コンテンプト・オブ・コート 4-34
アンカレッジ連邦地方裁判所。
裁判所の正面広場には、市民や報道関係者が集まっていた。
広場の中央には、新たに設置された銅像が立っている。白い布で覆われた台座の前には演壇が置かれ、周囲には市や裁判所の関係者が並んでいた。
銅像を寄贈したのは、テラ・インフラテックだった。
マリベルが演壇に立つ。
拍手が起きた。
マリベルは市民を見渡し、マイクを手に取った。
「本日はお集まりいただき、ありがとうございます」
拍手が収まる。
「この銅像は、アンカレッジの歴史と、法の下で市民の権利を守るという理念を後世に伝えるために設置されました」
マリベルは銅像へ目を向けた。
「裁判所の役割は、誰かの利益を守ることではありません。立場や財産にかかわらず、すべての人に公平な判断を下すことです」
最前列の市関係者が頷く。
記者たちがカメラを向けた。
「法の信頼は、一日で築かれるものではありません。日々の仕事を積み重ね、市民の皆さんに信頼していただくことで、初めて成り立ちます」
広場のあちこちから拍手が起きた。
マリベルは一度、言葉を切った。
「この銅像が、私たちにその責任を思い出させる存在になることを願っています」
演説が終わる。
万雷の拍手が広場を包んだ。
マリベルは軽く頭を下げた。
司会者が演壇へ上がる。
「それでは、ヴァレンタイン裁判官による除幕を――」
そのとき、最前列に座っていたケンドリック・コールが立ち上がった。
コールは司会者のもとへ歩いていき、マイクを受け取った。
「皆さん、少しだけお時間をください」
会場が静かになる。
マリベルはコールを見た。
コールは市民に向き直った。
「私は、テラ・インフラテックのCEOとして、この銅像を裁判所に寄贈できたことを誇りに思います」
拍手が起きた。
コールは手を上げ、拍手が収まるのを待った。
「そして、もう一つ申し上げたいことがあります」
記者たちがカメラを構え直す。
コールはマリベルへ視線を向けた。
「ヴァレンタイン裁判官は、長年にわたり、この街の司法を支えてこられました。市民の皆さんから寄せられる信頼も、その仕事の積み重ねによるものです」
マリベルは表情を変えず、コールを見ていた。
コールは笑顔を作った。
「彼女は素晴らしい仕事をしています。最高裁長官、いや、大統領になれる器です!」
広場に大きな拍手が起きた。
一部の市民が歓声を上げる。
マリベルは軽く頭を下げた。
コールはマイクを司会者へ返し、演壇から降りた。
「ありがとうございました」
司会者が頭を下げる。
「それでは、除幕を行います」
係員が銅像を覆う布の端をつかんだ。
合図とともに布が引かれ、銅像が姿を現した。
再び拍手が広がる。
マリベルは銅像の前に立ち、市民へ向かって頭を下げた。
コールはその様子を少し離れた場所から見ていた。
マリベルは市民に囲まれ、祝辞を受けている。
コールは今日、マリベルの権威を市民の前で示した。
次は、自分の名前を市民に刻みつける番だった。
