コンテンプト・オブ・コート 3-20
アンカレッジ刑務所。
食堂から少し離れた廊下。
市長の財務担当者は、一人で歩いていた。
周囲には受刑者がいる。
担当者は前を見ていた。
そのとき、前方から男が近づいてきた。
「おい」
担当者が足を止める。
「何だ?」
男は答えない。
その後ろから、別の男が来た。
担当者は周囲を見る。
「何の用だ?」
男の一人が担当者の肩をつかんだ。
「ちょっと話そうぜ」
「離せ」
担当者が腕を振りほどこうとする。
だが、別の男が背後から押さえた。
「やめろ!」
担当者が声を上げる。
男の拳が腹に入った。
「ぐっ……」
担当者が膝をつく。
もう一人の男が蹴りを入れる。
担当者は床に倒れた。
「何をする!」
男たちは答えない。
一人が担当者の胸ぐらをつかむ。
「余計なことをしゃべるな」
「何のことだ……」
もう一発、顔を殴る。
担当者の口元から血が流れた。
そのとき、廊下の向こうから声がした。
「おい!」
男たちが振り返る。
マイクが歩いてくる。
その後ろには、エイダンの部下が二人いた。
マイクは倒れている担当者を見る。
「何してる?」
男の一人が答えた。
「こいつが生意気なんだよ」
「それで殴ったのか?」
「関係ないだろ」
マイクは男を見る。
「ある」
男が一歩前へ出る。
「お前には関係ない」
マイクは動かなかった。
「そこをどけ」
「嫌だね」
男が拳を上げる。
その瞬間、エイダンの部下が男の腕をつかんだ。
「引っ込んでろ」
男の腕をひねる。
「痛っ!」
別の男が飛びかかる。
もう一人の部下が受け止めた。
男の体を壁へ押しつける。
「偉そうにしやがって」
周囲にいた受刑者たちが離れていく。
担当者は床に手をついていた。
マイクが近づく。
「立てるか?」
「……ああ」
担当者は立ち上がろうとした。
だが、足元がふらつく。
マイクが腕を支える。
「無理するな」
「大丈夫だ」
「顔を見せろ」
担当者が顔を上げる。
頬に擦り傷がある。
口元にも血が付いていた。
マイクは周囲を見る。
「こっちだ」
担当者の腕を支えたまま、廊下の奥へ向かう。
マイクは一度振り返った。
男たちは壁際に押さえつけられている。
「行くぞ」
担当者とともに、その場を離れる。
二人の姿が廊下の角へ消える。
エイダンの部下たちは、その場に残った。
一人が男の腕を離す。
「もういい」
男が腕を押さえる。
「勘弁してくれよ」
部下は答えない。
もう一人が男たちを見る。
「うまくいったな」
短く言った。
男たちは互いに顔を見る。
一人が小さく笑った。
「そうか?」
それ以上、誰も何も言わなかった。
エイダンの部下たちは廊下の先を見る。
マイクと財務担当者の姿は、もう見えない。
一人が廊下の時計を確認する。
「戻るぞ」
「ああ」
二人は歩き出した。
担当者を襲った二人もその場を離れた。
