コンテンプト・オブ・コート 6-5
朝。マイクは机に向かっていた。
デスクライトは点いたままだった。机の上には市長殺害事件の資料と、何枚かの写真が広がっている。コーヒーのカップは空になり、底に黒い液体がわずかに残っていた。
マイクは報告書を読み返していた。文字を追っているものの、同じ行を何度も読み直していた。
昨夜、ローリーにすべてを話した。
リサを殺したのはコール。コールに命じたのはマリベル。ローリーの母親の失踪にも、マリベルが関わっている。
話せば何かが変わると思っていたわけではない。ローリーには知る権利がある。そう判断しただけだった。
だが、話した後のことまでは考えていなかった。
ローリーが何を信じ、誰を疑うのか。マリベルを問い詰めるのか、それともマイクの話を否定するのか。
今のマイクには分からなかった。
ドアが開いた。
ジムが入ってきた。片手に紙袋を持っている。マイクの顔を見てから、机の上に視線を移した。
「徹夜か?」
マイクは報告書から目を離さなかった。
「……ローリーに全部話した」
ジムは返事をせず、紙袋を机の端に置いた。
マイクが顔を上げた。
ジムは窓際まで歩き、ブラインドの隙間から外を見た。通りを走る車の音が、閉じた窓越しにかすかに聞こえていた。
「そうか」
それだけだった。
マイクは再び書類に目を落とした。
ジムは何も聞かなかった。何を話したのか、ローリーがどんな反応を示したのか。確かめる必要はなかった。
二十年前のことを、ジムは知っている。
リサが殺されたことも、マイクがその場にいたことも。事件が表向きの記録とは違う形で処理されたことも。そして、マイクが長い年月をかけて、復讐のためにアンカレッジへ戻ってきたことも。
ローリーの母親についても、すべてではないにせよ、マイクが何を疑っているのかは理解していた。
「ローリーは、これから自分で調べるだろう」
ジムが言った。
マイクは書類を見ながら言った。
「だろうな」
「いいのか?」
「話さなくても、いずれ知ることになる。俺が黙っている理由はない」
ジムはマイクを見た。マイクは視線を返さなかった。
「……彼女を巻き込むことになる」
「もう巻き込まれている」
マイクの声に迷いはなかった。
ジムはしばらく黙っていた。やがて、机の上の紙袋をマイクの前へ押した。
「何か食え」
「いらない」
「食えと言ってる」
マイクは紙袋を見た。中にはサンドイッチが入っていた。
彼は一つ取り出したが、すぐには口をつけなかった。
ジムはそれ以上何も言わず、部屋の隅にある椅子を引いた。腰を下ろし、腕を組む。
マイクはサンドイッチを一口かじった。味はほとんど分からなかった。
窓の外では、朝の交通量が増え始めていた。
マイクは資料をまとめ、次に調べるべき項目を確認した。市長殺害事件の証拠。コールとマリベルのつながり。そして、二十年前の事件を裏づけるもの。
ローリーは母親が失踪した経緯を徹底的に調べるだろう。
マイクはファイルを閉じ、残っていたサンドイッチを口に運んだ。ジムは何も言わず、その様子を見ていた。
