コンテンプト・オブ・コート 4-14
アンカレッジ。
マイクの事務所。
ローリーは事務所の奥にある小さな部屋で裁判資料を読んでいた。
ドアは少しだけ開いている。
廊下の向こうから、マイクとジムの声が聞こえてきた。
ローリーは資料から顔を上げた。
「終わったのか?」
マイクの声だった。
「もう少しだ」
ジムが答える。
ドアの隙間から、二人の姿が見える。
ジムは机の前に座り、ノートパソコンを操作していた。
その横には、一台の携帯電話が置かれている。
ローリーは目を細めた。
見覚えのない携帯電話だった。
マイクが机の前に立つ。
「どうだ?」
ジムは画面を見ながら答えた。
「メールも電話番号登録もなし」
マイクは黙って聞いている。
「空だ」
「通話履歴は?」
「残ってる」
ジムが画面を操作する。
「これだけだ」
マイクが近づく。
画面には、いくつかの電話番号が並んでいた。
ローリーは少しだけ身を乗り出した。
「最後の通話は?」
「これだ」
ジムが一つの番号を指す。
「事件の直前にかけてる」
マイクは画面を見つめた。
「通話時間は?」
「短い。数十秒」
マイクは携帯電話を手に取った。
「登録名は?」
「ない」
マイクはしばらく番号を見ていた。
「予想通りか」
ジムがマイクを見る。
「この番号を調べるか?」
マイクは携帯電話を机に戻した。
「かけてみようか?」
「それが一番手っ取り早い」
ジムが別の端末を起動する。
ローリーはドアの隙間から、その様子を見ていた。
あの携帯電話は誰のものなのか。
ローリーは知らなかった。
だが、マイクの態度から、それが普通の携帯電話ではないことだけは分かった。
ジムが画面を操作する。
ローリーはマイクの横顔を見ていた。
何かを隠している。
ローリーは静かにドアから離れた。
資料を持って、元の席へ戻る。
廊下から、再びジムの声が聞こえた。
「出た」
ローリーは手を止めた。
「誰だ?」
マイクの声。
「この番号には……」
「……どこだ?」
「……です」
ローリーは資料へ視線を戻した。
文字が頭に入らない。
マイクは何かを調べている。
自分には何も話していない。
ローリーはペンを置いた。
二人はまだ話している。
ローリーは二人の会話を聞きながら、静かに考えていた。
あの携帯電話は何なのか。
なぜマイクは隠しているのか。
ローリーは資料を閉じた。
