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若者に広がる「歯ぎしり」、ストレスや生活習慣が背景、気づかないうちに体を蝕む可能性も、

「若者に広がる歯ぎしり」というテーマを検証すると、まず注意すべきなのは、若者の歯ぎしりが2026年に急増していると断定できる十分な全国的データが確認されているわけではないことである。
歯ぎしりのイメージ(Getty Images)
現状(2026年10月時点)

「歯ぎしり」という言葉から、睡眠中に歯をギリギリと擦り合わせる行為を想像する人は多い。しかし、医学・歯学の分野では、歯ぎしりや食いしばりを含む「ブラキシズム」を、単純に夜間の歯ぎしりだけとして扱うのは適切ではない。現在は、睡眠中に生じるものと、起きている間に生じるものを分けて考えるのが基本であり、2025年に公表された国際的な専門家合意でも、ブラキシズムは睡眠中または覚醒中に生じる咀嚼筋の活動として整理されている。

さらに重要なのは、ブラキシズムそのものを直ちに「病気」とみなさない考え方が定着している点である。健康な人の場合、ブラキシズムは、それ自体が疾病というより、歯の摩耗、歯の破折、詰め物などの修復物への負荷、顎や口の周囲の痛みなど、特定の問題につながる可能性がある行動・生理的活動として評価される。

この点は、「歯ぎしりをしている=必ず治療が必要」という単純な図式を避けるうえでも重要である。問題となるのは、歯ぎしりや食いしばりの有無だけではなく、その頻度や強さ、本人の症状、歯や顎への影響、睡眠状態、生活習慣などを合わせて判断することである。

2025年に発表された覚醒時ブラキシズムの有病率に関する系統的レビューとメタ分析では、一般集団における自己申告による「可能性のある覚醒時ブラキシズム」は平均25.9%、臨床的評価による「おそらく該当する覚醒時ブラキシズム」は16.0%と推定された。ただし、研究間で診断方法に大きな違いがあり、数字をそのまま「4人に1人が病気である」と解釈することはできない。

過去の複数の系統的レビューをまとめた研究でも、成人の覚醒時ブラキシズムは22〜30%、睡眠時ブラキシズムは1〜15%という幅のある数字が示されている。この大きな幅自体が、ブラキシズムの調査では、本人への質問、歯科診察、筋電図など、どの方法を使うかによって結果が変わることを示している。

したがって、「若者の間で歯ぎしりが急増している」と断定するには慎重さが必要である。若年層を対象にした2026年の研究でも、覚醒時ブラキシズムの診断方法には統一された基準がなく、診断そのものが研究上の課題として残っている。

一方で、若者が歯ぎしりや食いしばりを意識する必要性が低いという意味ではない。仕事や学業、対人関係、情報機器の使用、睡眠不足など、現代生活に存在する複数の要素が口腔周囲の筋活動や睡眠状態と関係する可能性があり、症状を自覚しないまま歯科的な負担が蓄積するケースには注意が必要である。

特に覚醒時ブラキシズムでは、「歯ぎしり」という分かりやすい動作だけでなく、上下の歯を接触させたまま力を入れる、顎を固定する、歯を軽く噛み続けるといった状態も含まれる。このため、本人は「歯ぎしりなんてしていない」と考えていても、日中の無意識の歯の接触が長時間続いている可能性がある。

歯ぎしりの主な背景と原因

ブラキシズムの原因を1つに決めることはできない。現在の研究では、心理的要因だけでなく、睡眠、神経系の活動、薬剤、嗜好品、生活習慣、口腔内の状態など、複数の要素が関係する複雑な現象として捉えられている。

かつては「歯ぎしりはストレスが原因」という説明が広く使われてきた。実際、ストレス症状と睡眠時ブラキシズムの関連を調べた系統的レビューとメタ分析も存在し、心理的ストレスとの関連を示す研究はあるが、ストレスだけでブラキシズムのすべてを説明できるわけではない。

この違いは非常に重要である。例えば、仕事や勉強で強い緊張状態にある人が食いしばりを起こすことは考えられるが、だからといって「ストレスが減れば歯ぎしりは必ず消える」とはいえず、睡眠状態や嗜好品、薬剤など別の要因も同時に確認する必要がある。

また、睡眠時ブラキシズムは、本人の意思で「力を入れて歯を食いしばっている」という単純な現象ではない。睡眠中の脳活動や自律神経活動などと関連して発生するため、本人が意識的に止めようとしても、睡眠中の活動を完全にコントロールすることは難しい。

一方、覚醒時ブラキシズムでは、意識的な食いしばりだけでなく、仕事やスマートフォン操作など特定の作業に集中している際に無意識に上下の歯が触れていることがある。2026年の覚醒時ブラキシズム管理に関する系統的レビューでは、こうした状態に対して行動変容や自己管理、バイオフィードバックなどを検討した研究が整理されているが、現時点では管理方法について十分に確立された公式指針があるわけではない。

日本でも、日本補綴歯科学会が睡眠時ブラキシズムに関する診療ガイドラインを作成しており、ブラキシズムを歯科臨床上の重要な問題として扱っている。ただし、治療を考える際には、ブラキシズムの存在だけではなく、患者本人にどのような症状や口腔内の問題が生じているかを確認することが重要である。

日本歯科医師会も、歯ぎしりに関係する要因としてストレスのほか、飲酒や喫煙などを挙げている。つまり、若者の歯ぎしりを考える場合も、「精神的ストレス」という1つの原因に話を集約するのではなく、睡眠、嗜好品、生活リズム、情報機器の利用などを含めた生活全体を見る必要がある。

精神的ストレスとSNS・情報過多

若者の生活環境を考えるうえで無視できないのが、スマートフォンや交流型情報サービスを通じた情報への接触量である。仕事や学校が終わっても通知やメッセージ、動画、ニュース、交流サイトなどが途切れず、休息時間にも脳が情報刺激を受け続ける生活は珍しくなくなっている。

ただし、「交流型情報サービスの利用が増えたから歯ぎしりが増えた」と直接結論づけるだけの証拠は現時点では不足している。ここでは、交流型情報サービスの利用と歯ぎしりの直接的な因果関係ではなく、精神的負担や睡眠への影響を介して、間接的にブラキシズムと関連する可能性を検討する必要がある。

若年層を対象に交流型情報サービス、精神的健康、睡眠の関係を調べた系統的レビューでは、過度な利用と精神的健康の悪化、睡眠の質の低下との関連が多数の研究で報告されている。ただし、これらの研究の多くは観察研究であり、利用そのものが直接の原因なのか、もともとの心理状態や生活環境が利用時間と睡眠の双方に影響しているのかについては慎重な解釈が必要である。

ここからブラキシズムにつながる可能性を考えると、重要なのは「情報量そのもの」よりも、情報にさらされ続けることによって休息と覚醒の切り替えが十分にできなくなる生活パターンである。緊張した状態で長時間画面を見続け、睡眠時間が不規則になり、翌日も疲労を抱えたまま仕事や学業を続けるという循環が形成されれば、口腔周囲の筋緊張にも注意が必要になる。

一方、2025年の成人を対象とした系統的レビューとメタ分析では、睡眠時ブラキシズムの人は主観的な睡眠の質が低い傾向を示したものの、睡眠効率や睡眠時間など客観的な睡眠指標については明確な差が確認されなかった。研究者は、睡眠の質とブラキシズムの関連について、客観的指標と本人の主観的評価を区別する必要があると指摘しており、単純に「睡眠が悪いから歯ぎしりする」と説明することもできない。

つまり、現時点で最も妥当なのは、若者の歯ぎしりを「ストレス社会だから増えた」と一括りにするのではなく、精神的ストレス、情報機器の利用、睡眠、生活習慣などが複雑に重なった結果として、歯ぎしりや食いしばりが目立つ人がいると考えることである。

そして本当に注意すべきなのは、本人がその負担に気づきにくいことである。日中の食いしばりは本人にとって通常の姿勢のように感じられることがあり、睡眠中の歯ぎしりに至っては、自分自身では直接確認できないため、朝の顎の疲れ、歯の違和感、知覚過敏、歯の摩耗などが最初の手がかりになることがある。

この「気づきにくさ」が、歯ぎしりを単なる癖として片付けることの問題点である。

スマホ姿勢と筋肉の緊張(デバイス首)

スマートフォンや携帯端末を長時間使用する生活では、画面を見るために頭部を前方へ傾ける姿勢が繰り返される。このような姿勢は一般に「デバイス首」などと呼ばれることがあるが、これは正式な病名ではなく、長時間の画面使用に伴う首や肩などの筋骨格系の負担を説明する際に使われる表現である。

頭部が前方へ移動すると、首の周囲の筋肉には姿勢を維持するための負担が生じる。さらに、スマートフォンを操作する際には腕や肩を一定の位置に保持し、視線を画面へ固定するため、首から肩、背中にかけて筋肉が緊張しやすい状態になる。

ただし、ここから「スマートフォンの姿勢が直接歯ぎしりを引き起こす」と結論づけることはできない。現時点では、姿勢の悪化、首や肩の筋緊張、顎の筋活動、ブラキシズムのすべてを一直線の因果関係として説明できるだけの十分な証拠はない。

一方、顎を動かす筋肉と首周辺の筋肉は、姿勢を維持する際にも協調して働く。顎を支える筋肉には、首や肩の筋肉と機能的な関係があるため、長時間同じ姿勢を取り続ける生活が、顎周囲の不快感や筋肉の疲労を感じる一因になる可能性は考えられる。

ここで重要なのは、スマートフォンそのものを悪者にすることではない。問題になりやすいのは、長時間にわたって同じ姿勢を維持し、画面に集中したまま休憩を取らず、さらに無意識の歯の接触や食いしばりが加わるという生活パターンである。

例えば、画面を見ながら仕事や勉強に集中しているとき、上下の歯を軽く接触させたまま顎を固定している人がいる。この状態は強い食いしばりとは異なるため本人が気づきにくいが、長時間続けば顎を閉じる筋肉が休めない状態になる。

したがって、スマートフォンを使用するときには、単に「姿勢を正す」だけでなく、肩の力を抜き、首を長時間固定せず、上下の歯が常時接触していないかを確認することが実用的である。歯と歯が接触していること自体は正常な動作でも起こるが、安静時には上下の歯が常に接触している必要はない。

睡眠の質の低下と嗜好品

歯ぎしりを考えるうえで、睡眠は特に重要な領域である。睡眠時ブラキシズムは、単純に「深い眠りの最中に強く歯をこすり続ける現象」と考えられてきたわけではなく、睡眠中に生じる一時的な覚醒反応や自律神経活動などとの関連が研究されている。

睡眠時ブラキシズムでは、睡眠中に顎を動かす筋肉の活動が一定のパターンで生じる。本人はその動きを覚えていないことが多いため、同居する家族などから「夜に歯ぎしりをしている」と指摘されて初めて気づく場合もある。

しかし、睡眠の質と歯ぎしりの関係も単純ではない。2025年に公表された系統的レビューとメタ分析では、睡眠時ブラキシズムのある人で主観的な睡眠の質が低い傾向が確認された一方、睡眠効率や睡眠時間などの客観的な指標については明確な差が確認されなかった。

つまり、「眠りが浅い人は必ず歯ぎしりをする」という説明は正確ではない。本人が「よく眠れている」と感じていてもブラキシズムが存在することはあり、逆に睡眠の質が低い人すべてに歯ぎしりがあるわけでもない。

生活習慣では、飲酒や喫煙などの嗜好品も検討対象になる。日本歯科医師会は、歯ぎしりに関連する要因としてストレスに加えて飲酒や喫煙などを挙げており、歯ぎしりを評価するときには生活習慣全体を見る必要があるとしている。

特に飲酒については、「寝酒をすれば眠れる」という考え方に注意が必要である。アルコールには入眠を促すように感じられる側面がある一方、睡眠後半の睡眠構造を乱すことがあり、睡眠の回復性を低下させる可能性がある。

カフェインについても、摂取量と摂取時間が問題になる。カフェインは眠気を抑える作用があるため、夕方以降に大量に摂取すれば、入眠や睡眠状態に影響する可能性がある。

ただし、カフェイン、アルコール、喫煙のそれぞれが「歯ぎしりの直接的な原因である」と一律に判断することも適切ではない。嗜好品とブラキシズムとの関連には個人差があり、睡眠状態、摂取量、摂取時間、その他の生活習慣などを合わせて考える必要がある。

若者の場合、夜遅くまでスマートフォンを使用し、動画や交流型情報サービスを見ながらカフェインを含む飲料を摂取し、睡眠時間が後ろ倒しになるという生活パターンも考えられる。この場合も、問題は個々の行動そのものではなく、複数の習慣が重なって睡眠と休息の時間が削られていく点にある。

さらに、睡眠中の歯ぎしりが大きな音を立てるとは限らない。歯を強くこする動きだけでなく、顎を強く噛みしめる活動もあるため、家族から指摘されないまま長期間続いている可能性がある。

気づかないうちに体を蝕むリスク

歯ぎしりや食いしばりで最初に問題になりやすいのは、歯そのものと顎周囲の筋肉である。歯に強い力が繰り返し加われば、歯の表面が摩耗したり、詰め物や被せ物などの修復物に負担がかかったりする可能性がある。

特に注意したいのが、「痛みがないから問題ない」という判断である。歯ぎしりは慢性的な負荷として作用する場合があり、本人が明確な痛みを感じる前に、歯の摩耗や細かな亀裂などが確認されることがある。

歯の表面が摩耗すると、冷たいものや熱いものに対して刺激を感じやすくなる場合がある。また、歯の一部が欠けたり、詰め物が外れたりするなど、日常生活で初めて異常に気づくこともある。

ただし、歯の摩耗が見つかったからといって、その原因が必ず歯ぎしりであるとは限らない。加齢、酸性飲食物、強いブラッシング、噛み合わせ、食習慣など複数の要因が関係するため、歯科医院では全体的な状態を確認する必要がある。

また、歯ぎしりによって顎を閉じる筋肉が繰り返し活動すれば、朝起きたときに顎周囲が疲れている、頬の筋肉が張っている、こめかみが重いといった感覚につながる場合がある。こうした症状も、単独では歯ぎしりを証明するものではないが、歯科医師が原因を調べる際の手がかりになる。

もう1つ重要なのが、頭痛との関係である。歯ぎしりや食いしばりに伴う顎周囲の筋肉活動が、側頭部などの筋肉の緊張と関連する場合がある。ただし、頭痛には非常に多くの原因があり、頭痛があるから歯ぎしりをしていると判断することはできない。

つまり、ブラキシズムによる影響を考える場合、「歯ぎしりがあるか、ないか」だけを確認するのでは不十分である。歯の摩耗、知覚過敏、歯の破折、顎の疲労、顎関節周囲の症状など、身体に現れた変化を総合して評価する必要がある。

歯の損傷・寿命の短縮

歯は人体の中でも非常に硬い組織だが、無制限の力に耐えられるわけではない。噛むという本来の機能によって日常的に力を受けているところへ、強い力が繰り返し加われば、歯の表面や内部に負担が蓄積する可能性がある。

歯ぎしりによる代表的な変化の1つが歯の摩耗である。歯と歯を強くこすり合わせる状態が長期間続けば、歯の形態が変化し、場合によっては歯の内部にある組織に近づくほど歯質が失われることもある。

さらに、強い噛みしめは歯を上下方向だけでなく、横方向にも動かす力を生む。こうした複合的な力が繰り返されることで、歯に細かな亀裂が生じ、最終的に歯の一部が欠けるケースもある。

もっとも、「歯ぎしりをすると歯の寿命が必ず短くなる」と断定するのは適切ではない。歯の寿命は、むし歯、歯周病、口腔衛生、食生活、喫煙、定期的な歯科受診など、多くの要因によって左右されるためである。

ブラキシズムについて重要なのは、将来の歯を守るためにも、早い段階で異常な摩耗や破折の兆候を発見することである。特に若い時期から強い歯ぎしりが長期間続けば、将来的な修復治療の必要性につながる可能性があるため、症状がなくても歯科検診で歯の摩耗状態を確認する意義がある。

歯の摩耗が目立つ人、朝に顎が疲れている人、家族から歯ぎしりを指摘された人、歯が欠けることが増えた人などは、単なる癖として放置せず、歯科医院で相談することが重要になる。

顎関節症(がくかんせつしょう)

歯ぎしりとの関連でよく名前が挙がるのが顎関節症である。顎関節症は、顎の関節や咀嚼筋などに痛みが生じたり、口を開けにくくなったり、顎を動かした際に音がしたりするなど、複数の症状を含む概念である。

ここでも、「歯ぎしりが顎関節症を起こす」と単純化することはできない。顎関節症には、顎関節そのものの構造的な問題、咀嚼筋の状態、外傷、生活習慣、心理社会的要因など、複数の要素が関係している。

一方で、歯ぎしりや食いしばりによって顎の筋肉や顎関節に繰り返し負荷が加わることは、症状を持つ人を評価する際に確認すべき要素の1つになる。特に「朝に顎が痛い」「口を開けると顎が疲れる」「口を大きく開けにくい」といった症状が続く場合には、歯科医療機関への相談が必要になる。

また、顎関節から音がすることだけで、直ちに病気と判断する必要はない。顎関節の音は比較的よくみられる症状であり、痛みや開口障害などを伴っているかどうかによって意味が異なるためである。

ここまで見てくると、歯ぎしりの問題は「歯だけ」の問題ではないことが分かる。スマートフォンを使う時間、仕事や勉強中の姿勢、精神的な緊張、睡眠、飲酒や喫煙などの習慣、そして日中の無意識の歯の接触が重なり、その結果として歯や顎に負担が現れる場合がある。

だからこそ、若者の歯ぎしりを考える際には、原因を1つに決めつけるのではなく、「いつ、どのような状況で歯を接触させているのか」「睡眠中にどのような状態になっているのか」「歯や顎に実際の変化が出ているのか」を確認することが重要になる。

慢性的な不調

歯ぎしりや食いしばりによる負担は、歯の摩耗や顎関節の症状だけに限定されない。顎を閉じる筋肉が長時間あるいは繰り返し活動すれば、顎周囲の疲労感、頬やこめかみの張り、起床時の顎の重さなどを自覚することがある。

特に日中の食いしばりは本人が気づきにくい。仕事や勉強、運転、ゲーム、スマートフォン操作などに集中していると、上下の歯を接触させた状態が続いていても、それを特別な行為として認識しないことがある。

正常な安静時には、上下の歯は常に接触しているわけではない。食事や会話などを除けば、顎の筋肉を過度に働かせる必要はないため、長時間の歯の接触が習慣化している場合には、筋肉を休ませるという視点が重要になる。

朝起きたときに顎が疲れている、こめかみが重い、頬の内側に歯型がついている、舌の側面に歯の跡がある、歯が以前よりしみるといった変化は、口腔内の状態を確認するきっかけになる。ただし、これらはブラキシズムだけで生じる症状ではないため、自己判断で原因を決めるべきではない。

頭痛についても同様である。顎を閉じる筋肉の緊張と頭部の筋肉の状態には関連があるが、頭痛には片頭痛、緊張型頭痛、睡眠不足、脱水などさまざまな原因があるため、「頭痛があるから歯ぎしりが原因」と考えることはできない。

重要なのは、歯ぎしりや食いしばりを単独の症状として見るのではなく、生活の中で繰り返される筋肉活動の1つとして捉えることである。症状が長期間続く場合には、歯科だけでなく必要に応じて他の診療科への相談も検討する必要がある。

歯周病の悪化

歯ぎしりと歯周病の関係についても、慎重な理解が必要である。歯周病の主な原因は歯周病原細菌を含む歯垢などによる炎症であり、歯ぎしりそのものが歯周病の直接的な原因になるわけではない。

一方、歯周組織に炎症が存在している状態で強い噛みしめなどの過剰な力が加われば、歯を支える組織に負担がかかる可能性がある。つまり、「歯ぎしりが歯周病を発生させる」というより、すでに存在する歯周組織の問題に過剰な力が重なることで、歯を取り巻く環境に悪影響を与える可能性を考える必要がある。

歯周病は初期段階では自覚症状が乏しいことが多い。歯肉からの出血、歯肉の腫れ、口臭などがあっても、「疲れているだけ」「歯磨きが少し足りないだけ」と考えてしまえば、受診が遅れる可能性がある。

そこへ歯ぎしりや食いしばりが重なれば、歯を支える組織に継続的な力が加わることになる。したがって、歯周病の予防とブラキシズムへの対応は別々の問題として扱うのではなく、歯を長期的に維持するという観点から一緒に考えることが重要である。

特に若い世代では、「歯周病は中高年の病気」という認識が受診の遅れにつながる可能性がある。しかし、歯肉炎を含む歯周組織の炎症は若年層にも生じるため、年齢だけを理由に歯周病の可能性を除外することはできない。

歯ぎしりが疑われる人で歯肉から出血する、歯が動くように感じる、歯肉が下がってきた、口臭が続くといった変化がある場合は、単純に歯ぎしりの問題と考えず、歯周組織そのものを確認する必要がある。

私たちが「知っておくべきこと」と対策

ここまでの研究を整理すると、最初に知っておくべきなのは、「歯ぎしりはストレスだけが原因」という理解を改めることである。ブラキシズムには心理的要因、睡眠、神経系の活動、薬剤、嗜好品、生活習慣など複数の要素が関係するため、1つの原因だけを取り除けば必ず解決するというものではない。

次に重要なのは、自分が歯ぎしりをしているかどうかを「音」だけで判断しないことである。睡眠中の歯ぎしりは本人が気づきにくく、日中の食いしばりや歯の接触も、本人にとっては当たり前の状態になっている場合がある。

自分で確認できる最初のポイントは、朝の状態である。起床時に顎が疲れている、頬やこめかみが張っている、歯がしみる、歯の先端が平らになってきた、詰め物が外れやすいなどの変化がないかを確認するとよい。

2つ目は、日中の顎の位置である。パソコンやスマートフォンを操作しているとき、仕事や勉強に集中しているとき、運転しているときなどに、上下の歯が接触していないかを意識する。

3つ目は、家族などからの指摘である。睡眠中の歯ぎしりは本人には分からないことが多いため、同居者から「夜に歯をこすっている」「歯を強く噛んでいる」と言われた場合には、その情報を歯科医師に伝える価値がある。

4つ目は、定期的な歯科受診である。ブラキシズムによる歯の摩耗や破折は、本人が気づくより前に歯科医師が発見できる場合がある。歯科検診では、むし歯や歯周病だけでなく、歯の摩耗状態や修復物の状態、顎の症状なども確認してもらうことができる。

ここで注意したいのは、歯ぎしりを「完全になくすこと」だけを目標にしないことである。現在の専門家の考え方では、ブラキシズムそのものと、それによって生じる悪影響を区別することが重要であり、実際に歯や顎に問題が生じているかを確認しながら対応する必要がある。

また、自己流で顎を強く動かしたり、無理なストレッチを繰り返したりすることにも注意が必要である。顎関節や咀嚼筋に痛みがある場合は、症状の種類によって対応が異なるため、専門家による評価を受けたほうが安全である。

歯科医院での「ナイトガード(マウスピース)」の活用

睡眠中の歯ぎしりへの対応として広く知られているのがナイトガードである。これは睡眠中に歯の表面を保護し、上下の歯が直接強く接触することによる損傷を抑える目的などで使用される装置である。

ただし、ナイトガードは「歯ぎしりを完全に止める装置」と考えるべきではない。装置を装着していても睡眠中の筋活動そのものが消えるとは限らず、主な目的は歯や修復物を保護することに置かれる場合がある。

日本補綴歯科学会の睡眠時ブラキシズムに関する診療ガイドラインでは、睡眠時ブラキシズムに対する口腔内装置について、歯科医師が患者の状態を確認したうえで適切に使用することが重要とされている。装置の種類や適応については、歯の状態、顎関節の状態、症状などを踏まえて判断する必要がある。

市販品を自分で購入して使用する方法と、歯科医院で作製する装置では、適合性や調整の考え方が異なる。特に強い歯ぎしりが疑われる人、歯が欠けている人、顎関節に症状がある人などは、自己判断だけで装置を選ばないほうがよい。

ナイトガードを使用したことで症状が悪化したり、装置によって顎に違和感が出たりする場合もある。そのため、装着後に痛みや噛み合わせの変化などが生じた場合には、装置を漫然と使い続けるのではなく、歯科医師に状態を確認してもらう必要がある。

また、ナイトガードを使用する場合でも、生活習慣の見直しが不要になるわけではない。日中の食いしばりや歯の接触が続いているのであれば、睡眠中だけ対策しても、1日の中で顎に加わる負担全体を十分に減らせない可能性がある。

日中の「TCH(歯列接触癖)」の意識

日中の歯の接触を考えるうえで重要な概念が「TCH」である。これは、安静時にも上下の歯を接触させる癖を指す言葉で、日本の歯科医療でも顎関節症や顎周囲の筋肉の緊張を考える際に広く知られている。

ここでいう接触は、強い食いしばりだけを意味しない。上下の歯が軽く触れている程度でも、それが長時間続けば、顎を閉じる筋肉が休む時間が減る可能性がある。

TCHへの対策として基本となるのは、「歯を離すことを思い出す」ことである。例えばパソコンの画面や机の近くに小さな目印を置き、目に入ったときに肩の力を抜き、唇は軽く閉じ、上下の歯を離すという方法がある。

この方法のポイントは、常に顎を意識し続けることではない。むしろ「歯を離す」という状態を何度も確認することで、無意識に歯を接触させる習慣に気づく機会を増やすことである。

スマートフォンを長時間使用する人であれば、画面を見ているときに上下の歯が触れていないか確認するだけでもよい。仕事や勉強の最中に顎を固定していることに気づいたら、一度肩の力を抜き、顎を休ませる。

ただし、TCHを意識すればすべてのブラキシズムが解決するわけではない。特に睡眠中のブラキシズムは意識的な行動ではないため、日中の自己管理だけで対応できない場合がある。

したがって、TCHへの意識は「治療」ではなく、日中の不要な歯の接触を減らすための生活上の工夫として位置づけるのが適切である。痛みや歯の損傷などがある場合には、セルフケアだけに頼らず歯科医療機関で評価を受けることが重要になる。

睡眠環境と生活習慣の見直し

ブラキシズムへの対応では、睡眠環境の見直しも重要である。毎日ほぼ同じ時間に寝起きする、就寝前の強い光や情報刺激を減らす、寝室を適切な温度や明るさに保つなど、一般的な睡眠衛生を整えることが基本になる。

特に就寝直前までスマートフォンを使用する習慣がある場合は、画面を見続ける時間を短くすることを検討できる。ただし、スマートフォンの使用をやめれば歯ぎしりが治るという意味ではなく、睡眠を妨げる可能性のある行動を減らし、休息しやすい環境を作るという位置づけで考える必要がある。

飲酒についても、寝つきを良くする目的で利用する習慣がある場合には見直しが必要になる。睡眠の質を確保するためには、飲酒量や時間帯を含めて自分の生活パターンを確認することが重要である。

カフェインについては、午後から夜間にかけて大量に摂取する習慣がある場合、摂取時間を早める方法が考えられる。喫煙についても、歯周組織の健康など別の観点から影響があるため、歯ぎしりだけを基準にするのではなく、口腔全体の健康という観点から見直すことが望ましい。

ここまでの対策をまとめると、ナイトガード、TCHへの意識、睡眠環境の改善、嗜好品の見直しは、それぞれ役割が異なる。どれか1つを万能な対策と考えるのではなく、歯や顎に実際の問題があるかを確認し、その状態に応じて組み合わせることが基本になる。

そして最も重要なのは、「歯ぎしりをしているかどうか」だけに注意を向けないことである。朝の顎の疲れ、歯の摩耗、知覚過敏、歯肉の出血、顎関節の痛み、口の開けにくさなど、身体に現れた変化を定期的に確認することが、早期発見につながる。

今後の展望

2026年時点の研究を総合すると、歯ぎしりは単純な「悪い癖」でも、「ストレスだけで起こる症状」でもないことが明確になってきた。国際的な専門家合意では、睡眠中のブラキシズムと覚醒中のブラキシズムを分け、顎の筋肉活動として評価するとともに、それ自体を直ちに病気とみなすのではなく、歯や顎などに生じる結果との関係で考える方向が示されている。

この考え方は、若者の歯ぎしりを考える際にも重要である。「歯ぎしりがあるか、ないか」という二択ではなく、どの程度の頻度で生じているのか、どのような場面で起こるのか、歯や顎にどのような変化があるのかを確認することが、今後さらに重要になると考えられる。

特に覚醒時ブラキシズムについては、研究方法によって有病率の推定値が大きく異なる。2025年の系統的レビューとメタ分析では、一般集団における自己申告による「可能性のある覚醒時ブラキシズム」が25.9%、臨床的評価による「おそらく該当する覚醒時ブラキシズム」が16.0%とされた一方、研究間の評価方法の違いが大きな課題として残っている。

さらに、2023年の系統的レビューとメタ分析でも、成人の覚醒時ブラキシズムについて15.44%という統合推定値が示されているが、研究方法には大きなばらつきがあり、標準化された評価方法の必要性が指摘されている。つまり、「若者に歯ぎしりが広がっている」という印象を、そのまま全国的な増加傾向として断定することは、現段階では適切ではない。

今後の研究では、スマートフォンや交流型情報サービスの利用時間、睡眠時間、精神的ストレス、身体活動、飲酒や喫煙などを個別に調査するだけでなく、それらがどのように組み合わさってブラキシズムと関連するのかを追跡する必要がある。特に同じ生活習慣を持っていても歯ぎしりが生じる人と生じない人がいることから、個人差を考慮した研究が重要になる。

また、若年層については研究の不足も課題である。2025年に発表された小児・青年を対象とする系統的レビューとメタ分析では、睡眠時ブラキシズムと客観的な睡眠指標との間に明確な関連は確認されなかった一方、保護者が評価した睡眠の質が低い場合には睡眠時ブラキシズムとの関連がみられたが、証拠の確実性は低い、または非常に低いと評価されている。

これは、若者の歯ぎしりを考える際に、本人の自己申告だけでなく、家族からの観察、歯科診察、必要に応じた機器による評価などを組み合わせる必要性を示している。今後は、若年層を対象にした長期的な研究によって、生活習慣とブラキシズム、歯の摩耗、顎関節症状などの関係をより明確にすることが期待される。

まとめ

「若者に広がる歯ぎしり」というテーマを検証すると、まず注意すべきなのは、若者の歯ぎしりが2026年に急増していると断定できる十分な全国的データが確認されているわけではないことである。一方で、覚醒時ブラキシズムは一定数の成人にみられ、研究によって推定値に幅があることから、日常生活の中で歯を接触させる習慣について知る意義は大きい。

その背景には、精神的ストレスだけでなく、睡眠、生活リズム、嗜好品、仕事や学業への集中、スマートフォンなどの情報機器の使用といった複数の要素が存在する可能性がある。ただし、それぞれについて歯ぎしりとの直接的な因果関係が確立しているわけではなく、「スマートフォンを使うから歯ぎしりになる」「ストレスがあるから歯ぎしりをする」といった単純な説明は避けるべきである。

歯ぎしりで最も注意したいのは、本人が気づかないまま負担が続く可能性があることだ。睡眠中の活動は自分で確認できず、日中の歯の接触も無意識に行われるため、歯の摩耗、歯の破折、知覚過敏、顎の疲労、顎関節周囲の症状などが発見のきっかけになる場合がある。

ただし、これらの症状があれば必ず歯ぎしりが原因というわけでもない。歯の摩耗には食習慣や酸による影響などが関係する場合があり、顎の痛みや頭痛にもさまざまな原因があるため、自己診断ではなく歯科医師による総合的な評価が必要になる。

対策では、睡眠中の歯や修復物を保護する目的でナイトガードが使用されることがある。また、日中については、上下の歯を不必要に接触させていないかを意識すること、長時間同じ姿勢を続けないこと、睡眠環境を整えること、飲酒や喫煙などの生活習慣を見直すことなどが考えられる。

特に重要なのは、「歯ぎしりを完全になくさなければならない」という考え方に偏らないことである。現在の国際的な考え方では、ブラキシズムそのものと、それによって生じる可能性のある臨床的な問題を区別して考えることが重視されている。

したがって、私たちが知っておくべきなのは、「歯ぎしりをしているか」という一点だけではない。自分の歯や顎に変化がないか、日中に無意識の歯の接触がないか、睡眠や生活習慣に問題がないかを確認し、必要に応じて歯科医療機関で相談するという姿勢である。

若い時期は「歯は簡単には悪くならない」と考えやすい。しかし、歯は一度大きく失われた部分を自然に元へ戻すことができないため、症状が小さい段階から状態を確認することには意味がある。

歯ぎしりを必要以上に恐れる必要はない。むしろ、歯ぎしりという現象を正しく理解し、歯や顎に実際の問題が生じていないかを確認しながら、睡眠、姿勢、ストレス、日中の歯の接触といった生活全体を見直すことが、2026年時点で現実的な対応といえる。

本稿の検証結果

本稿の検証から、「歯ぎしりは若者の間で急増している」という強い表現については、現時点で全国的な増加を直接裏付ける十分な証拠が不足していると判断できる。一方、覚醒時ブラキシズムが一定割合存在すること、心理社会的要因との関連が研究されていること、歯や顎に負担を生じさせる可能性があることについては、複数の研究から確認できる。

また、「ストレスが歯ぎしりの原因である」という説明も、完全に否定する必要はないが、単一原因説として扱うことは適切ではない。睡眠、神経生理学的要因、生活習慣、薬剤、嗜好品などを含む複合的な現象として理解するほうが、現在の専門的な考え方に近い。

「スマートフォン姿勢が歯ぎしりを引き起こす」という説明についても、直接的な因果関係として断定することはできない。長時間の画面使用が首や肩などの筋骨格系への負担や睡眠習慣に関係する可能性はあるものの、それがそのままブラキシズムの発生を意味するわけではない。

「歯ぎしりをすると必ず歯の寿命が短くなる」という説明も同様である。強いブラキシズムは歯の摩耗や破折、修復物への負担などと関連し得るが、歯の寿命はむし歯、歯周病、口腔衛生、食生活、喫煙など多くの要因によって決まるため、歯ぎしりだけで寿命を予測することはできない。

以上を踏まえると、本稿の題名にある「気づかないうちに歯を傷める可能性も」という部分は、医学的に一定の根拠を持つ表現といえる。ただし、「若者に広がっている」という部分については、現在の研究状況からは「若者にもみられる身近な問題として注意が必要」と表現するほうが、科学的には慎重である。


参考・引用リスト

  • メレル・C・フェルフーフほか「歯ぎしりの定義の更新――国際専門家会議報告」口腔リハビリテーション学術誌、2025年。ブラキシズムについて、睡眠中と覚醒中の活動を区別し、現在の定義と評価方法を整理した国際的専門家合意である。
  • フランク・ロブゼーほか「歯ぎしりの定義と段階評価――国際的合意」口腔リハビリテーション学術誌、2013年。睡眠時ブラキシズムと覚醒時ブラキシズムを区別する基本的な定義を示した研究である。
  • ニコラ・スタニシッチほか「成人集団における覚醒時ブラキシズムの有病率――系統的レビューとメタ分析」根拠に基づく歯科診療学術誌、2025年。一般集団における可能性のある覚醒時ブラキシズムと、臨床的におそらく該当する覚醒時ブラキシズムの推定値を分析している。
  • アドリアナ・バッティスティ・アーチャーほか「成人集団における覚醒時ブラキシズムの有病率――系統的レビューとメタ分析」口腔疾患予防・研究関連学術誌、2023年。成人の覚醒時ブラキシズムについて複数研究を統合し、研究方法の標準化が必要であることを指摘している。
  • ギリェルメ・アザリオ・デ・ホランダほか「成人における睡眠時・覚醒時ブラキシズムと睡眠の質・睡眠時間との関連――系統的レビューとメタ分析」睡眠医学、2025年。主観的な睡眠の質とブラキシズムとの関連を検討し、客観的な睡眠指標との関係については明確な関連が確認されなかったことを報告している。
  • ギリェルメ・アザリオ・デ・ホランダほか「小児・青年における睡眠・覚醒時ブラキシズムと睡眠の質・睡眠時間との関連――系統的レビューとメタ分析」睡眠医学、2025年。小児・青年を対象として睡眠とブラキシズムの関連を検討し、証拠の確実性に限界があることを示している。
  • 日本補綴歯科学会「睡眠時ブラキシズムに対する診療ガイドライン」。睡眠時ブラキシズムの診断・評価および歯科臨床における対応を検討する際の国内資料として位置づけられる。
  • 日本歯科医師会「歯ぎしり・食いしばりに関する解説資料」。歯ぎしりや食いしばりに関係する生活習慣や口腔内への影響を一般向けに解説する国内資料である。
  • 日本歯科医学会・関連歯科医療機関による顎関節症および口腔機能に関する資料。歯ぎしりだけでなく、顎関節、咀嚼筋、歯周組織などを含めて口腔全体を評価する必要性を確認するための資料として参照できる。

追記:「若者に広がる」という表現をどう捉えるか

本稿の出発点は「若者に広がる歯ぎしり」という問題提起である。しかし、2026年10月時点の研究を確認すると、若者の歯ぎしりが近年一貫して増加していることを直接示す大規模な時系列データは十分ではない。

一方で、覚醒時ブラキシズムについては成人を対象とした複数の研究で一定の割合が報告されている。2025年の系統的レビューとメタ分析では、自己申告による可能性のある覚醒時ブラキシズムが25.9%、臨床的評価によるおそらく該当する覚醒時ブラキシズムが16.0%と推定されているが、研究ごとの評価方法に違いがあるため、これをそのまま人口全体の実態とみなすことはできない。

このため、「若者に広がる」という表現は、疫学的な増加を断定する言葉としてではなく、現代の若年層にも無視できない口腔習慣の1つとして問題を提起する表現として理解するのが妥当である。

「ストレスが原因」はどこまで正しいのか

歯ぎしりについて最も広く知られている説明の1つが「ストレスが原因」という説である。実際、心理的ストレスや不安などとブラキシズムとの関連を調べた研究は存在し、ストレスが一部の人のブラキシズムと関係する可能性は否定できない。

しかし、現在の研究から「ストレスが歯ぎしりの原因である」と一律に断定することはできない。ブラキシズムには、睡眠中の脳活動、自律神経活動、遺伝的要素、薬剤、嗜好品、生活習慣など複数の要因が関係する可能性があるためである。

したがって、「ストレスを減らせば歯ぎしりもなくなる」という説明も単純化しすぎている。ストレス対策は生活全体の健康という観点では重要だが、ブラキシズムに対しては、睡眠状態や口腔内の状態などを含めて考える必要がある。

「スマートフォンが原因」という説明にも注意が必要

スマートフォンの長時間使用についても同様である。長時間の画面使用と首・肩などの筋骨格系症状との関係や、夜間の情報機器使用と睡眠との関係は研究されているが、スマートフォンの使用そのものがブラキシズムを直接発生させると証明されたわけではない。

したがって、「スマートフォンを見る姿勢が悪いから歯ぎしりになる」という因果関係を設定するのは適切ではない。より慎重には、長時間の画面使用による姿勢の固定、集中状態、休憩不足、睡眠時間の変化などが複合的に生活習慣へ影響し、その一部が顎の筋活動と関連する可能性を検討する、という位置づけになる。

これは歯ぎしりを現代のデジタル生活だけに帰属させないためにも重要である。スマートフォンをほとんど使わない人でもブラキシズムは起こり得るし、長時間使用する人すべてが歯ぎしりをするわけでもない。

睡眠との関係も単純ではない

睡眠時ブラキシズムについては、睡眠の質との関係が繰り返し研究されている。2025年の系統的レビューとメタ分析では、睡眠時ブラキシズムのある人は主観的な睡眠の質が低い傾向を示したが、睡眠効率や睡眠時間などの客観的指標については明確な差が確認されなかった。

この結果は、本人が「よく眠れていない」と感じていることと、実際の睡眠構造がどのようになっているかを区別する必要性を示している。睡眠の問題を自覚している場合でも、その原因がブラキシズムなのか、別の睡眠問題なのかを自己判断することはできない。

特に大きないびき、睡眠中の呼吸停止を指摘される、日中の強い眠気が続くなどの症状がある場合には、歯ぎしりだけに注目するのではなく、睡眠そのものについて医療機関に相談することも重要になる。

「歯ぎしり」と「食いしばり」を区別する

一般的には「歯ぎしり」という言葉ですべてをまとめてしまいがちだが、実際には歯を擦り合わせる動作だけでなく、歯を強く噛みしめる動作、顎を固定するような活動などもブラキシズムに含まれる。

この違いを知っておくことは重要である。歯をギリギリ擦る音がなければ、自分にはブラキシズムがないと判断してしまう可能性があるからだ。

特に日中は、仕事や勉強、運転、スマートフォン操作などに集中することで、上下の歯を軽く接触させた状態を長時間維持することがある。こうした状態は、本人にとって「食いしばっている」という感覚がないこともあり、気づくためには意識的な確認が必要になる。

「TCH」は万能な診断名ではない

日中の歯の接触を示すTCHは、口腔習慣を見直すうえで有用な概念である。ただし、TCHがあるから顎関節症になる、あるいはTCHをなくせばすべての顎の症状が治るというように理解するべきではない。

顎関節症には複数の病態があり、症状や原因も人によって異なる。TCHへの意識は、日中の不要な歯の接触を減らすための行動上の工夫として位置づけ、痛みや開口障害などがある場合には専門的な診察を受ける必要がある。

ナイトガードを過大評価しない

ナイトガードについても、「歯ぎしりを止める装置」と考えると誤解が生じる。口腔内装置は歯や修復物を保護する目的などで使用されるが、装着したことによってブラキシズムそのものが完全に消失するとは限らない。

また、すべての人が同じ装置を使用すればよいわけでもない。歯の摩耗、詰め物や被せ物の状態、噛み合わせ、顎関節の症状などを確認し、必要性や装置の種類を歯科医師が判断することが重要になる。

市販の装置を使用する場合にも、違和感、痛み、噛み合わせの変化などが出た場合には漫然と使用しないことが重要である。口腔内装置は「とりあえず使えば安全」というものではなく、適合状態を確認しながら使用する必要がある。

歯ぎしりを発見するためのチェックポイント

自分で確認する場合には、まず起床直後の状態を見ることができる。顎の疲労感、頬やこめかみの張り、歯の痛み、知覚過敏などが繰り返されていないかを確認する。

次に、歯そのものを見ることも重要である。歯の先端が以前より平らになっている、歯が欠けた、詰め物が頻繁に外れる、歯の表面に摩耗が目立つなどの変化があれば、歯科医院で相談する価値がある。

さらに、日中の生活を振り返る。スマートフォンを操作しているとき、パソコン作業中、集中して読書をしているとき、運転中などに上下の歯が接触していないかを確認する。

家族から睡眠中の歯ぎしりを指摘された場合も重要な情報になる。ただし、家族が聞いた音だけでブラキシズムの程度を判断することはできないため、歯科医師にその事実を伝え、歯や顎の状態を確認してもらうのが適切である。

受診を検討したほうがよい症状

歯ぎしりが疑われるだけで必ず治療が必要になるわけではない。しかし、歯が頻繁に欠ける、強い知覚過敏が続く、顎に痛みがある、口を開けにくい、顎の症状が繰り返すなどの場合には、歯科医療機関への相談を検討する必要がある。

歯肉の出血や腫れ、歯の動揺、持続する口臭などがある場合には、歯ぎしりだけでなく歯周病についても確認する必要がある。歯周病とブラキシズムは別の問題であるため、片方だけを治療すれば口腔全体の問題が解決するとは限らない。

また、睡眠中の呼吸停止を指摘された場合や、日中の強い眠気が続く場合には、歯科的な問題だけでなく睡眠に関する医療評価が必要になる可能性がある。

2026年時点で残されている研究課題

最大の課題の1つは、ブラキシズムを測定する方法の標準化である。本人への質問、家族による観察、歯科診察、睡眠中の筋活動を測定する検査など、それぞれに長所と限界があり、同じ「歯ぎしり」という言葉でも研究によって対象が異なる場合がある。

そのため、今後は同じ基準を用いて若年層を長期間追跡する研究が必要になる。スマートフォン利用、睡眠時間、精神的ストレス、身体活動、嗜好品、口腔衛生などを同時に追跡すれば、どの要因がブラキシズムと関連し、どの要因が歯や顎の損傷に関係するのかをより明確にできる可能性がある。

もう1つの課題は、治療と予防の位置づけである。2026年の系統的レビューでは、覚醒時ブラキシズムに対する行動変容、自己管理、バイオフィードバックなどの方法が検討されているが、研究数や研究方法には限界があり、すべての人に共通して有効といえる方法が確立した段階にはない。

したがって今後は、「ブラキシズムを止めること」だけではなく、「歯や顎に生じる損傷をどのように防ぐか」という視点で研究を進めることが重要になる。

最後に

本稿全体を検証すると、「若者に歯ぎしりが広がっている」という表現には一定の注意が必要である。若年層を含む人々にブラキシズムが存在することは確認されているが、2026年10月時点で、若者の歯ぎしりが近年急増していると断定できるだけの全国的な長期データは十分ではない。

一方で、歯ぎしりや食いしばりを軽視する必要もない。ブラキシズムは歯の摩耗や破折、修復物への負担、顎周囲の筋肉の疲労などと関連する可能性があり、本人が気づかないまま継続する場合がある。

原因についても、ストレスだけに求めることはできない。睡眠、心理社会的要因、生活習慣、薬剤、嗜好品など複数の要因が関係する可能性があり、スマートフォンや交流型情報サービスについても、直接的な原因と断定するのではなく、姿勢や睡眠などを介した生活上の関連として捉える必要がある。

したがって、歯ぎしりへの対応で最も重要なのは、恐怖を煽ることでも、特定の原因を決めつけることでもない。歯と顎の状態を確認し、日中の歯の接触に気づき、睡眠や生活習慣を整え、必要な場合には歯科医療機関で評価を受けることである。

歯ぎしりは、本人が気づきにくいからこそ、知識を持つことに意味がある。痛みが出てから対処するだけでなく、歯の摩耗や顎の疲労などの小さな変化をきっかけに状態を確認することが、長期的な口腔の健康を考えるうえで重要になる。


  • フランク・ロブゼーほか「歯ぎしりの定義と段階評価――国際的合意」口腔リハビリテーション学術誌、2013年。睡眠時ブラキシズムと覚醒時ブラキシズムを区別する基本的な定義を示した研究である。
  • ニコラ・スタニシッチほか「成人集団における覚醒時ブラキシズムの有病率――系統的レビューとメタ分析」根拠に基づく歯科診療学術誌、2025年。一般集団における可能性のある覚醒時ブラキシズムと、臨床的におそらく該当する覚醒時ブラキシズムの推定値を分析している。
  • アドリアナ・バッティスティ・アーチャーほか「成人集団における覚醒時ブラキシズムの有病率――系統的レビューとメタ分析」口腔疾患予防・研究関連学術誌、2023年。成人の覚醒時ブラキシズムについて複数研究を統合し、研究方法の標準化が必要であることを指摘している。
  • ギリェルメ・アザリオ・デ・ホランダほか「成人における睡眠時・覚醒時ブラキシズムと睡眠の質・睡眠時間との関連――系統的レビューとメタ分析」睡眠医学、2025年。主観的な睡眠の質とブラキシズムとの関連を検討し、客観的な睡眠指標との関係については明確な関連が確認されなかったことを報告している。
  • ギリェルメ・アザリオ・デ・ホランダほか「小児・青年における睡眠・覚醒時ブラキシズムと睡眠の質・睡眠時間との関連――系統的レビューとメタ分析」睡眠医学、2025年。小児・青年を対象として睡眠とブラキシズムの関連を検討し、証拠の確実性に限界があることを示している。
  • 日本補綴歯科学会「睡眠時ブラキシズムに対する診療ガイドライン」。睡眠時ブラキシズムの診断・評価および歯科臨床における対応を検討する際の国内資料として位置づけられる。
  • 日本歯科医師会「歯ぎしり・食いしばりに関する解説資料」。歯ぎしりや食いしばりに関係する生活習慣や口腔内への影響を一般向けに解説する国内資料である。
  • 日本歯科医学会・関連歯科医療機関による顎関節症および口腔機能に関する資料。歯ぎしりだけでなく、顎関節、咀嚼筋、歯周組織などを含めて口腔全体を評価する必要性を確認するための資料として参照できる。
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