かった。
誰も引き止めなかった。
コールが礼拝堂を出る直前、足を止めた。振り返り、マイクに視線を向ける。
「残念だったな」
コールは口元にわずかな笑みを浮かべ、教会を出ていった。
扉が閉まる。
ローリーは拳を握りしめていた。エイダンが立ち上がりかけたが、マイクが手で制した。
カーターは死んだ。そして、コールは市長として何事もなかったように振る舞っている。
