アルファガル症候群:マダニに咬まれて肉アレルギーに、知っておくべきこと
アルファガル症候群は約15年前、特定のダニとの関連が初めて確認された。
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米国で近年、「アルファガル症候群(Alpha-gal Syndrome)」と呼ばれる特殊な食物アレルギーへの関心が高まっている。この疾患はマダニにかまれることで発症し、その後に牛肉や豚肉、羊肉などの赤身肉を食べると重いアレルギー反応を引き起こす可能性がある。場合によっては命に関わることもあり、米国の保健当局が注意を呼びかけている。
アルファガル症候群は約15年前、特定のダニとの関連が初めて確認された。一般的なダニ媒介感染症であるライム病やロッキー山紅斑熱が細菌やウイルスによって引き起こされるのに対し、この疾患は免疫系の異常反応によって発症する点が特徴である。原因となるのは「アルファガル」と呼ばれる糖分子で、牛や豚、羊など多くの哺乳類の体内に存在する一方、人間や類人猿には存在しない。
問題となるのは、マダニの唾液にもこのアルファガルが含まれていることである。マダニが人を吸血する際に体内へ入り込むと、免疫システムが異物として認識し、抗体を作り出すことがある。その結果、後日赤身肉を食べた際に体内のアルファガルに反応し、アレルギー症状を引き起こすようになる。
症状はじんましんや皮膚のかゆみ、腹痛、吐き気、下痢など多岐にわたる。さらに重症化すると呼吸困難や血圧低下を伴うアナフィラキシーショックを引き起こすこともある。一般的な食物アレルギーと異なり、症状が食後すぐではなく3~6時間後に現れることが多いため、患者自身が原因に気付きにくい点も診断を難しくしている。
近年は患者数の増加が報告されている。米疾病対策センター(CDC)によると、米国内では最大45万人がアルファガル症候群を抱えている可能性があると推計されている。症例増加の背景には医師や患者の認知度向上に加え、原因となる「ローンスター・ティック」と呼ばれるマダニの生息域拡大があると考えられている。従来は米国南東部を中心に見られたが、近年は五大湖周辺や北東部にも分布が広がっている。
診断には血液検査が用いられ、アルファガルに対する抗体の有無を調べる。ただし、抗体が検出されても症状が出ない人もいるため、診断には患者の症状や食事歴、マダニへの曝露歴などを総合的に判断する必要がある。
治療法については根本的な方法がなく、患者は牛肉や豚肉、羊肉など哺乳類由来の食品を避けながら生活してきた。また、緊急時に備えてエピネフリン自己注射器を携帯することが推奨されている。近年になって米食品医薬品局(FDA)がアレルギー治療薬「ゾレア(Xolair)」の使用を承認し、新たな治療選択肢として期待が高まっている。さらに研究者らはアルファガルを含まない特殊な豚肉の開発や新薬の研究も進めている。
専門家は、最も有効な予防策はマダニにかまれないことだと指摘する。森林や草地に入る際には長袖や長ズボンを着用し、防虫剤を使用することが重要である。また屋外活動後には体や衣服にダニが付着していないか確認することも欠かせない。
ライム病ほど知られていないアルファガル症候群だが、患者にとっては日常の食生活を大きく変える深刻な疾患である。マダニの生息域が拡大する中、医療関係者や一般市民の間で正しい知識を広めることが今後ますます重要になりそうだ。
