コンテンプト・オブ・コート 4-5
アンカレッジ州検察庁。
マイクとローリーは取調室を出た。
廊下を歩いていると、正面からエルマ・アトキンソンが歩いてきた。
二人の前で足を止める。
「マイク・ハンター弁護士」
「何ですか?」
エルマはマイクを見る。
「死亡した男の遺留品を確認しました」
「そうですか」
「携帯電話がありませんでした」
マイクは黙った。
「知りませんか?」
ローリーが眉をひそめる。
「弁護士を犯人扱いしたり、泥棒扱いしたり、ちゃんと仕事をして」
エルマはローリーを見る。
「私は確認しているだけです」
「疑っているようにしか見えませんけど」
「疑うのが検察の仕事です」
エルマはマイクへ視線を戻した。
「なぜ、この事件に固執するの?」
マイクは答えなかった。
「市長殺害事件です」
エルマが続ける。
「チンピラのような男が突然現れて、被告人の弁護士になった」
「彼は仕事をしているだけよ」
「なぜ固執するの?」
マイクは少しだけ笑った。
「裁判が終わった時、分かりますよ」
エルマの表情が変わる。
「どういう意味?」
マイクは答えず、ローリーを見る。
「行くぞ」
二人は廊下を歩き始めた。
エルマはその背中を見送った。
「……何を考えてるの?」
小さく呟いた。
マイクとローリーは検察庁を出た。
駐車場へ向かう。
ローリーが隣を歩きながら口を開く。
「携帯電話、持ってるの?」
「持ってない」
「じゃあ、あの男の携帯は?」
「知らない」
ローリーは少し黙った。
「あの男、死ぬ間際に言った。コールが命じたって」
マイクは駐車場を見る。
黒い車が入ってきた。
ゆっくりと二人の前を通り、少し離れた場所で止まる。
後部座席から、一人の男が降りた。
ケンドリック・コールだった。
コールは二人を見る。
ローリーが小さく息を吐いた。
「あいつ……」
「初対面だな」
コールが近づいてくる。
「マイク・ハンターさんですか?」
「そうです」
コールが手を差し出した。
「初めまして」
マイクは手を握った。
「市長の裁判を担当しています」
「傍聴しました」
コールはローリーを見る。
「こちらは?」
「ローリー・ブルックス。私のパートナーです」
「初めまして」
短い挨拶だった。
コールはマイクを見る。
「裁判、大変そうですね」
「カーター刑事と特別な関係だとか?」
コールの口調が変わる。
「…………奴が言ったのか?」
「さあ」
コールは笑みを浮かべた。
「カーターとは何度か会っただけだよ」
「それだけ?」
「ああ」
コールは検察庁の建物を見る。
「いずれにせよ、裁判長が真実を明らかにしてくれるはずだ」
マイクはコールを見た。
「さっき葬られたよ、その真実が」
コールの眉が動く。
「何の話だ?」
「真犯人が自殺した」
ローリーがマイクを見る。
マイクは続けた。
「死ぬ直前、男は誰に指示されたか言ったよ」
コールは黙った。
やがて、静かに言った。
「誰の名前を言ったか知らないが、死んだ奴の言葉に誰が耳をかす?」
「コールCEO」
マイクは一歩近づいた。
「人間は誰しも、死ぬ間際、真実を言うものだ」
コールはマイクを見た。
その目は笑っていなかった。
「そうですか」
「ええ」
短い沈黙。
コールはローリーを見る。
それから、もう一度マイクを見た。
「では、失礼します」
コールは車の方に向かい、数歩進んだところで足を止めた。
「マイク・ハンターさん」
「何です?」
コールは尋ねた。
「俺たち、初対面ですよね?」
「以前お会いしました」
コールの表情が変わる。
マイクは続けた。
「俺もアンカレッジの人間ですから」
コールはしばらくマイクを見つめ、小さく笑った。
「そうですか」
コールは車へ向かう。
「またお会いしましょう」
「ええ」
コールが車に乗る。
ドアが閉まる。
車がゆっくり駐車場を出ていく。
ローリーがマイクを見る。
「本当に会ったことがあるの?」
「ある」
「いつ?」
マイクは走り去る車を見た。
「昔」
「それだけ?」
「それだけだ」
ローリーは納得していなかった。
マイクは車が見えなくなるまで、黙っていた。
そして、つぶやくように言った。
「次は、向こうから来るよ」
