コンテンプト・オブ・コート 3-36
アンカレッジ市内。
テラ・インフラテックが所有する建物の一室。
窓の外には、アンカレッジの街が広がっていた。
デスクの前に、ケンドリック・コールが立っている。
その向かいにはジョニーがいた。
机の上には、市長選に関する資料が並んでいる。
候補者名簿。
選挙区ごとの支持率。
企業からの支援状況。
コールは資料を一枚めくった。
「順調です」
ジョニーが言った。
「支持率は?」
「かなり高い」
「対立候補は?」
「決め手がありません」
コールは資料を閉じた。
「当然だ」
ジョニーは笑った。
「このままいけば、勝てます」
「勝てる?」
コールはジョニーを見る。
「勝つのは最初から決まっている」
「はい」
「問題は、その後だ」
ジョニーは黙った。
コールは窓の外を見る。
「市長になってからが勝負だ」
「都市開発ですか?」
コールは机の上に置かれた図面を広げた。
ノース・ホライズン・シティ。
その開発区域には、道路、住宅、商業施設、ホテル、オフィスビル、港湾地区が描かれている。
「市長になれば、行政を動かせる」
「開発計画も?」
「全部だ」
コールは図面の中心を指で押さえた。
「土地も動く」
「企業も動く」
「金も動く」
ジョニーが図面を見る。
「それだけの規模なら、かなり儲かりますね」
コールはジョニーを見る。
「金だけじゃない。アンカレッジそのものを変える」
ジョニーは黙った。
コールは続ける。
「市長が変われば、役所も変わる」
「警察も?」
「ああ」
「裁判所もですか?」
コールは答えず、図面に目を戻した。
「街を動かすには、街の中にいる人間を動かせばいい」
ジョニーは小さくうなずいた。
「選対本部長として、CEOのために死ぬ気で働きます」
コールは淡々と言った。
「お前にはまだ仕事がある」
「はい」
「市長になった後の準備を進めろ」
「分かりました」
ジョニーは資料を手に取った。
「具体的には?」
「まず、反対する人間を把握しろ」
「地権者ですか?」
「それだけじゃない」
コールは窓の外を見る。
「政治家。役人。企業。住民」
「全員ですか?」
「全員だ」
ジョニーは黙った。
コールは椅子に座った。
「俺の勝ちは最初から決まってる」
「はい」
「大切なのは、当選してからだ」
ジョニーは資料を閉じ、出口へ向かう。
その背中をコールが見ていた。
「ジョニー」
「はい」
「選挙が終わるまで、目立つ行動は避けろ」
「分かりました」
ジョニーが部屋を出る。
コールはノース・ホライズン・シティの図面を見つめた。
市長選。
都市開発。
行政。
そして、その先にあるもの。
コールは静かに呟いた。
「もうすぐだ」
窓の外では、アンカレッジの街が夕暮れに沈み始めていた。
