米国でマダニ被害急増、過去10年で最高水準に
ダニ咬傷によるER受診の増加は気候変動と公衆衛生が密接に結びついている現実を浮き彫りにしている。
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米国で「マダニ」にかまれたことによる救急外来(ER)受診が急増し、過去10年で最高水準に達していることが明らかになった。現地メディアが15日に報じた。専門家は気候変動などの影響でマダニの活動期間や生息域が拡大しており、今シーズンの被害はさらに深刻化する可能性があると警告している。
疾病対策センター(CDC)のデータによると、2025年のマダニ咬傷に関連するER受診数が顕著に増加し、過去最多水準に達したという。特に5月から7月にかけての数値が高く、地域別では北東部が最も多い。25年7月時点で2017年以来の高水準に達し、最も深刻なシーズンの一つとなった。
年齢別では、10歳未満の子どもと70歳以上の高齢者で受診率が高く、重症化リスクが相対的に高い層とみられている。また、マダニは単なる皮膚トラブルにとどまらず、ライム病やロッキー山紅斑熱(RMSF)など複数の感染症を媒介するため、公衆衛生上の懸念が強まっている。
今回の増加の背景にはマダニ個体数の増加と活動期間の長期化がある。専門家は温暖化に伴う「穏やかな冬」と「湿った春」がマダニの繁殖を促進していると指摘する。これにより従来は季節限定とされていたリスクが通年化しつつあるという。
さらに、マダニの分布域も拡大し、これまであまり見られなかった地域でも感染リスクが高まっている。
実際、マダニは森林だけでなく、都市近郊の公園や庭、ペットを介した家庭内などでも確認され、日常生活の中で接触する機会が増えている。年間で数千万件規模の咬傷が発生しているとの指摘もあり、その影響は広範囲に及ぶ。
症状としては、発熱や倦怠感、頭痛、筋肉痛などインフルエンザに似たものが多いが、ライム病に特徴的な「標的状紅斑(ブルズアイ型発疹)」が現れる場合もある。重症化すると神経系や臓器に影響を及ぼすこともあり、早期発見と対応が重要だ。
こうした状況を受け、専門家は予防策の徹底を呼びかけている。具体的には、草むらや森林では長袖・長ズボンを着用し、虫よけ剤を使用すること、帰宅後は速やかにシャワーを浴びて全身をチェックすることなどが推奨されている。衣類への殺虫処理や、ペットの管理も有効だ。
また、マダニは体の温かく湿った部位に付着しやすいため、耳の後ろ、脇の下、膝の裏、頭皮などを重点的に確認することが重要である。発見した場合はピンセットなどで皮膚に近い部分をつかみ、ゆっくり引き抜いた後、患部を清潔に保つことが推奨される。
専門家の間では、今回の増加は一時的な現象ではなく、長期的な傾向の一部である可能性が指摘されている。気候変動による生態系の変化により、マダニと人間の接触機会は今後も増加する恐れがある。実際、冬季でも活動するダニが確認され、「通年リスク時代」に入りつつあるとの見方もある。
一方で、専門家は過度な不安を抱く必要はないとも強調する。適切な予防策を講じれば、感染リスクは大きく低減できるため、屋外活動そのものを避ける必要はないとする立場だ。重要なのはリスクを正しく理解し、日常的な対策を習慣化することである。
ダニ咬傷によるER受診の増加は気候変動と公衆衛生が密接に結びついている現実を浮き彫りにしている。今シーズンがさらに悪化するかどうかは今後の気象条件や個体数の推移に左右されるが、少なくとも現時点では警戒が必要な状況である。専門家は「予防こそが最も有効な対策」として、引き続き注意を呼びかけている。
