コンテンプト・オブ・コート 6-25
葬儀が終わった。
参列者たちは墓地を離れ、駐車場へ向かっていた。黒いコートを着た男たちが低い声で話し、女性たちは花束を抱えて車に乗り込んでいく。冷たい風が墓地を抜け、供えられた花の包み紙を揺らした。
マリベル・ヴァレンタインは、父ブランドンの墓の前に立っていた。
墓石には、父の名が刻まれている。
ブランドンは長年、司法の世界で生きてきた。多くの人間が彼を尊敬し、その判断に従ってきた。今日も葬儀には、政財界や法曹界の人間が顔をそろえていた。
マリベルは、最後まで残っていた参列者が立ち去るのを見届けた。父の死を悼む言葉は、もう聞こえない。
そのとき、駐車場の向こうから男たちの声がした。
「あの野郎、長年好き勝手して、やっとくたばったか。地獄に落ちろ」
マリベルの足が止まった。
声の主は、数メートル先に停められた車のそばにいた。男は喪服ではなかった。上着のポケットに手を入れ、墓地の方を見ながら吐き捨てるように言った。
隣にいたもう一人の男が、鼻で笑った。
「奴はクズだ。今頃地獄で焼かれてるだろ」
二人は笑った。
マリベルは、その場から動けなかった。
聞き間違いではない。二人は父のことを話している。ついさっきまで、参列者たちは父の死を悼み、敬意を示していた。その父を、彼らは罵倒していた。
胸の奥が冷えた。
裁判官という仕事は、すべての人間を満足させるものではない。父の判断に不満を抱く者もいただろう。
だが、目の前の男たちの言葉には、悲しみへの配慮も、死者への遠慮もなかった。まるで、長年待ち望んでいたことがようやく実現したかのようだった。
「……何てことを」
マリベルは、かすれた声でつぶやいた。
男たちは気づかなかった。話を続けながら、車のドアを開ける。
「これで少しは世の中もましになる」
最初の男が言った。
もう一人が答えた。
「そうだな。もう二度と、奴の顔を見ずに済む」
運転席に乗り込んだ男がドアを閉めた。エンジンがかかり、ヘッドライトが点灯する。
マリベルは父の墓を振り返った。
花束が墓石の前に置かれていた。参列者が残したカードには、父への感謝と哀悼の言葉が記されている。そのすぐ近くで、見知らぬ男たちが父を罵り、死を喜んでいた。
何があったのか。なぜ、あれほど憎まれているのか。
問いは浮かんだが、答えはなかった。
車がゆっくりと駐車場を出ていく。
マリベルは車のナンバーを目に焼きつけた。
ただ、男たちの声だけが、頭の中で繰り返されていた。
――長年好き勝手して、やっとくたばったか。
