コンテンプト・オブ・コート 4-3
アンカレッジ連邦地方裁判所。
マリベル・ヴァレンタインは、机の上に置かれたモニターを見ていた。
その隣には、陪席裁判官のロバート・ヘイズとデイビッド・モーガンがいる。
机の上には、市長殺害事件の資料が並んでいた。
モニターには一本の動画が映っている。
マイク・ハンターが提出した証拠動画だった。
高校生が携帯電話で撮影した映像。
市長が殺害された日の午後十時五十七分。
アンカレッジ市内の小売店内が映っている。
マリベルが言った。
「再生して」
係員が映像を再生する。
画面に店内が映る。
商品棚。
レジ。
店内を歩く客。
少し離れた場所に、二人の男が立っている。
一人はカーター刑事。
もう一人は市長殺害事件の証人だった。
二人は向かい合っている。
何か言い争っている。
カーターが証人に詰め寄る。
証人も声を荒らげる。
周囲の客が二人を見る。
高校生は少し離れた場所から、その様子を撮影している。
マリベルが画面を見つめる。
映像の端に表示された時刻。
午後十時五十七分。
モーガンが資料を確認する。
「市長が殺害された時間は?」
係員が答える。
「午後十一時前後とされています」
ヘイズが映像を見る。
「犯行時刻と重なっていますね」
「はい」
映像の中で、カーターと証人が言い争っている。
カーターが一歩下がる。
証人が何かを言う。
カーターが振り返る。
そこで映像が終わった。
部屋が静かになった。
マリベルが口を開く。
「どう思う?」
ヘイズがモニターを見る。
「被告人と証人と思われる人物が映っていますね」
モーガンが続ける。
「しかも、市長が殺害された時間に」
ヘイズは資料をめくった。
「検察側の資料では、被告人はこの時間帯に犯行現場にいたことになっています」
「この映像とは一致しませんね」
マリベルは映像を見た。
「撮影したのは高校生?」
「はい」
ヘイズが答える。
「加工された可能性は?」
「現在、確認中です」
マリベルは頷いた。
「もう一度」
映像が再生される。
午後十時五十七分。
小売店の店内。
カーター。
証人。
二人が言い争っている。
マリベルは黙って映像を見ていた。
ヘイズが言う。
「これが本物なら、被告人は犯行時刻に現場以外の場所にいたことになります」
モーガンがうなずく。
「店から犯行現場までは車で三時間以上かかります」
「そうね」
マリベルは資料を手に取った。
「証人は、なぜ被告人と一緒にいたの?」
誰も答えなかった。
マリベルは映像を止める。
「この二人の関係も調べる必要があるわ」
ヘイズが頷く。
「検察に確認させますか?」
マリベルは少し考えた。
「そうして」
「分かりました」
マリベルはモニターから目を離した。
「この映像だけで判断してはいけません」
モーガンが答える。
「はい」
マリベルは事件資料へ目を落とした。
凶器。
血液。
指紋。
靴跡。
証人の供述。
そして、午後十時五十七分の動画。
これまで積み上げられていた証拠と、映像が食い違っている。
マリベルは資料を閉じた。
「検察に、もう一度事件を確認させましょう」
ヘイズとモーガンが頷く。
モニターの画面が消える。
部屋にはしばらく沈黙が落ちた。
