コンテンプト・オブ・コート 4-12
アンカレッジ。
マイクの事務所。
マイクは机の前に座っていた。
窓の外には、アンカレッジの街明かりが見える。
机の上には、市長殺害事件の資料が広げられていた。
マイクは一枚の写真を手に取った。
そのとき、事務所のドアがノックされた。
「どうぞ」
ドアが開く。
一人の男が入ってきた。
五十代。
落ち着いた服装。
男は室内を見回してから、マイクを見る。
「久しぶりだな」
「ヒューイ」
ヒューイ・フリーマンだった。
マイクは立ち上がらない。
「よく来たな」
ヒューイは椅子を引き、机の前に座った。
マイクは窓の外を一度見た。
「コールが市長選に立候補します」
ヒューイの表情が変わる。
「そうか」
「マリベル・ヴァレンタインは、奴を市長に据えるつもりです」
ヒューイはしばらく黙っていた。
「そうか。荒れそうだな」
「はい」
マイクは机の上の資料を見る。
「だから、早く動く必要があります」
「市長殺害事件か?」
「はい」
ヒューイはそれ以上聞かなかった。
そのとき、廊下から足音が聞こえた。
マイクがドアを見る。
ドアが開く。
ローリーが入ってきた。
「マイク?」
マイクが顔を上げる。
「こんな遅くにどうした?」
ローリーはヒューイに目を向けた。
「……こちらは?」
ヒューイが立ち上がる。
マイクが答えるより先に、ヒューイが名乗った。
「ヒューイ・フリーマンです」
「初めまして。ローリー・ブルックスです」
二人は短く挨拶を交わした。
ヒューイはローリーを見た。
「弁護士ですか?」
「はい」
「そうですか」
ヒューイは小さく頷いた。
それ以上、何も言わなかった。
ヒューイが時計を見る。
「……帰るよ」
ヒューイはローリーに名刺を渡した。
「これを」
ローリーが受け取る。
「ありがとうございます」
「何かあれば連絡を」
「はい」
ヒューイはマイクを見る。
「じゃあな」
ヒューイは事務所を出ていった。
ドアが閉まる。
ローリーは手元の名刺を見る。
そこには、ヒューイ・フリーマンの名前と連絡先が記されていた。
「……ニューヨークで公認会計士を?」
マイクは答えない。
「どういう関係?」
「すぐに分かるよ」
ローリーはマイクを見る。
「何それ」
マイクは資料をまとめ始めた。
ローリーはもう一度名刺を見た。
「なぜ、あの人と裁判官の話をしてたの?」
マイクの手が止まる。
「仕事の話だ」
「それだけ?」
マイクは答えない。
ローリーはマイクを見つめた。
「まだ私に言ってないことがあるみたいね……」
マイクは視線を上げたが、何も言わなかった。
ローリーは窓の外を見る。
道路脇に、さっき見た黒いセダンが一台止まっている。
「……あの車」
マイクも窓の外を見る。
「気にするな」
「さっきからずっといるわ」
「分かってる」
「誰なの?」
「知らない」
ローリーはマイクを見る。
「本当に?」
「ああ」
その頃。
建物の外。
ヒューイは一台の黒いセダンへ向かって歩いていた。
後部座席のドアが開く。
ヒューイが乗り込む。
車が静かに発進する。
少し離れた場所に、もう一台黒いセダンが止まっていた。
その車内で、コールの秘書がヒューイの乗った車を確認していた。
秘書は携帯電話を取り出す。
「確認しました」
電話の向こうから、コールの声が聞こえる。
『本当にやつか?』
「はい」
『マイク・ハンターに会いに来たんだな?』
「そのようです」
『分かった』
コールは短く答えた。
通話が切れる。
秘書は窓の外を見た。
ヒューイを乗せた黒いセダンは、すでに交差点の向こうへ消えていた。
