コンテンプト・オブ・コート 4-36
アンカレッジ連邦地方裁判所。
銅像の前にはマリベル裁判官が立ち、市民や報道関係者がその姿を見つめていた。
司会者がマリベルに近づく。
「ヴァレンタイン裁判官、最後に――」
その言葉を遮るように、コールが再び立ち上がった。
「すみません。もう少しだけ、よろしいですか」
司会者が戸惑う。
コールは返事を待たずに演壇へ向かい、マイクを受け取った。
マリベルはコールを見た。
コールは市民に向き直る。
「皆さん、先ほども申し上げましたが、テラ・インフラテックは裁判所に銅像を寄贈できたこと、そして、ヴァレンタイン裁判官とともに、この記念すべき日を迎えられたことを誇りに思います」
再び拍手が起きた。
コールは笑顔で手を上げ、静まるのを待った。
「私は、この街が持つ可能性を信じています。アンカレッジには、まだ発展する余地がある。市民の皆さんが安心して暮らし、次の世代が希望を持てる街にすることが必要です」
マリベルは演壇の脇で、黙って聞いていた。
コールは一度、広場を見渡した。
「そのために、私は決断しました」
記者たちがカメラを構え直す。
コールはマイクを握り直した。
「市民の皆さん……私は、裁判官の支持を得て、アンカレッジ市長選に立候補します!」
一瞬、広場が静まり返った。
次の瞬間、あちこちから声が上がった。
「市長選に?」
「コールCEOが?」
記者たちは一斉に質問を浴びせ始めた。
コールは片手を上げ、声を張った。
「私は、この街に命を捧げる覚悟です!」
拍手が起きた。
最初はまばらだったが、すぐに広場の一角から大きな拍手が広がった。支持者らしい数人が歓声を上げる。カメラのフラッシュが続いた。
コールはマリベルへ目を向けた。
マリベルは表情を変えず、軽く頷いた。
それだけで十分だった。
コールは再び市民へ向き直った。
「これから、皆さんの声を聞き、街の未来のために働きます。どうか、私の考えを聞いてください」
司会者は困惑したまま、演壇の脇に立っていた。
予定されていた除幕式は、いつの間にか市長選の出馬表明へと変わっていた。
広場には拍手と歓声が響き、記者たちは次々に質問を投げかける。
マリベルはコールの隣に立ったまま、表情を崩さなかった。
銅像の前で、二人は並んで市民の視線を浴びていた。
司法の権威と、次の市長を目指す企業経営者。
その二人が並ぶ姿は、集まった人々に強い印象を残した。
広場の端では、式典の様子を見ていた職員たちが互いに顔を見合わせていた。
コールは最後にもう一度、市民に呼びかけた。
「アンカレッジの未来を、皆さんと一緒につくりたい。それが私の願いです」
拍手が再び広がった。
マリベルは市民に向かって頭を下げた。
「コールは笑顔を崩さなかった。カメラの前で、最後まで市民に手を振っていた。
