コンテンプト・オブ・コート 3-38
アンカレッジ市内。
古い建物が並ぶ地区。
マイクとエイダンは、帽子の男を追っていた。
男は裏通りを歩いている。
周囲を気にする様子はない。
マイクとエイダンは距離を保っていた。
やがて男が角を曲がる。
二人も続いた。
だが、角を曲がった先に男の姿はなかった。
エイダンが周囲を見る。
「消えた」
マイクは建物の間を見る。
「上だ」
二人は建物へ入り、階段を上がる。
屋上へ出る。
そこに男がいた。
マイクが声をかける。
「止まれ」
男は振り返らず、逃げようとした。
エイダンが回り込み、男の腕をつかむ。
「離せ!」
男が抵抗する。
エイダンは離さない。
マイクが近づく。
「さっき、コールの秘書と会っていたな」
「知らない」
「封筒を受け取っていた」
エイダンが男の腕をひねる。
「全部話せ」
「うるせえ!」
「死んでも話さないと?」
男は首を振った。
「知らない、本当に知らないんだ!」
エイダンが男の襟をつかんだ。
そのまま屋上の端へ引きずっていく。
「やめろ!」
男の足が止まる。
エイダンが男を地面に叩きつけ、両足をつかみ、屋上の外へ出す。
「うわあーー!」
男が叫ぶ。
エイダンは下を見る。
「お前、けっこう重いな」
「助けてくれ!」
「話せ」
「話します!」
「全部だ」
「落とさないで!全部話します!」
エイダンは数歩後ろに下がり、手を放す。
男は屋上に転がり、息を切らしている。
「コールの秘書から何を受け取った?」
「金です」
「何の金だ?」
「人を運ぶための金です」
マイクが聞く。
「誰を?」
男は答えに迷った。
「国外へ出せと」
「どこへ?」
「カナダ」
マイクは男を見る。
「誰を出す?」
「知らない男です」
エイダンが男を見る。
「また嘘をつくか?」
「本当です!」
男は震えていた。
「俺は仲介業者です。詳しいことは本当に知らない」
マイクが口を開く。
「コールの秘書と会うのは、今回が初めてか?」
「……いいえ」
「何度目だ?」
「三回目です」
「前の二回は?」
「同じです。金を貰い、人を紹介する」
「その場所は?」
男は黙った。
マイクが近づく。
「言え」
男は目を伏せた。
「港です」
「どこの港だ?」
男は答えなかった。
エイダンが一歩近づく。
「言え」
「……市内の港湾地区です」
マイクは黙った。
ノース・ホライズン・シティ。
港湾地区。
市長殺害。
頭の中で情報がつながった。
「分かった」
マイクは男から離れた。
「もういい」
エイダンが男を見る。
「どうする?突き落とすか?」
「警察に情報提供しよう」
男が顔を上げる。
「待ってくれ!」
マイクは屋上の出口へ向かった。
エイダンも続く。
二人は建物を下り、入口へ戻った。
ローリーが駆け寄ってくる。
「何か分かった?」
「車で待ってろと言ったのに……」
そのときだった。
建物の向かい側に、一人の男が立っていた。
かなり背が高く、帽子をかぶっている。
男がマイクを見る。
目が合った。
数秒。
男はゆっくりと方向を変え、歩き出す。
マイクは男の背中を見る。
「……あいつ、何か知ってるぞ」
エイダンが振り返る。
「どいつだ?」
マイクが指を向ける。
「あの長身の男」
エイダンが男を見る。
「追うか?」
「ああ」
マイクが歩き出す。
エイダンも続く。
ローリーが声を上げた。
「ちょっと、私も――」
マイクが振り返る。
「車に戻れ」
「でも!」
マイクとエイダンは男の後を追った。
男は歩き続けていた。
だが、次の角を曲がった瞬間、突然走り出した。
「逃げた!」
二人は男を追い、裏通りへ飛び込んだ。
