コンテンプト・オブ・コート 4-20
アンカレッジ市内。
黒いセダンが市街地を走っていた。
後部座席にはコールが座っている。
秘書がハンドルを握っていた。
車内は静かだった。
コールは窓の外を見ていた。
そのとき、秘書の携帯電話が鳴った。
秘書は画面を確認した。
表情が変わる。
コールが気づいた。
「誰だ?」
秘書は画面を見たまま答えた。
「……殺し屋の番号です」
コールが振り返る。
「死人から電話か」
「以前、連絡に使っていた番号と一致しています」
コールは秘書の手元を見た。
「誰が電話を持っているか確認しろ」
「はい」
秘書は通話ボタンを押した。
「もしもし」
男の声が聞こえた。
『本人じゃなくてすまない』
秘書の手が止まる。
隣の車線を別の車が通り過ぎた。
『市長を殺したのはお前だな』
秘書は息を止めた。
コールは秘書の様子を黙って見ていた。
電話の向こうの男は、構わず話を続けた。
『また電話する。今度はもっと早く出ろよ』
通話が切れた。
秘書は携帯電話を置き、車線を変更した。
コールが秘書に尋ねる。
「マイク・ハンターだな」
「おそらく」
「現場から携帯電話を持ち去ったんだろうよ」
コールは秘書の携帯電話を取った。
通話履歴に表示された番号を確認する。
実行犯に渡していた携帯電話の番号だった。
「……そんなに殺されたいのか」
コールは窓の外へ目を向けた。
街灯が車体を照らし、後方へ流れていく。
「マイク・ハンター……」
小さく呟いた。
秘書がバックミラー越しにコールを見る。
「どうしますか?」
コールはしばらく黙っていた。
「今はまだ動くな」
「承知しました」
秘書は前を向いた。
車は交差点を曲がり、夜の街を走り続けた。
