コンテンプト・オブ・コート 4-28
アンカレッジ。
マイクの事務所。
マイクはドアを開け、室内に入った。
照明をつける。
古い机が三つ並んでいる。壁際には書類棚があり、窓の外には街の明かりが見えた。
マイクはコートを脱ぎ、椅子の背に掛けた。
机の上には、市長殺害事件の資料が積まれている。
凶器。
血液。
指紋。
靴跡。
証人の供述。
そして、裁判官の名前。
マイクは椅子に座り、資料を一枚ずつ確認した。
証拠は揃っている。
だが、カーターは犯人ではない。
証人は証言を変えた。凶器も指紋も、カーターを犯人に仕立てるために用意された可能性がある。
さらに、ノース・ホライズン・シティの再開発計画が動き始めていた。
ケンドリック・コール。
マリベル・ヴァレンタイン。
二十年前の事件と、今の市長殺害事件。
まだ、すべてがつながったわけではない。
それでも、マイクには分かっていた。
この街には、表に出ていない何かがある。
マイクは椅子の背にもたれ、天井を見上げる。
二十年前。
車の中で、少年だったマイクはカーターの腕に噛みついた。
逃げようとした。
だが、逃げ切れなかった。
そして、母親は殺された。
リサ・グリーン。
弁護士だった母親。
最後に交わした言葉。
もう二度と戻ってきてはならないと言われた街に、マイクは戻ってきた。
復讐のために。
マイクは目を閉じた。
あの夜の記憶が、頭の中によみがえる。
雨音。
母親の声。
閉じたドア。
それから、長い沈黙。
マイクは目を開けた。
ローリーの顔が頭に浮かぶ。
初めて会ったときの険しい表情。
人の話を聞かず、自分に腹を立てていた。
それでも、カーターを無実だと信じ、証人を探し、裁判のために動いている。
ローリーは母親がどうなったか知らない。
二十年前、マイクがどんな目に遭ったのかも知らない。
カーターに拉致された自分を助けてくれた女性。
あの夜、手を差し伸べてくれたのは、ローリーの母親だった。
彼女が助けてくれなければ、死んでいたかもしれない。
マイクはペンを手に取り、ローリーの名前を紙に書いた。
ローリー・ブルックス。
しばらく、その文字を見つめる。
「……ローリー」
マイクは静かに呟いた。
決着をつけなければならないことがある。
母親を殺したコール。
その事件に関わった者。
そして、今も街の裏側で動いている連中。
何があっても、途中でやめるつもりはなかった。
