コンテンプト・オブ・コート 4-22
アンカレッジ連邦地方裁判所。
執務室を出たマイクは、廊下を歩いていた。
証拠映像は不採用。
ヘイズ裁判官の忌避も認められなかった。
マリベルは、どちらの問題も形式的な理由で退けた。
マイクは表情を変えず、階段へ向かった。
背後から声がした。
「ハンター弁護士」
振り返ると、エルマ・アトキンソン検事が立っていた。
「何か?」
エルマはマイクの顔を見た。
「なぜ、そんなに余裕があるんです?」
「余裕?」
「証拠映像を退けられたんですよ。裁判官の忌避も認められなかった。それなのに、あなたは少しも動揺していない」
マイクは肩をすくめた。
「予想どおりの展開だからさ」
「予想どおり?」
「そうだ」
マイクは廊下の窓から外を見た。
「コールCEOを市長にするために、前市長を殺害した。俺はそう考えている」
エルマの表情が硬くなる。
「そんな話を、どうして私に?」
「君はコールCEOの人間性を知っているはずだ」
「根拠もなく、企業の社長を殺人犯扱いするんですか?」
「根拠はこれから示す」
マイクはエルマを見た。
「君はどう思う?」
「答えるつもりはありません」
「そうか」
マイクはあっさり引き下がった。
エルマは不審そうにマイクを見る。
「あなた、何を考えているの?」
「仕事だよ」
「その仕事のためなら、裁判官にも喧嘩を売ると?」
「喧嘩を売ったつもりはない。質問しただけだ」
「同じことです」
マイクは小さく笑った。
「俺たちは真実を追求する敵同士だからな」
エルマは黙った。
「法廷では遠慮しない。君もそうだろう?」
「当然です」
「次の公判で会おう」
マイクは背を向けた。
「待ちなさい」
エルマが呼び止める。
マイクは振り返った。
「あなたは本当に、カーターが無実だと思っているの?」
「思ってる」
「証拠が山ほどあるのに?」
「証拠が多いことと、真実であることは別だ」
エルマは答えなかった。
マイクはそれ以上話さず、階段を下りていった。
裁判所の入口を出ると、冷たい風が吹いていた。
マイクは携帯電話を取り出した。
エイダンに電話をかける。
数回の呼び出し音のあと、エイダンが出た。
『どうした?』
「そっちにローリーはいるか?」
『いない』
マイクは画面を見た。
ローリーに何度か電話をかけたが、つながらなかった。
「電源が切れてる」
エイダンの声が少し変わった。
『ローリーなら、カーター刑事の面会に行ったぞ』
マイクの足が止まった。
「一人で?」
『ああ。何か問題でも?』
マイクは答えなかった。
『どうした?』
「……分かった」
電話を切る。
カーター。
マリベル。
コール。
そして、何も知らないまま事件に踏み込もうとしているローリー。
マイクは携帯電話をポケットにしまい、車へ向かった。
