コンテンプト・オブ・コート 6-22
テラ・インフラテック本社。コールの執務室にジョニーが入ってきた。
コールはデスクで書類を読んでいた。ジョニーが扉を閉めると、顔を上げた。
「CEO、ひとつ聞いてもいいですか」
「なんだ?」
「市長殺害事件です。あれは、CEOが仕組んだんですか?」
コールの手が止まった。
「お前、死にたいのか?」
ジョニーは口を閉じた。コールは椅子の背にもたれ、携帯電話を取り出した。
「これを見ろ」
画面を操作し、ジョニーに差し出す。
動画には、市長が殺害された現場が映っていた。画面の端に人影が動く。男が地面にかがみ込み、足跡をつけていた。別の場所では、証拠品らしきものを置き直している。
ジョニーは画面を凝視した。
「これは……市長が殺された現場ですか?」
「そうだ」
コールは指先で画面を示した。
「よく見ろ」
ジョニーは動画を巻き戻した。男の顔が映る。見覚えがあった。
「こいつは……うちの事務所に来た検事じゃないですか」
「ラングドンだ。市長殺害の証拠を集める立場にありながら、現場を捏造した」
コールは携帯をデスクの上に置いた。
「保険てのは、こういう時に使うんだ」
ジョニーは黙った。事件の全容を知っているわけではない。ニューヨークからアンカレッジへ来て、コールの仕事を手伝うようになってから、耳に入る情報は断片的だった。だが、検事が証拠を捏造した映像が存在する。それだけで十分に危険な話だった。
「アトキンソン検事も関与しているんですか?」
「知らん」
コールは即答した。
「あの女は何も知らない。ラングドンが勝手にやったことだ。傑作だろ?」
口元に笑みが浮かんだ。
ジョニーは笑わなかった。
「相手は検察ですよ。あまりに危険では?」
「危険?」
コールは小さく鼻を鳴らした。
「ラングドンが現場を捏造したと公になれば、誰が責任を問われると思う?」
「……アトキンソン検事ですか」
「起訴した事件の証拠を、部下が捏造していた。上司が知らなかったで済むと思うか? あの女が関与していなくても、検察の信用は傷つく。公判も、カーターの事件だけでは終わらんかもしれない」
コールは携帯電話を手に取った。
「この映像は表に出ない。だが、必要になれば話は別だ。検察がこちらに手を出すなら、こちらも切り札を出す」
「それで、ラングドンを?」
「奴は自分のしたことを知っている。今頃震え上がっているだろう」
ジョニーは動画の最後の場面を思い返した。ラングドンは周囲を気にする様子もなく、証拠を整えていた。あれが本物なら、自分が何をしているか理解していたはずだ。
「それでも、こんなものを持っているのは危険です。誰かに奪われたら?」
「だから、俺が持っている」
コールは携帯を内ポケットにしまった。
「ジョニー。この世は崖っぷちに立ってこそ、道が開けるもんだ」
ジョニーはコールの恐ろしさを痛感した。
コールは再び書類に目を落とした。話は終わったという合図だった。
ジョニーは一礼し、執務室を出た。扉が閉まる直前、コールの声が飛んできた。
「余計なことを考えるな。お前は自分の仕事をしていればいい」
