コンテンプト・オブ・コート 4-7
アンカレッジ。
マイクの車が住宅街へ入った。
助手席にはローリーが座っている。
ローリーは窓の外を見ていた。
「ここでいいわ」
「家まで送る」
「え?」
マイクは速度を落とした。
ローリーがマイクを見る。
「家まで送ってくれるなんて、鳥肌ものよ」
「寒いのか?」
「違う」
「そうか」
「馬鹿ね」
ローリーはため息をついた。
「検察庁に行って、刑務所にも行って、あなたの話を聞いて、それで帰りは送迎付き」
「サービスがいいだろ」
「誰も頼んでないわ」
マイクは何も答えなかった。
やがて、車がローリーの自宅前に止まった。
ローリーがシートベルトを外す。
そのとき、玄関のドアが開いた。
トーマスが外へ出てくる。
ローリーを迎えに来たらしい。
「ローリー」
「お父さん」
トーマスはローリーのところまで歩いてくる。
運転席からマイクが降りた。
トーマスが少し驚く。
マイクが先に声をかけた。
「初めまして」
「……初めまして」
トーマスはマイクを見る。
「……娘が世話になってます」
「こちらこそ」
ローリーが車から降りる。
「お父さん、この人がマイク・ハンター」
「弁護士の?」
「そう」
トーマスは頷いた。
「そうですか」
少し間を置いて、トーマスが笑った。
「コーヒーでもどうですか?」
ローリーの顔が引きつる。
「ちょっと、勘弁してよ」
「何でだ?」
「今日はもう疲れてるの」
マイクが笑った。
「本当ですか! いただきます」
「マイク!」
ローリーが振り返る。
「あなた、遠慮ってものを知らないの?」
「コーヒーは好きだ」
「そういう問題じゃないでしょう」
トーマスが笑う。
「いいじゃないか。家で飲むだけだ」
「お父さんまで……」
トーマスは玄関を指した。
「どうぞ」
マイクが頷く。
「ありがとうございます」
ローリーは頭を抱えた。
「本当に入るの?」
「誘われたからな」
「普通は遠慮するのよ」
「そうなのか?」
「そうよ」
「次は気をつける」
「次がある前提なの?」
トーマスが笑いながら玄関を開けた。
「ローリー、お客さんを外に立たせるな」
「……分かったわよ」
三人が家の中へ入る。
居間には古いソファとテーブルが置かれていた。
マイクは室内を見回した。
壁には古い写真がいくつか飾られている。
ローリーはコートを脱いだ。
「そこに座って」
「分かった」
マイクがソファに座る。
トーマスが台所へ向かった。
「すぐ淹れます」
「ありがとうございます」
ローリーはマイクの隣に座る。
「本当に図々しいわね」
「褒め言葉か?」
「違うわよ」
トーマスが台所から笑う声が聞こえた。
「仲がいいんだな」
「どこが?」
「二人とも」
ローリーはマイクを見る。
「この人とは仕事だけよ」
「分かってる」
マイクは淡々と答えた。
「パートナーだからな」
ローリーは眉をひそめた。
「その言い方、やめて」
「事実だろ」
「仕事上のパートナー」
「それも事実だ」
トーマスがコーヒーを三つ持って戻ってきた。
「どうぞ」
マイクが受け取る。
「いただきます」
一口飲む。
「美味しいです」
「それはよかった」
ローリーもカップを持つ。
そして、父親を見る。
「……何でこんなことになったの?」
トーマスは笑った。
「たまにはいいだろ」
マイクはコーヒーをもう一口飲んだ。
ローリーはため息をついた。
だが、父親とマイクが向かい合って話しているのを見て、少しだけ表情を緩めた。
