コンテンプト・オブ・コート 7-36
薄暗い照明の下で、カーターは椅子に縛りつけられていた。顔には殴られた痕が残り、口元には乾いた血がこびりついている。意識を失ってから、どれほど時間が経ったのか分からなかった。
ジョニーが近づき、カーターの顔を覗き込んだ。
「まだ寝てるのか。しぶとい奴だな」
ジョニーは近くに置いてあったバケツを持ち上げた。中の水を、カーターの顔に浴びせる。
カーターの身体が小さく動いた。水を吐き出し、ゆっくりと目を開ける。
「起きたか」
ジョニーがバケツを床に置いた。
そのとき、倉庫の入口からコールが入ってきた。ジョニーは姿勢を正し、道を空ける。
コールはカーターの前まで歩いてきた。濡れた顔を見下ろし、椅子の向かいに立つ。
「生きてるか?俺だ」
カーターは目だけを動かした。
「ハミルトン・ナショナル・バンクの情報をマイク・ハンターに漏らしたのはお前だな?」
カーターはすぐには答えなかった。やがて、口元に笑みを浮かべた。
「ざまあみろ」
コールは小さく息を吐いた。
「寂しいじゃないか。俺を裏切るなんて、お前と俺の仲だろう?」
「お前は終わりだ」
カーターの声はかすれていた。それでも、言葉には迷いがなかった。
コールは首を横に振った。
「正気じゃないな」
カーターは黙ってコールを見返した。身体を動かそうとしても、拘束が解ける気配はない。殴られた痛みが残り、頭も重かった。それでも、視線をそらすつもりはなかった。
コールはカーターから目を離し、ジョニーに向き直った。
「俺は敵は許せても、裏切者だけは許せない」
ジョニーはカーターを一瞥した。
「どうしますか?」
コールは少し考えるように間を置いた。
「若い奴らに処理させろ」
「分かりました」
ジョニーは入口付近にいた男たちへ目配せした。数人の若い男が倉庫の奥から姿を現す。彼らはカーターのそばまで来ると、何も言わずに立ち止まった。
コールはもうカーターを見ていなかった。
「行くぞ」
ジョニーがうなずき、コールの後に続く。
二人は倉庫を出た。外では冷たい風が吹いていた。コールはセダンの後部座席に乗り込み、ジョニーが運転席に座る。
「出せ」
セダンは倉庫の前を離れ、道路へ出ていく。
エイダンとジムは車の陰からコールの姿を確認した。
「出てきたな」
ジムが言った。
エイダンは倉庫の入口を見た。見張りの男たちは、コールを見送った後も持ち場を離れない。
「カーターは中にいるはずだ」
「俺が残る。お前はコールを追え」
ジムはエイダンの顔を見た。
「一人で大丈夫か?」
「マイクが来る。コールたちを見失うわけにはいかない」
ジムは短くうなずき、運転席に戻った。エンジンをかけ、コールのセダンが向かった道路へ車を出す。
エイダンは倉庫から見えにくい位置へ移動した。携帯電話を取り出し、マイクからの連絡を待つ。
倉庫の中では、カーターのそばに若い男たちが集まっていた。
