コンテンプト・オブ・コート 4-31
アンカレッジ近郊。
港湾地区。
エイダンの車は、倉庫が並ぶ道路を走っていた。
海から冷たい風が吹きつけている。岸壁には貨物船が停泊し、クレーンが並んでいた。
エイダンは速度を落とした。
「アーロンはどこだ?」
マイクが携帯電話を確認する。
「この先だ」
車は古い倉庫の手前で止まった。
道路脇に、アーロンが立っていた。
エイダンが窓を開ける。
「待たせたな」
アーロンが近づいてくる。
「いつでもいけるぞ」
エイダンは車を降りた。
マイクとローリーも続く。
アーロンは倉庫の向こうを指した。
「ブローカーはあそこだ」
マイクが視線を向ける。
少し離れた岸壁に、一台の車が止まっていた。
そのそばに、帽子をかぶった男が立っている。
ブローカーだった。
ブローカーは携帯電話を耳に当て、周囲を気にしながら話していた。
その近くに、年配の女性がいた。
女性はブローカーに何かを話している。
ブローカーは電話を切ると、女性の荷物を持ち上げた。
ローリーが小声で尋ねた。
「隣にいる人は?」
アーロンが答えた。
「あいつの母親らしい」
エイダンが眉をひそめる。
「母親?」
マイクは二人の様子を見ていた。
女性はブローカーの腕に触れ、何かを尋ねている。
ブローカーは笑顔で答えていた。
だが、時折、周囲を警戒するように視線を動かしている。
エイダンが低い声で言った。
「捕まえて全部吐かせよう」
アーロンが頷く。
「今ならいける。周囲に仲間はいない」
エイダンはマイクを見た。
「合図しろ」
マイクは動かなかった。
「少し待とう」
エイダンが眉を寄せる。
「何を待つ?」
マイクは女性を見た。
「母親に、奴が逃げるところを見せたくない」
ローリーがマイクを見る。
「逃がすつもり?」
「違う」
マイクは短く答えた。
「ここで追いかければ、あの女性も巻き込む。何も知らないなら、なおさらだ」
エイダンは腕を組んだ。
「その間に逃げられたらどうする?」
「逃がさない」
マイクの声に迷いはなかった。
アーロンが周囲を確認する。
「どうする?」
マイクは男の車を見た。
ブローカーは女性の荷物を車の後部座席へ積み込んでいる。
女性が何かを尋ねる。
ブローカーは頷き、助手席のドアを開けた。
「まず、二人が別れるのを待つ」
マイクが言った。
「そのあとで押さえる」
エイダンは納得していない様子だったが、それ以上は反論しなかった。
ローリーは女性を見つめていた。
「本当に母親なのかしら」
「本人がそう呼んだんだ」
アーロンが答える。
「ただ、詳しいことは分からない」
マイクは目を細めた。
ブローカーが女性の肩に手を置く。
女性はブローカーの顔を見上げ、何かを言った。
ブローカーは一瞬だけ表情を曇らせた。
それから笑い、女性を車へ促した。
マイクはその様子を見ていた。
「……まだ動くな」
四人は倉庫の陰に身を隠したまま、ブローカーと女性を見張った。
港には船のエンジン音が響いている。
やがて、女性が車に乗り込んだ。
ブローカーはドアを閉め、運転席へ回った。
エイダンがマイクを見る。
「そろそろか?」
マイクは答えず、車の動きを見ていた。
男がエンジンをかける。
ヘッドライトが点灯した。
車はゆっくりと岸壁を離れ、道路へ向かった。
マイクが一歩前へ出た。
「行くぞ」
四人はブローカーの車を見失わないように距離を保ちながら動き始めた。
