コンテンプト・オブ・コート 4-4
アンカレッジ州検察庁。
マイクとローリーは、ラングドン検事に案内されて取調室へ入った。
机と椅子。
壁際には録音機器が置かれている。
ラングドンが向かい側に座った。
「二人とも、任意で来てもらったということでいいですね」
「はい」
マイクが答える。
ローリーも椅子に座った。
ラングドンは書類を確認した。
「地下道で死亡した男について、いくつか確認したいことがあります」
「どうぞ」
「あなたたちは、死亡する直前、男と接触していた」
「はい」
「男はその場で何かを口に入れた」
「はい」
「何を飲んだか分かりますか?」
「分からない」
「薬物のようなもの?」
「たぶん」
ラングドンはメモを取った。
「男が倒れたのは、その直後ですね?」
「そうだ」
「苦しんでいましたか?」
「少し」
「暴れていた?」
「いや」
マイクは淡々と答えた。
「自分で何かを口に入れ、死んだ」
ラングドンは顔を上げた。
「あなたは、それを自殺だと考えている?」
「ああ」
「理由は?」
「死ぬ前に、自分で飲んだから」
ラングドンは頷いた。
「分かりました」
書類に目を落とす。
「ただ、こちらとしては、薬物を誰かに飲まされた可能性も考えています」
ローリーがラングドンを見る。
「私たちがですか?」
「可能性の話しをしているだけです」
ラングドンは表情を変えず答えた。
「死亡した人間が、どういう経緯で薬物を摂取したのか。それを調べる必要があります」
「解剖すれば分かるでしょう」
ローリーが言う。
「その通りです」
ラングドンは頷いた。
「司法解剖の結果を待っています」
マイクは黙って聞いていた。
ラングドンが続ける。
「それから、男が死亡する直前に何か話していたそうですね」
「ああ」
「何を?」
マイクは少し黙った。
「市長殺害の実行犯だと言った」
ラングドンの表情が変わる。
「市長殺害の?」
「そうだ」
「本人がそう言った?」
「ああ」
「その他には?」
マイクは答えなかった。
ラングドンは追及しなかった。
「分かりました」
マイクはラングドンを見る。
「気にならないのか?」
「もちろん気になります」
ラングドンは答えた。
「ただ、今は男がどうやって死亡したのかを確認するのが先です」
マイクは黙った。
ラングドンは続ける。
「それに、本人が何を言ったとしても、証拠として扱うのは難しい。録音は?」
ラングドンが尋ねる。
「できなかった」
「そうですか」
ラングドンはメモを取った。
「それなら、現時点では確認できませんね」
「そうだ」
マイクは椅子に座ったまま、ラングドンを見る。
「でも、カーターのアリバイは証拠映像で立証できる」
ラングドンが顔を上げる。
「市長殺害事件の?」
「ああ」
「例の動画ですね」
「そうだ」
マイクは続けた。
「おかしいと思わないか?」
「何がです?」
「アリバイがあるのに、凶器、血液、指紋、靴跡まで揃っている」
ラングドンは黙って聞いていた。
「カーターを犯人にする証拠が、あまりに多すぎる」
「検察は証拠に基づいて判断する。それだけです」
ラングドンは資料を閉じた。
「ただ、それは市長殺害事件の捜査の話です」
「分かってる」
「今、私が調べているのは、地下道で死亡した男の件です」
「ああ」
マイクはそれ以上、言わなかった。
ローリーがラングドンに尋ねる。
「地下道の防犯カメラは確認しました?」
「まだです」
「なら、確認してください」
ローリーは言った。
「私たちが男に何をしたのか疑っているなら、映像を見れば分かるでしょう」
ラングドンは頷いた。
「分かりました」
ローリーが立ち上がる。
「もう帰っていいですか?」
ラングドンは時計を見る。
「結構です」
マイクも立ち上がる。
「ありがとうございました」
「こちらこそ」
二人は取調室を出た。
扉が閉まる。
ラングドンは机の上の資料を見る。
死亡した男。
地下道。
薬物。
そして、防犯カメラ。
ラングドンは資料を閉じ、つぶやいた。
「あの男が実行犯……」
