コンテンプト・オブ・コート 4-23
アンカレッジ刑務所。
面会室。
ローリーは机の向こう側に座っていた。
扉が開き、カーター刑事が看守に付き添われて入ってくる。首には、シャワー室で襲われたときの傷跡がまだ残っていた。
カーターは椅子に座ると、ローリーを見た。
「市長を殺害した殺し屋が死んだらしいな」
ローリーは頷いた。
「はい。マイクとエイダンが追い詰めました。男はコールCEOの命令で市長を殺したと話したあと、自殺しました」
「そうか……」
カーターはしばらく黙っていた。
「それで、俺はどうなるんだ?」
ローリーは持参したファイルを開いた。
「証人の証言があります。それに、店内で撮影された映像も見つかりました。午後十時五十七分、あなたと証人が一緒にいる様子が映っています」
「それで無罪にできるのか?」
「証言と映像を合わせれば、あなたのアリバイを裏付けられます」
カーターはローリーを見つめた。
「……マリベル・ヴァレンタインが、その証拠を採用すると?」
ローリーは眉を寄せた。
「どういう意味ですか?」
「前の公判を忘れたのか?あの女は証人の証言を疑った。証拠として採用するかどうか分からない」
「映像の真偽を確認する必要があるからでしょう。裁判官として当然の判断です」
カーターは小さく息を吐いた。
「そう考えるのか」
「何か問題があるんですか?」
カーターは机に両手を置いた。
「裁判官とケンドリック・コールはグルなんだろ?」
ローリーの表情が変わった。
「……何を言っているんですか?」
「マイク・ハンターから聞いていないのか?」
ローリーは首を振った。
「馬鹿なことを言わないで!マリベル裁判官はそんな人じゃない」
「なぜ、そう言い切れる?」
「私はあの人を知っています。私が弁護士を続けられたのも、あの人が支えてくれたからです」
「お前には親切だったんだな」
「そうです。私が失敗したときも、立ち直る機会を与えてくれました。裁判官としても、いつも公正に判断してきた人です」
カーターは黙って聞いていた。
「あなた、何か誤解しているんじゃないですか?」
「誤解か……」
カーターは椅子の背にもたれた。
「市長が殺され、俺は罪を着せられた。証人は脅され、俺は終身刑になってもおかしくない状況だ。そして、裁判官は俺に不利な証拠ばかりを受け入れようとしている」
カーターはローリーを見た。
「それでも、何も疑わないのか?」
ローリーは答えられなかった。
「お前も弁護士なら、目の前の証拠だけじゃなく、それを誰がどう扱っているのか考えろ」
ローリーはファイルを閉じた。
「話にならない。適当なことを言わないで」
面会室に沈黙が落ちた。
やがて、カーターが立ち上がった。
「マイク・ハンターに聞いてみろ。あいつは俺より多くのことを知っているぞ」
「分かりました」
ローリーも立ち上がった。
「また来ます」
カーターは答えず、看守とともに面会室を出ていった。
ローリーは一人、机の上に残ったファイルを見つめた。
証人の供述。
証拠映像。
実行犯の告白。
そして、マリベル・ヴァレンタイン。
ローリーにとって、マリベルは自分を支えてくれた恩人だった。疑う理由などない。そう思ってきた。
ローリーはファイルを鞄にしまった。
マイクに会う必要がある。
カーターの言葉の意味を確かめるために。
ローリーは面会室を出た。
