コンテンプト・オブ・コート 6-23
アンカレッジ市内。配送業者の倉庫前に、ジムの車が停まっていた。
倉庫の管理責任者は、古い車両台帳を机に広げていた。ジムの隣では、エイダンの部下が一人、記録を確認している。別の部下は、出入りする従業員に当時の状況を聞いて回っていた。
「記録が残っているだけでも上出来だな」
ジムが言うと、管理責任者は眼鏡を押し上げた。
「当時ここにいた連中なら、何か覚えているかもしれません」
「現場付近に停まっていた車を見た人間はいないか?」
「何人かに聞きました。はっきり覚えている者はいませんが……」
管理責任者は、台帳の一部を指で押さえた。
「当時、キッチンカーが出入りしていたそうです。現場に停まっていたのも、そういう車だったんじゃないかと」
「キッチンカー?」
ジムは顔を上げた。
「ええ。食事を売る車です。工事現場や倉庫を回っていましたから」
ジムは携帯電話を取り出した。
マイクの事務所。
机には市長殺害現場の写真と、配送業者の調査結果が並んでいた。ローリーは資料を読み直していたが、車両に関する記載は見つからなかった。
マイクの携帯電話が鳴った。
「何か分かったか?」
『倉庫の人の話しでは、当時現場にとまっていたのはキッチンカーらしい』
マイクは写真から目を上げた。
「キッチンカー?」
『ああ。工事現場や倉庫を回っていた車らしい。まだ裏は取れていないが、ほかの業者にも聞いてみる。チェーン店も当たってみるつもりだ』
「分かった。何かあればすぐ連絡してくれ」
通話が切れた。
マイクは携帯を机に置いた。ローリーは資料を見たまま、動かなかった。
「キッチンカー……」
小さな声だった。
マイクがローリーを見る。
「何か気になることでも?」
ローリーは答えず、机の端に置かれた別のファイルへ手を伸ばした。中には、過去の事件に関する記事の切り抜きが挟まっていた。
郊外の崖下で発見された男の遺体。身元はキッチンカーの運転手。警察は自殺として処理していた。
ローリーは記事の見出しを見つめ、ファイルを閉じた。
「カーティス刑事に会ってくる」
マイクは椅子から立ち上がった。
「どうした?」
「確認したいことが」
ローリーはコートを手に取った。
マイクは彼女の顔を見た。問い詰めても、今は話さないだろう。
「……俺も行く」
ローリーは短くうなずいた。
