コンテンプト・オブ・コート 1-18
現在。
マイクは階段を下りていた。
二段、三段と下りたところで足を止める。
ジムが後ろから追いついた。
「どうした?」
マイクは振り返った。
「ジム」
「何だ?」
「四階を使う」
ジムは少し黙った。
「エイダンは一部なら貸すと言っていた」
「聞いた」
「それでいいのか?」
マイクは階段を上がり始めた。
「よくない」
「マイク」
「俺は事務所を作りに来た」
「それは分かってる」
「なら、話は早い」
マイクは四階まで戻った。
ドアの前にいた男たちが顔を上げる。
マイクはそのまま部屋に入った。
エイダンは机の前に立っていた。
「もう帰ったと思ったぞ」
「考えが変わった」
「何を考えた?」
マイクは部屋を見回した。
机。
窓。
壁。
そして、二十年前と変わらない場所に残された傷。
「この部屋は今日から俺が使う」
エイダンの眉が動いた。
「何?」
「ここを俺の事務所にする」
「一部を使っていいと言ったはずだ」
「聞いた」
「なら、なぜ全部使う?」
「一部じゃ足りない」
エイダンが鼻で笑った。
「お前、自分が何を言ってるのか分かってるのか?」
「分かってる」
「ここは俺の仕事場だ」
「今日まではな」
部屋の空気が止まった。
エイダンの部下たちが互いに顔を見た。
ジムは何も言わず、ドアの近くに立っている。
エイダンがゆっくりとマイクに近づいた。
「俺はお前に四階の一部を貸すと言った」
「ああ」
「それで話は終わってる」
「俺は終わらせるつもりはない」
「何がしたい?」
「この階を使う」
「俺を追い出すのか?」
「そうなるな」
エイダンは黙った。
マイクも動かなかった。
数秒後、エイダンが笑った。
低い笑いだった。
「面白い奴だな」
「よく言われる」
「ここが誰の場所か分かってるか?」
「古い建物の四階だ」
「そういう意味じゃない」
「なら、言葉で説明してくれ」
エイダンの笑いが消えた。
「俺の仕事を邪魔するなら、話は変わる」
「邪魔する気はない」
「なら一部でいいだろ」
「俺は全部使う」
「なぜだ?」
マイクは壁を見た。
そこには、古い文字が残っている。
リサ・グリーン。
マイク。
エイダンはその視線を追った。
「その壁が気になるのか?」
「関係ない」
「なら、ここにこだわる理由は何だ?」
「気に入った」
「それだけか?」
「それだけだ」
エイダンはしばらくマイクを見た。
そして、机の上に置いていた煙草を取った。
火をつける。
一度吸い、煙を吐いた。
「弁護士ってのは、もっと話し合いができる人種だと思ってた」
「話し合った結果だ」
「俺は認めてない」
「俺は認めてもらうつもりもない」
エイダンの手が止まった。
「そうか」
マイクは一歩も動かなかった。
エイダンは煙草を灰皿に押しつけた。
それから、着ていたジャケットの前を開いた。
ゆっくりと脱ぐ。
床に落とした。
部屋にいた男たちが一斉に動きを止めた。
ジムがマイクを見る。
マイクはエイダンから目を離さない。
エイダンが袖をまくった。
「お前、後悔するぞ」
マイクは答えた。
「やってみろ」
エイダンが一歩前に出た。
マイクも一歩前に出た。
