コンテンプト・オブ・コート 4-9
アンカレッジ。
マイクの事務所。
夜。
マイクは裁判資料に目を通していた。
ドアが開き、ジムが入ってくる。
ジムは机の上に積まれた資料を見た。
「遅かったな」
「いろいろあって」
「そうか」
ジムはコートを脱いだ。
マイクはポケットから一台の携帯電話を取り出した。
古い機種だった。
画面には傷がある。
ジムが目を向ける。
「それは?」
マイクは携帯電話を机の上に置いた。
「市長を殺害した男の携帯だ」
ジムの表情が変わる。
「実行犯の?」
「ああ」
ジムは携帯電話を手に取った。
裏面を確認する。
「検察は怒り狂うだろうな」
「言うつもりはない」
ジムは携帯電話を机の上に置いた。
「ロックは?」
「解除してない」
「中身は?」
「分からない」
マイクはジムを見る。
「解析してくれ」
「任せとけ」
ジムは携帯電話を自分の机へ持っていった。
ノートパソコンを起動する。
ケーブルを取り出す。
携帯電話を接続する。
画面にいくつもの表示が出る。
「データを全部抜く」
「ああ」
「連絡先、通話履歴、メッセージ、写真」
ジムが画面を確認する。
「位置情報もいるな?」
「全部だ」
「分かった」
ジムが作業を始める。
マイクは机の上の資料を見た。
市長殺害事件。
カーター。
テラ・インフラテック。
ノース・ホライズン・シティ。
そして、二十年前の事件。
一つの事件に見えていたものが、少しずつつながり始めていた。
ジムが画面を見た。
「少し時間がかかる」
「どのくらいだ?」
「分からない。暗号化されてる」
マイクは窓の外を見た。
アンカレッジの街は静かだった。
そのとき、ジムの携帯電話が鳴った。
ジムが画面を見る。
「エイダンの部下からだ」
電話に出る。
「もしもし」
相手の声を聞く。
ジムが椅子に座り直す。
「ブローカーはどうしてる?」
少し間があった。
電話の向こうから答えが返ってくる。
『家の中に閉じこもってる。あいつが死んだことを知って、怯えてるんだろう』
ジムはマイクを見る。
マイクは何も言わない。
「動きは?」
『今のところない』
「そうか」
ジムは窓の外を見た。
「動きがあったら知らせてくれ」
『分かった』
電話が切れる。
ジムは携帯電話を机に置いた。
「ブローカーは動いてない」
「ああ」
「怯えてるらしい」
マイクは答えなかった。
ジムは再びパソコンへ向き直った。
画面には、実行犯の携帯電話から抽出されたデータが並び始めている。
「マイク」
「何だ?」
「あまり期待しない方がいい」
マイクが立ち上がる。
ジムの後ろへ回る。
画面には、通話履歴の一覧が表示されていた。
知らない番号。
短い通話。
マイクは画面を見つめた。
「証拠は残さないか」
「だろうよ」
マイクはジムの肩に手を置き、言う。
「実行犯はこの携帯で誰と連絡を取っていたのか……」
「ブローカーと、コールの秘書あたりじゃないか?」
マイクは机へ戻った。
窓の外を見る。
街の明かりが静かに並んでいる。
マイクは椅子に座った。
「一筋縄ではいかないか」
ジムは何も言わず、解析を続けた。
