コンテンプト・オブ・コート 4-25
アンカレッジ刑務所。
駐車場。
カーティスはローリーを見ていた。
「弁護士になったとは、大したもんだ」
ローリーは小さく頷いた。
カーティスが続ける。
「失踪事件は簡単には終わらない。手掛かりがなければ、何年経っても進展しないこともある」
「分かっています」
ローリーは手にしていたファイルを抱え直した。
「でも、私はまだ諦めてません」
カーティスは黙ってローリーを見た。
「当然だ」
短い返事だった。
ローリーは少し視線を落とした。
二十年前、母親は文房具を買いに出かけたまま帰ってこなかった。
警察は捜索を続けた。カーティスも何度も家を訪れ、母親の交友関係や立ち寄り先を調べた。それでも、母親の行方は分からなかった。
当時のローリーには、何が起きているのか理解できなかった。
ただ、母親が帰ってくると信じて待っていた。
今も、その気持ちは変わっていない。
「刑事は、今でも何か覚えていますか?」
カーティスは少し考えた。
「何を?」
「母の事件です」
「もちろん」
カーティスは静かに答えた。
「未解決事件のひとつだ。忘れるわけがない」
ローリーは顔を上げた。
「……そうですね」
ローリーはそれ以上、聞かなかった。
カーティスも、母親の失踪について新しい情報を持っているわけではなさそうだった。
それでも、ローリーにとっては、今も事件を覚えている人がいることがうれしかった。
「刑事」
「何だ?」
「これ、受け取ってください」
ローリーは鞄から名刺を取り出し、カーティスに渡した。
カーティスは表と裏を確認した。
「ローリー・ブルックス弁護士……か」
「何か分かったら、連絡してください。どんな小さなことでも構いません」
「分かった」
カーティスは名刺を胸ポケットにしまった。
「君も、何かあったら連絡してくれ」
「はい」
カーティスは一度、刑務所の正門へ目を向けた。
「ところで、今日はここに何の用だったんだ?」
ローリーは一瞬、マイクの方を見た。
マイクは少し離れた場所で、二人の会話が終わるのを待っていた。
「仕事です。市長殺害事件の件で」
「そうか」
カーティスはそれ以上、尋ねなかった。
「じゃあ、またな」
「はい。ありがとうございました」
カーティスは軽く手を上げ、刑務所の方へ歩いていった。
ローリーは、その背中をしばらく見送った。
やがて、マイクのところへ戻る。
「終わったか?」
「ええ」
マイクは車の鍵を指先で回した。
「行くぞ」
ローリーは頷いた。
二人は車へ向かった。
母親がいなくなって二十年。
諦めるつもりはなかった。
いつか必ず、母親がどこへ行ったのかを突き止める。
ローリーは助手席に乗り込んだ。
マイクが運転席に座る。
エンジンがかかった。
車が走り出す。
ローリーは窓の外を見ていた。
母親の失踪も、カーターの事件も、まだ答えは出ていない。
だが、どちらも自分の手で確かめる。
そう決めていた。
