コンテンプト・オブ・コート 7-25
聴取室には、金属製のテーブルと三脚の椅子が置かれていた。壁際のカメラが室内を記録している。
ドミニクはテーブルの向こう側に座っていた。スーツの襟元を整え、目の前の二人を見ている。銀行の本店が捜索を受けた後、検察に身柄を押さえられた。だが、表情にはまだ余裕が残っていた。
バンスはファイルを開いた。隣にはカーティスが座り、記録用のノートを広げている。
「ドミニクCEO。アーバンコア・イノベーションズへの融資について、もう一度確認します」
「何度聞かれても同じですよ。新人行員のミスです。私は何も知らない」
ドミニクは落ち着いた声で答えた。
「新人のミスで片付けようと?」
バンスは資料から目を上げた。
「その行員は自殺しましたね」
ドミニクの指が、テーブルの上でわずかに動いた。
「お気の毒なことです。しかし、私は彼の行動まで把握していたわけではありません」
「アーバンコアだけじゃない」
バンスはファイルから数枚の書類を取り出した。融資記録、関連企業の登記情報、資金移動の一覧。テーブルの上に並べていく。
「ハミルトン・ナショナル・バンクに関連する不審な融資記録は、これだけある。融資を受けた会社の多くが、その後に倒産している。資金の行き先も不明瞭だ」
ドミニクは書類に目を落とした。
「それは銀行の通常業務の範囲です。融資先が倒産することは珍しくない」
「偶然が何度も重なったと?」
バンスは一枚の資料を指で押さえた。
「あなたがハミルトン・ナショナル・バンクのCEOになった後、多くの会社が倒産している」
カーティスが口を開いた。
「倒産した会社の登記や資金の流れを調べました。融資を受けた後、短期間で資金が移されているケースもある。事業を継続するための融資だったとは考えにくい」
「それは新人が……」
「新人の名前を出せば済むと思っているんですか?」
バンスが言葉を遮った。
「その行員はもういない。融資を承認した責任者は誰だ?」
ドミニクは口を閉じた。
バンスは別の資料を取り出した。
「コール市長と関係が?」
「ありませんよ」
返答は早かった。
「本当に?」
「私は銀行の経営者です。市長の政治活動に関与したことはありません」
「……選挙資金絡みの倒産、持ち株絡みの倒産、いったいどうなってる?」
バンスは資料をドミニクの前に押し出した。
「銀行を通じて動いた資金が、複数の企業を経由している。会社が倒産した後も、金の流れが途切れていない。これをすべて偶然だと言うんですか?」
ドミニクは書類を見つめたまま、首を横に振った。
「私は何も知りません。信じてくださいよ」
バンスは椅子の背にもたれた。
「俺は誰も信じない。信じるのは事実と数字だけだ」
ドミニクは顔を上げた。
「私を疑うのは勝手ですが、証拠があるんですか?」
「調べているところだ。銀行から押収した資料も、これから一つずつ確認する」
バンスの声は変わらなかった。
「あなたが何も知らないと言い続けるなら、それも記録に残る。だが、資金の流れを説明できる人間がいるなら、話は変わる」
「何をおっしゃりたいんです?」
バンスはドミニクを見据えた。
「コールはあなたを守らない。銀行の不正が明らかになれば、真っ先に切り捨てるでしょう。あなたが逮捕された今、彼にとってあなたは邪魔な存在だ」
ドミニクの表情から余裕が消えた。
「そんなことはありません。市長とは長い付き合いです」
バンスはファイルを閉じた。
「死ぬ前にアドバイスしてやる。不正に関わっている奴を全員道連れにしろ。自分一人で責任を負う必要はない」
ドミニクは答えなかった。
室内の空調が低く唸っている。カーティスはノートに視線を落としたまま、ドミニクの反応を待っていた。
バンスは立ち上がった。
「今日はここまでにしましょう。考える時間はあります」
「私は何もしていません」
ドミニクは繰り返した。
バンスは振り返らず、言った。
「それを証明するのは、あなたの仕事です」
二人は部屋を出た。
廊下に出ると、カーティスが声を落とした。
「まだ認めませんね」
「認める必要がないと思っているんでしょう」
バンスは手にしたファイルを閉じた。
「だが、資料は揃い始めている。あとは資金の流れと、誰が指示を出したのかを結びつける」
「コール市長までたどり着けますか?」
「ドミニクが口を開けば早い。黙っていても、数字は消えない」
バンスは歩き出した。
ドミニクは否認を続けている。しかし、銀行の記録には、彼が説明しなければならない取引が残されていた。
