コンテンプト・オブ・コート 4-29
アンカレッジ。
マイクの事務所。
朝。
マイクは机の上に広げていた資料をまとめ、鞄に入れた。
窓の外では、通勤する車が行き交っている。
ドアの前にエイダンが立っていた。
「準備はいいか?」
「ああ」
マイクはコートを着た。
「ブローカーがコールと殺し屋の仲介を?」
エイダンは鍵を手に取った。
「そう考えるのが自然だな。通話履歴が残っていたし」
エイダンはマイクを見て言った。
「殺し屋が死んだ途端、コールの秘書からの連絡が途絶えた。それまでは何度も連絡を取っていた」
「コールも殺し屋が死んだことを知っている」
「俺たちが殺し屋の携帯電話を持っていることもな」
エイダンは携帯電話をポケットにしまった。
「ブローカーに会いに行こう」
「位置は?」
「アーロンが張りついている。今も監視中だ」
マイクはドアを開けた。
「行こう」
二人は廊下へ出た。
階段を下り、入口へ向かう。
そのとき、背後から声がした。
「ちょっと、どこに行くの?」
振り返ると、ローリーが立っていた。
コートを着て、鞄を肩に掛けている。
マイクは時計を見た。
「早いな。もう出社か?」
「私の勝手でしょ」
「今日は事務所にいてくれ」
マイクはそのまま入口に向かう。
ローリーは早歩きでマイクの横を通り過ぎ、先に建物の外へ出た。
路肩に止めてある車の後部座席を開ける。
そして、鞄を置いて座った。
マイクが足を止める。
「何をしてる?」
「見れば分かるでしょう」
「ローリー」
「私も行くわ。早く乗りなさい」
エイダンがマイクを見る。
「どうする?」
「……勝手にしろ」
マイクは助手席に乗り込んだ。
エイダンが運転席に座り、エンジンをかける。
ローリーは前の二人を見た。
「それで、どこへ行くの?」
「ブローカーを探す」
マイクが答えた。
「コールの秘書とつながっている男だ」
ローリーの表情が変わる。
「移民の密入国を支援している男?」
「そうだ」
ローリーはため息をついた。
「せめて、何を調べているのかくらい説明してよ」
マイクは窓の外を見た。
「殺し屋は死んだ。だが、誰が仕事を仲介したのかは分かっていない」
「だからブローカーを探す」
エイダンが続けた。
「通話履歴から、殺し屋はコールの秘書と接触していたことが分かった。ブローカーを押さえれば、殺し屋に仕事を依頼した経緯が分かるかもしれない」
ローリーは頷いた。
「最初からそう説明してくれればいいのに」
「説明する前に乗り込んできたのは君だろ」
「あなたが何も言わずに出ていこうとするからよ」
「そうだったな」
マイクは気にした様子もなく答えた。
ローリーは腕を組む。
「本当に腹が立つ男ね」
「よく言われる」
エイダンが小さく笑い、車を発進させた。
市街地へ向かう道路に合流する。
マイクは携帯電話を取り出し、アーロンに電話をかけた。
呼び出し音が数回続いた。
「俺だ」
『どこだ?』
「そっちに向かってる。もうすぐ着く。ブローカーは?」
『目の前にいるよ』
マイクは前を見た。
「動きがあったら知らせろ」
『了解』
通話を切る。
ローリーが尋ねた。
「もう見つけたの?」
「アーロンが張りついている」
「なら、すぐに会えるわね」
「油断しない方がいい」
マイクは携帯電話をしまった。
「まずは、誰とつながっているか確かめる」
エイダンがハンドルを切った。
車は交差点を曲がり、古い建物が並ぶ地区へ向かった。
