コンテンプト・オブ・コート 1-28
「少し話さない?」
エルマ・アトキンソンはローリーの前に立った。
ローリーはエルマを見た。
「何?」
「久しぶりね」
「そうね」
「ニューヨークにいたんでしょう?」
「そうよ」
エルマはローリーの顔を見た。
「クビになったそうね」
ローリーの表情が変わった。
「クビじゃなく業務停止よ」
「六か月?」
「そう」
「ずいぶん思い切ったことをしたわね」
「何が言いたいの?」
「別に」
エルマは淡々と答えた。
「ただ、弁護士としては終わったと思っただけ」
ローリーが一歩近づく。
「私が何をしたか、あなたには関係ないでしょう」
「関係ない?」
エルマの声が少し低くなった。
「あなたは昔から、自分が正しいと思ったら周りが見えなくなる」
「あなたに言われたくない」
「そういうところよ」
二人の間に沈黙が落ちた。
廊下を歩いていた人間が、二人を避けるように通り過ぎていく。
ローリーはエルマから目を離さない。
エルマも動かなかった。
「ニューヨークで裁判官に手を出したそうね」
「押しただけよ」
「裁判官を?」
「判決に納得できなかった」
「それで手を出した?」
「あなたには分からない」
「何が?」
「法廷で何が起きていたか」
エルマの目が細くなる。
「私は検察官よ。法廷で何が起きるかくらい知っている」
「だったら分かるでしょう」
「何を?」
「法律だけで人を裁けないことくらい」
エルマは黙った。
ローリーも黙る。
二人の間に、不穏な空気が流れた。
そのとき、後ろから声がした。
「二人とも」
ローリーが振り向く。
マリベル・ヴァレンタイン判事が立っていた。
法廷から出てきたところだった。
エルマも振り返る。
「判事」
マリベルは二人を見た。
「何かあったの?」
「何もありません」
エルマが答える。
ローリーは黙っていた。
マリベルはローリーを見る。
「ローリー」
「はい」
「少し話しましょう」
ローリーは頷いた。
マリベルはエルマにも視線を向けた。
「あなたも一緒に来なさい」
エルマは一瞬だけ黙った。
「分かりました」
三人は廊下を歩き始めた。
ローリーはマリベルの横を歩く。
エルマはその後ろについた。
誰も口を開かなかった。
