コンテンプト・オブ・コート 4-33
アンカレッジ近郊。
港湾地区。
マイクとエイダンは、少し先にとまっている黒いセダンを見た。
ブローカーは母親とみられる女性を事務所の前で降ろしていた。
マイクはエイダンを見る。
「今だ」
二人は道路へ出た。
マイクが車の前に立つ。
エイダンは反対側へ回り込んだ。
ブローカーが顔を上げる。
「お前ら!」
マイクは車の前から動かなかった。
「話がある」
「俺はない。どけ!」
「コールの秘書から金を受け取ったな」
男の表情が変わった。
「知らねえよ!」
エイダンが運転席のドアへ近づく。
「なら、警察で話を聞こうか」
ブローカーは二人を見た。
次の瞬間、エンジンが唸り、急発進した。
マイクは横へ飛び退く。
車体が目の前を通り過ぎた。
エイダンも身をかわしたが、腕が車体にかすった。
「くそっ!」
エイダンが振り返る。
黒いセダンは港の出口へ向かった。
マイクは走り出した。
「追うぞ!」
マイクは携帯電話を取り出した。
「ローリー、聞こえるか?」
『どうしたの?』
「ブローカーに逃げられた。港の出口へ向かっている」
『今どこ?』
「北側のコンテナ置き場だ」
『分かった。アーロンとそっちへ向かう』
「急いでくれ」
通話を切る。
エイダンが黒いセダンの消えた方向を見ていた。
「まいったな」
マイクは港の出口を見た。
数秒後、車が猛スピードで走ってきた。
運転席にはローリー。
助手席にはアーロンが乗っている。
車が二人の前で急停止した。
ローリーが窓を開ける。
「乗って!」
マイクが助手席のドアを開けた。
「アーロン、後ろに回れ」
アーロンが後部座席へ移る。
マイクが助手席に乗り、エイダンが後部座席へ滑り込んだ。
ローリーがアクセルを踏み込む。
「それで、どっちへ?」
「出口を出て右だ!」
マイクが答えた。
車が走り出す。
港のゲートを抜け、一般道へ入る。
マイクは携帯電話を確認した。
「ブローカーの車は黒いセダンだ」
ローリーがハンドルを切る。
「一つ聞いていい?」
「何だ?」
「ブローカーを怒らせたの?」
「仕事をしているだけだ」
「あなたの場合、それが一番厄介なのよ」
エイダンが後部座席から口を挟む。
「話はあとにしろ」
ローリーは前方へ視線を戻した。
そのとき、アーロンが声を上げた。
「いた!」
前方の交差点。
黒いセダンがトラックの後ろを走っている。
マイクが身を乗り出した。
「あれだ」
ローリーはアクセルを踏み込んだ。
「今度は逃がさないわよ」
車が加速する。
黒いセダンも速度を上げた。
二台は港から市街地へ続く道路に入った。
マイクは前方を見据えた。
「追いつくぞ」
ローリーは車間距離を詰めた。
ブローカーのセダンは、さらに速度を上げていった。
