コンテンプト・オブ・コート 3-40
アンカレッジ市内。
地下道。
男は床に倒れていた。
マイクが近づく。
男は起き上がろうとした。
だが、体に力が入らない。
マイクは男の胸ぐらをつかんだ。
「立て」
男は動かなかった。
マイクは手を離す。
男の顔を見下ろす。
「知ってることを全部話せ」
男は黙っていた。
エイダンが横に立つ。
「さっきまで元気だったのにな」
男は答えない。
マイクが男の顔を踏みつけた。
「もう一度聞く」
男は目だけを動かした。
「知ってることを全部話せ」
「……」
「誰に雇われた?」
男は答えなかった。
マイクが足に力を加える。
「コールか?」
男の表情がわずかに動いた。
マイクはそれを見逃さなかった。
「やっぱりな」
ローリーが少し離れた場所から男を見ている。
「マイク、もうやめて」
「まだ何も聞いてない」
マイクはローリーを見た。
それから男へ視線を戻す。
「名前は?」
男は唇を動かした。
「……知らない」
「誰の命令だ?」
「……」
「市長を殺したのは誰だ?」
男の呼吸が少し乱れた。
マイクは足をどけた。
男が小さく咳き込む。
「話せ」
男は天井を見た。
「俺は……」
声がかすれている。
「何だ?」
「命令された」
「誰に?」
男は目を閉じた。
しばらく答えない。
マイクがしゃがむ。
「誰に命令された?」
男はゆっくり目を開けた。
「……コールCEOに」
エイダンの表情が変わった。
ローリーも息を止める。
マイクは男を見つめた。
「何を命令された?」
男は苦しそうに呼吸した。
「市長を……やれと」
「殺せということか?」
男は小さく頷いた。
「理由は?」
「知らない」
「なぜコールが市長を殺す?」
「知らない」
「ノース・ホライズン・シティは?」
男の目が動く。
「……」
「再開発計画に関係しているのか?」
男は答えない。
マイクが男の胸ぐらをつかむ。
「答えろ」
「俺は……やれと言われただけだ」
「他に誰が関与している?」
「知らない」
「市長を殺した後は?」
男は黙った。
マイクが顔を近づける。
「カーターを犯人にしたのもコールか?」
男は目を閉じた。
「……知らない」
「お前は何を知ってる?」
男は何度か呼吸した。
「命令されたことだけだ」
マイクは男の顔を見た。
そのときだった。
男が右手に持っていたものを口に入れた。
マイクが男の顎をつかむ。
「お前!吐け!」
男の口を開かせようとする。
だが、男は口を閉じ、何かをかみ砕いた。
「こいつ!」
エイダンが近づく。
「何だ?」
「口に入れた!」
マイクが男の口を開こうとする。
男は激しく抵抗する。
「吐き出せ!」
男の喉が動く。
次の瞬間、男の体が大きく震えた。
「……っ!」
マイクが手を離す。
男は胸を押さえた。
呼吸が乱れる。
「おい!」
ローリーが駆け寄る。
男の顔から血の気が引いていく。
「マイク……」
「離れろ」
男が床を転がった。
「ぐ……っ」
両手で胸を押さえる。
体が何度も痙攣する。
「救急車を呼べ!」
ローリーが携帯電話を取り出す。
マイクは男を押さえようとする。
「おい!しっかりしろ!死ぬな!」
男は答えない。
口から声にならない音が漏れる。
男の呼吸が荒くなり、体が何度も震える。
エイダンが男を見る。
「やられた」
マイクは答えない。
男が目を見開き、マイクを見る。
何か言おうとする。
だが、声にならない。
「何だ?」
マイクが顔を近づける。
男の唇が動く。
「……ああ……」
それだけだった。
男の体から力が抜けた。
ローリーが男の首元に手を当てる。
しばらくして、顔を上げた。
「……駄目」
マイクは何も言わなかった。
エイダンが男の口元を見る。
「こいつ。自殺しやがった」
ローリーが頷く。
地下道に沈黙が落ちた。
マイクは男の顔を見る。
自分が聞き出した名前。
コール。
それだけを残して、男は死んだ。
マイクはゆっくり立ち上がった。
「こいつが実行犯なのに……」
誰も答えなかった。
