コンテンプト・オブ・コート 6-17
アンカレッジ市内、コールの選挙事務所。
窓際の机には選挙区ごとの支持率をまとめた資料が積まれていた。壁にはコールの顔写真と選挙スローガンが掲げられ、スタッフが電話をかけ続けている。
コールは資料に目を通していた。向かいに立つジョニーが報告する。
「白紙委任信託の記事は明日掲載されます」
「そうか」
コールはページをめくった。
「あと、ヴァレンタイン裁判官が公式にCEOへの支持を表明する予定です」
「それで流れが変わる」
コールは資料を閉じた。
「選挙が終わった後もバイトの面倒を見てやれ」
「分かりました」
ジョニーが答えたとき、事務所の入口で声がした。
「コールCEOはいらっしゃいますか」
受付の制止を振り切るように、一人の男が入ってきた。ラングドン検事だった。上着の前を開け、息を整えながらコールを探している。
コールは椅子に座ったまま、口元に笑みを浮かべた。
「これはこれは、検察の人間がこんな場所に来て大丈夫ですか?」
「話があります」
ラングドンはジョニーを一瞥し、コールに向き直った。
「私はコールCEOを信じて協力しました。もしかして、事件に関する動画を撮影しましたか?」
コールの笑みが消えた。
「動画?」
「市長殺害現場の件です。あの現場を捏造したことが分かる映像です。もし記録が残っているなら、私にも見せていただきたい」
「ジョニー、こいつをどこかにやれ」
コールは机の上の資料に視線を戻した。
ジョニーがラングドンの腕をつかんだ。
「待ってください」
ラングドンは振りほどこうとしたが、ジョニーの手は緩まなかった。
「ないですよね?」
コールは顔を上げた。
「動画はあるかって?」
彼はゆっくり立ち上がり、ラングドンの前まで歩いた。
「お前は、俺が何のために記録を残したと思っている?」
ラングドンの顔がこわばった。
コールの拳が腹部に食い込んだ。
「ぐっ……!」
ラングドンが身体を折る。コールは間を置かず、もう一度、腹を殴った。ラングドンは声にならないうめきを漏らし、床に膝をついて倒れ込んだ。
周囲のスタッフは電話を持ったまま動きを止めた。誰も口を開かなかった。
コールは拳を軽く振り、ジョニーを見た。
「その馬鹿を片付けろ」
ジョニーはラングドンの腕を引き、立たせようとした。ラングドンは腹を押さえ、苦しげに息を吐いている。
コールは机に戻った。引き出しから携帯電話を取り出そうとしたところで、着信音が鳴った。画面に表示された名前を見て、コールは眉を上げた。
エルマ・アトキンソン。
コールは電話に出た。
「これはこれは。あなたから電話とは珍しいですね」
受話口から、エルマの声が返ってきた。
「お話があります」
コールはラングドンに目をやった。ジョニーが事務所の奥へ引きずっていく。
「ええ、もちろん。何でしょう?」
コールは穏やかに答えた。
