コンテンプト・オブ・コート 4-30
アンカレッジ市内。
エイダンの車が交差点を曲がった。
古い建物が並ぶ地区へ向かっている。
運転席にはエイダン。
助手席にはマイク。
ローリーは後部座席に座っていた。
マイクは携帯電話を取り出した。
画面を確認し、アーロンに電話をかける。
数回の呼び出し音のあと、つながった。
「俺だ」
『ああ』
「そっちに向かってる。もうすぐ着く。ブローカーは?」
『目の前にいる』
「分かった。動くなよ」
『了解』
マイクは電話を切った。
ローリーが前の席を見た。
「ねえ、マイク」
「何だ?」
「通話履歴を調べて、ブローカーにたどり着いたのよね?」
「ああ」
「殺し屋の携帯電話を使ったの?」
マイクは答えなかった。
ローリーは眉をひそめた。
「……その携帯電話、どこで手に入れたの?」
沈黙。
ローリーはマイクの顔を見た。
「まさか……」
マイクは窓の外へ視線を向けた。
「マイク!」
ローリーの声が強くなる。
「あなた、あの男が死んだあと、携帯電話を持ち去ったのね」
「そうだ」
「それで通話履歴を調べて、コールの秘書につながる番号を見つけたと」
ローリーは額に手を当てた。
「信じられない……」
「何が?」
「言ったでしょ!不正に取得した証拠は裁判で使えないの!」
マイクはローリーを見た。
「知ってるよ」
「知っててやったの?」
「そうだ」
ローリーは身を乗り出した。
「だったら、何のためにそんなことをするのよ!」
「裁判で使うためじゃない」
「じゃあ、何?」
「手掛かりを探すためだ」
マイクは淡々と答えた。
「誰が殺し屋に仕事を依頼したのか。コールの秘書が何をしていたのか。通話履歴を調べれば、そこまでは分かる」
「でも、その情報を法廷で使えなかったら意味がないでしょう」
「直接使えなくても、別の証拠を探す手掛かりにはなる」
ローリーは黙った。
マイクは携帯電話を確認した。
「これが俺のやり方だ。そろそろ慣れないと」
「慣れるわけないでしょう!」
ローリーは声を荒らげた。
「あなたは弁護士なのよ。証拠の扱い方くらい分かっているはずでしょう?」
「分かってる」
「だったら――」
「ローリー」
マイクが遮った。
「俺は法廷で使えないものを、使えると言い張るつもりはない」
ローリーはマイクを見つめた。
「……それでも、勝手に証拠を集めるのは問題よ」
「分かってる」
ローリーは深く息を吐いた。
「あなたと仕事をしていると、いつか私まで捕まりそうね」
「その時は弁護してやる」
「誰があなたに頼むのよ!」
エイダンが小さく笑った。
「仲がいいな」
「よくない!」
ローリーが即座に返す。
マイクは気にする様子もなく、携帯電話をしまった。
「もうすぐ着くぞ」
ローリーは腕を組み、窓の外を見た。
「次に何か隠したら、絶対に許さないから」
「分かった」
「本当に?」
「たぶん」
エイダンは笑いをこらえながら、ハンドルを切った。
車は港湾地区へ続く道路に入った。
マイクは前方を見据えた。
