コンテンプト・オブ・コート 4-35
アンカレッジ。
港湾地区から市街地へ続く道路。
ローリーの運転する車が、黒いセダンを追っていた。
運転席にはローリー。助手席にはマイク。後部座席にはエイダンとアーロンが座っている。
前方のセダンは速度を上げ、車線を変えながら逃げ続けていた。
「逃げ足の速い奴だな」
エイダンが言った。
マイクは前方を見た。
「逃がすな」
「分かってるわよ!」
ローリーがアクセルを踏み込む。
速度計の針が上がっていく。
二台は交差点を抜け、港から離れた幹線道路を走り続けた。
数分後。
道路が狭くなり、セダンが大型トラックを追い越そうとした。
ローリーもハンドルを切る。
二台の距離が縮まった。
「追いついたぞ!」
アーロンが声を上げた。
マイクは前方のセダンを見据えた。
「ローリー、もっと詰めろ」
「これ以上は危ないわ!」
ローリーはハンドルを握り直した。
セダンが急に左へ寄る。
ローリーも避ける。
車体が大きく揺れた。
「くそっ!」
エイダンが座席をつかむ。
「このままじゃ逃げられるぞ!」
「分かってるってば!」
ローリーの声に焦りが混じった。
マイクは前方のセダンを見た。
「ローリー」
「何よ!」
「突っ込め!」
ローリーが一瞬、マイクを見る。
「……本気?」
「思いっきりやれ」
「車が壊れるわよ!」
「直せばいい」
「そういう問題じゃないでしょう!」
マイクは前方を指した。
「今しかない。やれ!」
ローリーは唇を噛んだ。
前方のセダンが、さらに速度を上げる。
このままでは見失う。
ローリーは前を向いた。
「……後悔しても知らないからね!」
アクセルを踏み込む。
車が一気に加速した。
次の瞬間、ローリーはハンドルをわずかに調整し、セダンの後部へ車をぶつけた。
鈍い衝撃が車内に響いた。
「うおっ!」
後部座席のアーロンが声を上げる。
セダンが大きく揺れ、車体が左右に振れた。
ローリーはブレーキを踏みながらハンドルを保つ。
セダンは数メートル先で横向きになり、路肩に乗り上げて停止した。
ローリーも車を止める。
マイクがシートベルトを外した。
「よし」
ローリーはマイクを睨んだ。
「よし、じゃないわよ!」
後部座席からエイダンが降りる。
アーロンも続いた。
「怪我は?」
エイダンが聞く。
「ない」
マイクが答えた。
ローリーも額に手を当てながら頷く。
「私は大丈夫」
エイダンはセダンへ向かった。
運転席のドアを開ける。
ブローカーはハンドルに手を置いたまま、呆然としていた。
「降りろ」
ブローカーは首を振った。
「何なんだよ、お前ら!」
「いいから降りろ」
エイダンが腕をつかむ。
ブローカーは抵抗したが、アーロンが反対側から押さえた。
二人は男を路肩へ引き出した。
マイクが近づく。
「もう逃げられないぞ」
「俺は何も知らない!」
「もう一度、吊り下げられたいか?エイダン、やってやれ」
ブローカーは口を閉じた。
マイクは男の顔を見つめた。
「コールの秘書から金を受け取ったな」
ブローカーの表情が変わった。
「……知らねえよ」
マイクは携帯電話を取り出した。
「今度は答えてもらう」
ローリーが車から降り、マイクを見た。
「まったく……その男が死んだらどうするつもりだった?」
マイクは振り返った。
「生きているだろ。怪我もない」
エイダンがブローカーの腕をつかみ、立たせる。
「ビルから飛び降りるか、白状するか、選べ」
ブローカーは抵抗をやめた。
四人はブローカーを連れて、路肩に止めた車へ向かった。
マイクはブローカーを車に乗せながら、低い声で言った。
「全部、話してもらうぞ」
