コンテンプト・オブ・コート 4-2
アンカレッジ市内。
病院。
処置室のベッドに、ローリーが横になっていた。
額には冷たいタオルが置かれている。
マイクはベッドの横にある椅子に座っていた。右手には包帯が巻かれている。
ローリーにケガはなく、脈も安定している。
マイクは携帯電話を取り出した。
エイダンに電話をかける。
数回の呼び出し音のあと、つながった。
「俺だ」
『どうした?』
「ブローカーは?」
『見つからない』
「そうか」
『ローリーは大丈夫か?』
マイクはベッドを見る。
「すぐ目覚めるだろう」
『俺たちはブローカーを探す』
マイクは電話を切った。
携帯電話をポケットへ戻す。
ベッドの上で、ローリーが小さく動いた。
マイクが立ち上がる。
「ローリー」
ローリーが目を開けた。
「……ここ、どこ?」
「病院だ」
ローリーはゆっくり顔を動かした。
マイクを見る。
「マイク?」
「ああ」
「私……」
ローリーは記憶を探すように目を閉じた。
帽子をかぶった男。
地下道。
腕をつかまれた感覚。
その瞬間、ローリーの表情が変わった。
「……あの男は?」
「死んだ」
「……そう」
ローリーは起き上がろうとした。
マイクが肩を支える。
「まだ寝てろ」
「大丈夫」
「無理するな」
ローリーはマイクを見る。
しばらく黙っていた。
「ねえ」
「何だ?」
「私があの男に捕まった時……」
マイクは答えない。
「あなた、すごく怒ってた」
「そうか?」
「怒ってた」
ローリーはマイクの顔を見る。
「なぜあんなに興奮したの?」
マイクは少し黙った。
「君が危なかったからだ」
「それだけ?」
「ああ」
ローリーは納得していない顔をした。
「本当に?」
「本当だ」
「そう」
ローリーはマイクから目を離した。
そのとき、処置室のドアが開いた。
州検事のラングドンが入ってきた。
「マイク・ハンターさん」
マイクが振り返る。
「あなたは?」
「州検事のラングドンです」
ラングドンは身分証を見せた。
「少し話を聞かせてもらいたい」
「ここで?」
「できれば検察庁で。地下道の件です」
マイクはローリーを見る。
「分かりました」
ローリーの表情が変わる。
ラングドンは続けた。
「当時の状況について確認したいことがあります」
マイクは黙った。
「任意です」
ラングドンが付け加える。
マイクは時計を見る。
「行きましょう」
ベッドからローリーが声を出した。
「私も行く」
マイクが振り返る。
「ローリー」
「私も事件を調べてる」
「ここにいろ」
「嫌よ」
ローリーはベッドから足を下ろした。
看護師が止めようとする。
「まだ休んでいてください」
「大丈夫です」
ローリーは立ち上がった。
少しふらつく。
マイクが腕を支える。
「無理するな」
「平気」
ラングドンが二人を見る。
「本当に大丈夫ですか?」
「行けます」
ローリーは即答した。
ラングドンは少し考えた。
「分かりました。では、二人ともお願いします」
マイクはローリーを見る。
「本当に来るのか?」
「あなた一人に任せると、何をするか分からないから」
「信用してないな」
「当然でしょ」
ローリーはコートを手に取った。
マイクは小さく笑った。
「分かった」
二人は処置室を出た。
ラングドンが先を歩く。
病院の廊下を進む。
ローリーはマイクの横を歩いた。
足が重く、頭がふらふらする。
それでも、戻るつもりはなかった。
市長殺害事件。
証拠動画。
そして、死んだ実行犯。
何が待っているのかは分からない。
ローリーはマイクの隣を歩いた。
三人は病院を出て、検察庁へ向かった。
