コンテンプト・オブ・コート 7-19
マイクの事務所。
机の上には、カーターが残した資料が広げられていた。会社の登記情報、銀行の融資記録、土地取引の一覧、複数の企業の財務資料。コピーされた書類には、手書きのメモや数字が書き込まれている。
マイクは一枚の資料を手に取った。
「ここを見てくれ。最近、アーバンコア・イノベーションズという会社が倒産した」
ローリーとエイダンの部下たちが机を囲んだ。ジムは椅子に座り、資料をのぞき込んでいる。
「聞いたことがある会社だな」
マイクは資料を机に置いた。
「ハミルトン・ナショナル・バンクが、このよく知られていない会社に五千万ドルを融資した」
「五千万ドル?」
ジムが数字を確認した。
「かなりの額だな。何をしてる会社だ?」
「登記上は投資関連の事業を行っていたことになっている。だが、実態がほとんど見えない。従業員も少なく、事業所の規模も融資額に見合わない」
エイダンの部下の一人が顔を上げた。
「ネットで見た記憶があります。投資商品の販売に関係していた会社じゃないですか?」
「そうだ」
マイクは別の書類を取り出した。
「市民から集めた資金が投資商品に回され、その一部がハミルトン・ナショナル・バンクを通じてアーバンコアに融資された。会社が倒産した結果、五千万ドルは焦げ付いた」
ジムが腕を組んだ。
「たしか、投資商品だったので大損した人が続出したのでは?」
「その通りだ。損失を被ったのは市民だ。だが、融資を受けた会社の資金がどこへ流れたのか、十分に説明されていない」
ローリーは登記資料を手に取った。会社の設立時期、役員、所在地を順に確認する。
「アーバンコア・イノベーションズはペーパーカンパニーよ。事業を続けるために融資を受けたとは考えにくい。コールの資金を確保するために利用された可能性があるわ」
マイクはうなずいた。
「俺もそう見ている。問題は、五千万ドルの行き先だ。会社が倒産する前に資金を移していたなら、どこかに記録が残っているはずだ」
「銀行の内部に協力者がいるということか?」
ジムが尋ねた。
「ドミニクが事情を知っている可能性が高い」
マイクはドミニクの名前が記された資料を指で押さえた。
「まずはドミニクを突く。コールの秘密資金を暴くために」
ローリーは別の書類を見た。
「でも、銀行の記録を調べるには手続きが必要よ。私たちだけで口座の動きを確認するのは難しいわ」
「資料にあるのは、今のところ不自然な取引と会社の関係を示す記録だけだ。これだけで犯罪を立証できるわけじゃない」
マイクは書類をまとめた。
「銀行の内部資料や資金の移動を確認できれば、次に進める。だが、相手に気づかれれば証拠を隠される可能性がある」
ジムが椅子から身を起こした。
「俺たちだけでいけるか?」
「無理だ。助けがいる」
マイクは机の端に置いていた別のファイルを開いた。中には一人の男の経歴と、過去に担当した事件の記録が入っていた。
「ニューヨークに、昔世話になった検事がいる」
「検事?」
「ああ。以前はアンカレッジで働いていた。今はニューヨークにいる」
ローリーが顔を上げた。
「協力してくれるの?」
「分からない」
「それでも会いに行くのね」
「彼が必要だ」
マイクはファイルを閉じた。
「明日の朝、ニューヨークへ向かう。アーバンコアの資料を持っていく」
ジムは机の上の書類を見渡した。
「こっちはどうする?」
「ドミニクと銀行の動きを調べてくれ。ただし、無理に接触するな。カーターの資料にある会社や人物の関係を整理しておいてほしい」
エイダンの部下たちがうなずいた。
ローリーはマイクを見た。
「私も残って調べるわ。資料を照合すれば、ほかにも手掛かりが見つかるかもしれない」
マイクは必要な書類を選び、ニューヨークへ持っていく分を別のファイルにまとめ始めた。
カーターが残した資料は、コールの周囲に広がる金の流れを示していた。しかし、その先に何があるのかは、まだ分からない。
まずはドミニクを叩く。そのために、マイクはニューヨークでジュリアン・バンスと会う必要があった。
