コンテンプト・オブ・コート 4-32
アンカレッジ市内。
黒いセダンが市街地を走っていた。
後部座席にはケンドリック・コールが座っている。
運転席の秘書が口を開いた。
「社長、マイク・ハンターについて調べがつきました」
コールは窓の外を見た。
秘書が続ける。
「母親は人権派の弁護士でした。ヒューイ・フリーマンの妹で、二十年前にアンカレッジで死亡しています」
コールの指が止まった。
「……名前は?」
「リサ・グリーンです」
コールはゆっくり顔を上げた。
「リサ・グリーン……」
その名前を口にした瞬間、二十年前の光景が脳裏によみがえった。
雨の夜。
古い事務所。
目の前に立つ女。
リサ・グリーン。
コールは拳銃を構えていた。
女のそばには、小さな男の子がいた。
「メモリーカードはどこだ?」
コールが尋ねる。
リサは答えなかった。
「知らないと言っているでしょう」
コールは引き金を引いた。
銃声が響く。
弾丸がリサの腹部に命中した。
リサの体が揺れ、その場に崩れ落ちた。
「お母さん!」
少年が叫ぶ。
その顔を、今でも覚えている。
コールは前を向いた。
「……あの女」
秘書が答える。
「警察の記録では事故として処理されています」
コールは何も言わなかった。
目の前で、息子が母親の死を見ていた。
コールは窓の外を見つめた。
「カーター……」
低い声が漏れた。
秘書がバックミラー越しにコールを見る。
二十年前、カーターが少年を捕まえた。
コールは、カーターが少年を始末したものと思い込んでいた。
だが、少年は死んでおらず、二十年後、アンカレッジに戻ってきた。
しかも、カーターの弁護人として。
「カーターの野郎……」
コールの声が低くなる。
「俺を二十年間も騙していたのか」
秘書は黙っていた。
コールは拳を握った。
「……あのガキ」
コールは歯を食いしばった。
「まさか弁護士になるとは」
秘書が尋ねる。
「マイク・ハンターは、復讐のために戻ってきたのでしょうか?」
コールは答えなかった。
だが、答えは出ていた。
マイク・ハンターは偶然アンカレッジに戻ってきたのではない。
市長殺害事件を調べ、カーターを弁護し、自分に近づこうとしている。
二十年前のリサ・グリーン殺害。
その真相を知っている。
問題はどこまで知っているかだった。
