コンテンプト・オブ・コート 6-3
エルマ・アトキンソンは机の上に置いた捜査資料を閉じた。
市長殺害事件の公判で、ブローカーが証言した。証言内容には確認を要する点が残っていたが、コールの秘書の名前が法廷で出たことは無視できない。秘書は事件に関する情報を握っている可能性があった。
エルマは内線電話を取った。
「ラングドン検事を呼んで」
数分後、ラングドンが部屋に入ってきた。手には薄いファイルを持っていた。
「何か用ですか」
「座って」
ラングドンが向かいの椅子に腰を下ろす。エルマはファイルを開かず、彼の顔を見た。
「捜査情報が外部に漏れている可能性があるわ」
「ただの噂です。情報が漏れたという確かな証拠はありません」
ラングドンは即座に答えた。
エルマは表情を変えなかった。
「コールCEOの秘書の居場所は?」
「令状が出る前に逃亡しました。現在、所在を確認中です」
「逃亡したのは、こちらが動く直前だった。捜査の進展を知っていたかのようにね」
「偶然でしょう。秘書が自分の判断で姿を消した可能性もあります」
「公判で名前が出た後、こちらが令状を取る前に姿を消した。それでも、ただの噂と?」
ラングドンは手元のファイルに目を落とした。
「保安維持の徹底を。情報管理を強化する必要があります」
「一般論を聞いているんじゃないわ」
エルマは机の上で指を組んだ。
「誰が情報を漏らしたのか。秘書がどこへ向かったのか。コールが関与しているのか。確認すべきことはいくつもある」
「捜査は続けています」
「なら、結果を出して。被疑者を必ず捕まえて」
ラングドンは小さく息を吐いた。
「カーター被告が無罪になれば、我々は敗訴に追い込まれます。検察の責任も問われるでしょう」
エルマの目が細くなった。
「敗訴?」
「この事件を担当している以上、検察としての立場も考えるべきです」
「大切なのは、真実を明らかにすることよ」
声は低かったが、語気は明確だった。
「カーターが犯人なら、その証拠を示せばいい。違うのなら、誰が市長を殺したのかを突き止める。それが私たちの仕事よ。検察の面子を守るために、事実から目をそらすつもりはない」
ラングドンは黙った。
エルマは机の上の資料をラングドンの方へ押し出した。
「秘書の捜索状況をまとめて報告して。最後に確認された場所、接触した人物、使った車両。分かることはすべて調べて」
「分かりました」
「それから、捜査資料にアクセスできる職員を確認して。情報がどこから漏れたのか、内部の可能性も含めて調べるの」
ラングドンは立ち上がり、ファイルを抱え直した。
「いつまでに?」
「できるだけ早く。進展があれば、すぐに報告して」
ラングドンは一礼し、部屋を出ていった。
ドアが閉まると、エルマは椅子に深く腰を下ろした。
秘書の逃亡は早すぎた。令状の準備を進めていた事実が外部に漏れたのなら、捜査は最初から誰かに見られていたことになる。コール本人が動いたのか、別の人間が警告したのか。今の段階では断定できない。
エルマは電話に手を伸ばしかけ、止めた。
まずは事実を確認する。憶測で誰かを疑えば、本当の情報源を見落とすことになる。
エルマは新しいメモを開き、秘書の名前を書き込んだ。その下に、情報漏洩の可能性と記した。
カーターの裁判だけが問題なのではない。捜査そのものが妨害されているのなら、その事実を突き止めなければならなかった。
エルマは再び資料を開いた。今度は、秘書の足取りを追うための記録を一枚ずつ確認し始めた。
