コンテンプト・オブ・コート 1-41
マイクは道路へ出た。
足を引きずりながら、パトロール中の警察車両へ向かって走る。
車両が減速した。
マイクは両手を上げた。
「助けて!」
警察車両が止まる。
運転席から警察官が降りてきた。
「どうした?」
マイクは息を切らしていた。
「お母さんが……」
警察官がしゃがむ。
「落ち着いて話せ」
「母親が殺された」
マイクの声が震える。
「助けて」
警察官はマイクの服や顔を見る。
泥と血が付いている。
「どこで?」
マイクは建物の方向を指差した。
「あの建物……」
「誰にやられた?」
「男……」
マイクは後ろを振り返った。
そのとき、建物の方からコールが歩いてきた。
マイクの顔が強張る。
「この人!」
警察官がコールを見る。
コールは立ち止まった。
警察官とコールの視線が合う。
短い沈黙。
警察官は何も聞かなかった。
コールも説明しない。
マイクが警察官の腕をつかむ。
「この人がお母さんを撃った!」
コールはマイクを見た。
警察官は一度だけコールを見る。
「どういうことだ?」
コールは低い声で答えた。
「その子は混乱している」
警察官は小さく頷いた。
マイクは首を振る。
「違う! 嘘だ!」
コールは反論しなかった。
ただ、マイクを見ていた。
そして警察官に言った。
「その子を逃がすな」
警察官がコールを見る。
コールは続けた。
「胃の中に大切なものがある」
警察官の表情が変わった。
一瞬だけマイクを見る。
「……分かった」
マイクには意味が分からない。
「何のこと?」
警察官は答えなかった。
マイクの腕をつかむ。
「車に乗れ」
「嫌だ!」
マイクは抵抗した。
「お母さんのところへ戻らないと!」
「戻るな」
警察官の声は低かった。
マイクは警察官の顔を見る。
助けを求めた相手なのに、何かがおかしい。
警察官はマイクを車へ連れていく。
後部座席のドアを開けた。
マイクが乗せられる。
そこで初めて、座席の奥に人がいることに気づいた。
女性だった。
女性は何も言わず、マイクを見ている。
マイクも女性を見る。
知らない顔だった。
警察官がマイクの肩を押した。
「座れ」
マイクは女性の隣に座った。
ドアが閉まる。
マイクは窓越しにコールを見た。
コールは道路に立ったままだった。
その先には、高級セダンが止まっている。
マイクはもう一度、コールを見る。
警察官が運転席へ戻る。
エンジンがかかった。
車が動き出す。
マイクは女性の隣で身を縮めた。
女性は黙ったまま、マイクを見ている。
マイクは小さな声で言った。
「お母さん……」
女性は何も答えなかった。
警察車両は夜の道路を走り出した。
