コンテンプト・オブ・コート 6-2
朝。
ローリーは事務所の鍵を開け、中に入った。
室内は静かだった。マイクの机には書類が積まれ、昨夜と変わらない。彼の姿はなかった。
ローリーはコートを脱ぎ、自分の机に向かった。鞄を置き、電源を入れる。まずは市長殺害事件の資料を確認することにした。
昨夜、マイクから聞かされた話が頭から離れなかった。
だが、今は裁判に集中しなければならない。
ローリーはファイルを開いた。
捜査報告書、証拠品一覧、検察側の提出資料、証人の供述調書。何度も確認した書類だった。
カーターは市長を殺害していない。一方、検察側の資料には、凶器や血液の付着した衣類、現場の足跡など、カーターを犯人と結びつける証拠が並んでいる。
その一部が捏造されたものだとすれば、事件の見方は変わる。
ローリーは証拠品の一覧をめくった。
誰が証拠を集めたのか。いつ現場に入ったのか。報告書が作成されたのはいつか。
細かな記載を追い、疑問点をノートに書き出していく。
一通り確認を終えると、ローリーはファイルを閉じた。椅子の背にもたれる。
次に調べるべきなのは、二十年前の事件だった。
ローリーは新しいファイルを開き、検索を始めた。
リサ・グリーン。
名前を入力すると、古い新聞記事や公開記録の断片が表示された。弁護士だったこと。二十年前に死亡したこと。公式記録では自殺として処理されたこと。
情報は限られていた。
死亡当時の記事も、事件の詳細にはほとんど触れていない。警察の発表を短く伝えただけのものが多く、捜査の経緯や現場の状況は分からなかった。
ローリーは記事の日付を一つずつ確認した。
リサが死亡した日。
自分の母親が失踪した日。
一致している。
偶然なのか。それとも、二つの事件は最初からつながっていたのか。
ローリーは検索条件を変えた。リサの名前だけでなく、当時の警察の発表、関連する裁判記録、死亡事件の捜査資料についても調べる。
しかし、公開されている情報だけでは限界があった。
ローリーは画面から目を離し、机の脇に置いた鞄を見た。
昨夜、マイクの事務所で見た人物相関図が脳裏によみがえる。母親の写真。リサの写真。コールとマリベルの顔。
母親は何を知っていたのか。
どこで、あの写真を撮ったのか。
そして、なぜ突然いなくなったのか。
ローリーは再び画面に向き直った。
マイクの話を信じたわけではない。マリベルが黒幕だと認めたわけでもなかった。
ただ、確かめなければならない。
マイクの記憶だけで判断することはできない。マリベルを問い詰めるにしても、根拠が必要だった。自分が弁護士である以上、疑念だけで誰かを断罪するわけにはいかない。
ローリーは調査内容を整理した。
リサ・グリーンの死亡記録。事件現場の写真。母親の失踪届。両方の事件に関する記録が残っているかどうか。
調べるべき項目を書き出す。
ローリーは古い資料の保管先を調べ、問い合わせ先をいくつか記録した。すぐに答えが得られるとは限らない。記録そのものが残っていない可能性もある。
それでも、手を止めるつもりはなかった。
窓の外を車が通り過ぎた。
ローリーは時計を確認し、次の資料を開いた。
マイクは、まだすべてを話していないのかもしれない。
だが、二十年前の記録をたどれば、少なくとも何が事実で、何が推測なのかを切り分けられるはずだった。
ローリーはペンを手に取り、ノートの最初の行に書いた。
リサ・グリーン死亡事件。
その下に、もう一つの項目を加える。
母親の失踪事件。
二つの事件を並べたまま、彼女は調査を続けた。
