コンテンプト・オブ・コート 4-6
アンカレッジ市内。
黒い車が市街地を走っていた。
運転席には秘書。
後部座席にはコールが座っている。
コールは窓の外を見ている。
マイク・ハンター。
あの男が何を知っているのか。
それが気になっていた。
しばらくして、秘書が口を開いた。
「社長」
「何だ?」
「大切なお話があります」
コールが秘書を見る。
秘書はハンドルから片手を離した。
スーツのポケットから、小さな機械を取り出す。
黒いケースに入った発信機だった。
コールの目が細くなる。
「それは?」
「発信機です」
「どこにあった?」
「私のポケットです」
秘書は発信機を手のひらに乗せた。
「小型GPSだと思われます」
コールはそれを見つめた。
「いつから?」
「分かりません」
コールは発信機を受け取った。
小さなケース。
磁石。
薄い本体。
電源は入ったままだった。
コールはしばらく黙っている。
そして、低い声で言った。
「……マイク・ハンターの罠にハマったな」
秘書は前を向いたまま答えた。
「はい」
コールは発信機を指先で回した。
今日、マイク・ハンターと会った。
その直前まで、自分たちの動きを追える状態だった。
偶然ではない。
コールは発信機を見た。
「やつらは最初から俺を狙って裁判に飛び込んだ」
秘書は黙っている。
「カーターの裁判、証人、そして、あの男の死」
秘書が少しだけコールを見る。
「実行犯ですか?」
「そうだ」
コールは答えた。
「マイク・ハンターは、最初から何かを掴んでいた」
「では、今日の接触も――」
車内に沈黙が落ちた。
秘書は前を向いて運転を続ける。
コールは発信機を見つめていた。
「……あいつが死んでなければ大変なことになっていた」
「殺し屋、ですか?」
「ああ」
コールは短く答えた。
「あいつが生きていれば、俺の名前まで出ていたかもしれない」
秘書は何も言わなかった。
しばらくして、秘書が口を開く。
「ブローカーを始末します」
コールは窓の外を見たまま答えた。
「骨ひとつ残すな」
「はい」
コールは発信機を握った。
「マイク・ハンターにはまだ手を出すな」
秘書がバックミラーを見る。
「分かりました」
コールは発信機を見た。
「これは処分しろ」
「はい」
「それから、ハンターの周りを調べろ」
コールは発信機を秘書へ返した。
「あいつに関わる人間、全員だ」
秘書は受け取った。
「承知しました」
車は交差点を曲がった。
コールは後部座席からアンカレッジの街を見ていた。
ノース・ホライズン・シティ。
市長殺害事件。
カーター。
マイク・ハンター。
すべてが一つにつながり始めている。
コールは小さく呟いた。
「いつ殺してやろうか……」
秘書は何も答えなかった。
車はそのまま市街地を走り続けた。
