コンテンプト・オブ・コート 4-37
アンカレッジ連邦地方裁判所。
除幕式の会場では、コールの出馬表明を受けて記者たちが動き回っていた。
コールは笑顔を崩さず、カメラに向かって手を振っている。
そのとき、広場の入口が騒がしくなった。
「通してください!」
男の声が響いた。
人垣の間を、マイクが歩いてくる。
隣にはエイダン。
その後ろにはローリーがいた。
さらに、二人の間に挟まれるように、一人の男が連れられていた。
ブローカーだった。
記者たちが振り返る。
「何だ?」
「誰が来たんだ?」
マイクたちは銅像の前まで進む。
演壇の脇にいた職員が制止しようとした。
「ちょっと、困ります!」
マイクはその手を払いのけた。
「エルマ・アトキンソン検事はどこだ?」
広場が静かになった。
マイクは周囲を見回した。
「ラングドン検事もいるはずだ!」
人々の視線が一斉に集まる。
式典の関係者の中から、エルマとラングドンが姿を現した。
「何の騒ぎですか?」
エルマがマイクを見る。
マイクはブローカーの腕をつかんだまま、二人を指した。
「こいつは市長を殺害した真犯人に殺し屋を紹介したブローカーだ。証拠もある。逮捕しろ!」
広場が騒然となった。
記者たちが一斉にカメラを向ける。
「市長殺害事件の関係者ですか?」
「証拠とは何ですか?」
質問が飛び交う。
エルマはマイクをにらんだ。
「何を根拠にそんなことを言っているの?」
「本人に聞け」
マイクはブローカーを前へ押し出した。
ブローカーは顔を伏せたまま、何も言わなかった。
ラングドンが近づく。
「あなたがこの男を拘束したのですか?」
「確保しただけだ。あとは検察の仕事だろ」
「勝手なことを。証拠があるというなら提出しなさい。身柄はこちらで確保……」
エルマが言いかけたとき、コールが演壇から降りてきた。
「マイク・ハンター弁護士」
コールは笑みを浮かべていた。
「お疲れ様です」
マイクはコールを見た。
「どうも」
「仕事熱心ですね。除幕式にまで乗り込んでくるとは」
「話すには都合がいいと思いまして」
コールはブローカーに目を向けた。
エルマが会話に割って入る。
「名前は?」
ブローカーは答えない。
「聞こえなかったの?」
「……」
「あなたには、市長殺害事件に関する疑いがかかっています」
ブローカーは顔を上げ、コールを見た。
その視線に気づいたコールは、何も言わなかった。
マイクはその様子を見逃さなかった。
「知り合いですか?」
コールはマイクを見る。
「初めて見る顔ですね」
「そうですか」
マイクは短く答えた。
「なら、検察でゆっくり話してもらいましょう」
エルマが警備員に指示する。
「この男を検察庁へ。まずは任意で事情を聞きます」
警備員がブローカーの腕を取った。
ブローカーは抵抗しなかった。
連れていかれる直前、もう一度だけコールを見た。
コールは視線を返さなかった。
その間に、マリベルが側近とともに会場を離れようとしていた。
ローリーが気づく。
「マイク、裁判官が……」
マイクは振り返った。
マリベルは立ち止まらず、庁舎の入口へ向かっている。
コールもマリベルの後を追うように、会場を離れた。
残された広場では、記者たちがマイクを取り囲んでいた。
「証拠について教えてください」
マイクは答えなかった。
ローリーがマイクの腕を引く。
「ここを離れましょう」
三人は人垣を抜け、庁舎の脇へ移動した。
ローリーがマイクに尋ねた。
「本気で、裁判官が関与していると?」
マイクは庁舎の入口を見た。
「もう後戻りできない」
ローリーは黙った。
マイクは視線を戻した。
「ここからが本番だ」
