コンテンプト・オブ・コート 6-16
アンカレッジ検察庁。廊下には職員が行き交い、電話の音が絶えなかった。
マイクとローリーは受付を通り、検事室の並ぶ区画へ向かった。扉の脇に掲げられた名札を確認する。ラングドン検事。二人はその前で足を止めた。
扉を開けると、ラングドンが机に向かっていた。書類を読んでいた彼は顔を上げ、二人を見た。
「何か用ですか?」
「アトキンソン検事は事務所にいますか?」
ラングドンがローリーに尋ねた。
「いますが、今は別の仕事をしています」
「そうですか」
ローリーは扉を閉めた。
「あなたに会いに来たんです。次の公判で証言してもらいます」
ラングドンは眉をひそめた。
「初公判で証言しましたよ」
「そのとき、俺はいませんでした」
マイクが言った。
「記録は読みました。あなたに直接聞きたいことがあるんです」
「何を?」
「市長が殺害された現場の証拠についてです」
ラングドンの手が止まった。
「証拠はすべて、規定に従って処理しました。何か問題でも?」
マイクは机の向こうの男を見た。ラングドンは視線を合わせたが、表情には警戒が浮かんでいた。
「それと、もう一つ話があります。ある人物が、俺の依頼人に興味深い動画を見せたそうです」
ラングドンは答えなかった。
「市長殺害現場を捏造する映像です。カーターは、その映像を見ました」
ローリーはラングドンの顔を観察した。彼の目が一瞬だけ動いた。驚きか、警戒か。表情の変化は小さかったが、何かを聞き流した人間の反応ではなかった。
「コールCEOです」
マイクが名を告げた。
ラングドンの顔から血の気が引いた。
沈黙が落ちた。廊下を通る職員の足音が、扉越しに聞こえた。
「……何の話か分かりませんね」
ラングドンは書類をそろえ、立ち上がった。
「アトキンソン検事に用があるのでしたら、そちらへどうぞ。私は忙しい」
「まだ聞きたいことがあるのですが」
マイクが言った。
ラングドンは答えず、二人の脇を通って扉へ向かった。足早に遠ざかる背中を、二人は見送った。
「間違いないわね」
ローリーが言った。
「少なくとも、コールと無関係じゃない」
マイクはラングドンが座っていた机を見た。整然と並んだ書類の中に、事件の記録がある。
「カーターが見た映像には、ラングドンが映っていた可能性が高い」
「だから、コールの名前を出した途端に逃げた」
「映像の存在を知らなかったのかもな」
ローリーは腕を組んだ。
「でも、これだけじゃ証拠にならない」
「分かってる。次の公判で証言させる。逃げられないようにする」
二人が廊下へ出ると、ラングドンの姿はすでになかった。検事室の扉がいくつも並ぶ廊下の先に、非常口の表示が見えた。
ラングドンは質問に答えなかった。だが、コールの名を聞いたときの反応は、二人に十分な手掛かりを与えていた。
