コンテンプト・オブ・コート 4-24
アンカレッジ刑務所。
ローリーは正門の前に立っていた。
手にはカーターの事件資料が入ったファイルを持っている。
一台の車が駐車場に入ってきた。
運転席からマイクが降りる。
ローリーを見つけると、歩いて近づいた。
「カーターは何か言ってたか?」
ローリーの表情が変わった。
「……裁判官とコールがグルだと、どういうこと?」
マイクはしばらくローリーを見ていた。
「……客観的に考えたことは?」
「どういう意味?」
「裁判官には裏の顔があるんじゃないかと」
ローリーはすぐに首を振った。
「裁判官はそんな人じゃない」
「どうしてそう言い切れる?」
「私はあの人を知ってる。私が弁護士を続けられたのも、あの人のおかげよ」
マイクは黙って聞いていた。
「私が失敗したときも、立ち直る機会を与えてくれた。あの人はいつも公正だったわ」
「君に対してはな」
ローリーが眉をひそめる。
「何が言いたいの?」
マイクは答えず、刑務所の建物を見た。
「裁判官はこちらの証言と証拠をすべて棄却した」
ローリーの表情が変わった。
「全て?映像証拠も?」
「ああ」
「でも、映像にはカーター刑事が映っている。証人も証言したのよ」
「それでも、裁判官は証拠として認めなかった」
ローリーは言葉を失った。
「映像の真偽を確認する必要があると言っていたわ」
「確認することと、証拠を退けることは別だ」
「それは……」
「君は裁判官のことを何も知らない」
ローリーはマイクをにらんだ。
「あなたは知っているの?」
マイクは答えなかった。
「カーター刑事はあなたに聞けといった。多くのことを知っていると」
「そうか」
「マリベル裁判官とコールCEOが本当につながっているなら、証拠はあるの?」
「調査中だ」
「それだけ?」
「今はな」
ローリーは苛立ったように息を吐いた。
「あなたもカーター刑事も、何かを知っているようなことばかり言う。でも、肝心なことは何も話さない」
「知らないことまで話すわけにはいかない」
「私はあなたのパートナーでしょう」
「ああ」
「だったら、少しは説明して」
マイクはローリーを見た。
「証拠を見ろ。俺の言葉じゃなく、事実で判断しろ」
ローリーは黙った。
マイクは車の鍵を取り出した。
「行くぞ」
「どこへ?」
「車だ。ここでは話せない」
ローリーはファイルを抱え直し、マイクの後について歩き始めた。
駐車場へ向かう途中、背後から声がした。
「もしかして、ローリーじゃないか?」
ローリーが振り返る。
五十代の男が立っていた。州警察の刑事、カーティス・ハミルトンだった。
ローリーは目を見開いた。
「……あなたは、カーティス刑事?」
カーティスは懐かしそうに笑った。
「久しぶりだな」
ローリーは一瞬、返事ができなかった。
二十年前、母親が失踪したとき、捜査に関わっていた刑事。
母親が帰ってくることを信じ、何度も警察へ通った日々。
その頃の記憶が、頭の中によみがえった。
「どうして、ここに?」
「仕事で来たんだ。それより、立派になったな」
ローリーは小さく笑った。
「ありがとうございます」
カーティスはしばらくローリーを見つめた。
「お母さんが知ったら、きっと喜ぶだろうな」
ローリーは表情を変えず、言った。
「そうですね」
カーティスは表情を曇らせた。
ローリーはカーティスの心情を察した。
「刑事には感謝しています。最後まで諦めずに捜してくれたから」
「仕事だからね」
