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中国で「はま寿司」急拡大、約50店→200店超に、10年の停滞からわずか数年での「爆発的拡大」

中国のはま寿司急拡大は、日本の回転寿司が中国で単純に人気になったという話ではない。長期間の市場適応を経て、低価格、多品種、日本ブランド、現地化、デザートや飲料などを組み合わせ、中国人の外食行動に合わせて業態そのものを再設計したことが最大のポイントである。
はま寿司のCMギャラリー(はま寿司)
現状(2026年9月時点)

中国における「はま寿司」の店舗展開は、2020年代前半までの慎重な出店から一転し、現在は明確な拡大局面に入っている。ゼンショーホールディングスの2026年3月期決算によると、グローバルはま寿司は期末時点で862店舗、そのうち海外が198店舗となっており、中国大陸では196店舗規模に達しているとされる資料もあるため、「200店超」という表現は2026年9月時点の状況を説明する文脈として概ね妥当と考えられる。

ただし、「約50店から200店超」という数字を単純に数年間で4倍になったと理解するのは正確ではない。ジェトロによれば、中国での店舗数は2020年12月時点で12店舗だったものが、2024年6月には60店舗まで増えており、その後さらに出店速度を上げているため、より正確には「長期間の小規模展開を経て、2020年代半ばから急速な多店舗化に移行した」と捉えるべきである。

概況:10年の停滞からわずか数年での「爆発的拡大」

はま寿司の中国進出そのものは新しいものではない。2014年9月に上海で海外1号店を開業しており、同社にとって中国は台湾、香港などに先行する重要な海外市場だったが、初期段階では中国事業が一気に巨大化することはなかった。

実際、2024年6月時点で60店舗だったことを考えると、2014年の進出から約10年間は、店舗網を形成するための試行期間だったと評価できる。2020年末の12店舗という数字からも、少なくとも最初の数年間は大量出店型の戦略ではなく、市場への適応と事業モデルの検証を優先していたことが分かる。

この意味で現在の中国事業は、単純な海外進出の延長線上ではなく、事業モデルが中国市場で一定の再現性を持つと判断された後の「拡大フェーズ」と位置付けることができる。2026年3月期のグローバルはま寿司全体でも売上高は3,202億77百万円、営業利益は267億71百万円となり、それぞれ前年同期比28.9%増、25.4%増という高い伸びを示している。

進出からの経緯

2014年の上海1号店では、はま寿司は日本型の回転寿司をそのまま持ち込むのではなく、注文用端末や集中会計など効率的な店舗運営を組み合わせていた。当時から均一価格を軸とする分かりやすさと、注文のしやすさが重要な特徴となっており、中国の中間所得層を意識した価格競争力が事業モデルの柱になっていた。

その後、中国国内では上海を起点として天津、北京、広州、成都などへ展開地域を広げた。しかし、2020年末の12店舗という実績からも分かるように、初期の中国事業は急速な全国展開には至らなかった。

転機となったのは2020年代に入ってからである。2024年6月には中国60店舗に到達し、さらに深センなど新たな大都市圏へ進出したことから、既存商圏の深掘りだけではなく、中国国内で複数都市を横断する多店舗展開へ戦略が変化したことが確認できる。

急拡大のフェーズ

2026年時点のはま寿司中国事業を特徴付けるのは、単に店舗数が増えたことではなく、出店速度そのものが変わった点にある。2020年末の12店舗から2024年6月の60店舗への増加だけでも約5倍であり、その後さらに100店舗規模を超え、2026年3月には中国大陸で約200店舗規模へ接近している。

この急拡大を可能にした背景には、ゼンショーグループが持つ多店舗運営能力もある。ゼンショーホールディングスは2026年3月末時点でグループ全体14,947店舗を展開しており、中国を含む海外市場での店舗開発、調達、物流、人材育成などを長年積み重ねてきたことが、はま寿司の拡大を支える基盤になっている。

もっとも、店舗数だけを見て成功と判断するのは早計である。中国ではスシローも2026年に100店舗へ到達しており、はま寿司は店舗数で先行する一方、都心一等地での存在感やブランド認知ではスシローが強いとの分析もあるため、今後は「何店舗あるか」だけでなく、「1店舗当たりの売上高をどこまで高められるか」が重要な評価指標になる。

ここまでを見ると、中国のはま寿司は「寿司店を増やしている」のではなく、日本で確立した低価格・大量提供型の外食モデルを、中国市場向けに再設計しながら規模を拡大している段階にある。次の焦点は、その再設計を支える商品戦略、すなわち寿司そのものに加えて火鍋やデザートなどを組み込んだ現地化にある。

中国「はま寿司」急拡大の主要因

中国におけるはま寿司の急拡大を店舗数だけで説明するのは難しい。重要なのは、日本の回転寿司をそのまま輸出するのではなく、中国の消費者が「寿司店に何を求めるのか」を検証し、商品構成、注文方法、価格、利用目的を組み替えてきた点にある。

特に注目されるのが、寿司を中核に置きながらも、寿司だけで客単価と来店動機を構成しない設計である。中国のはま寿司では、火鍋など日本の標準的な回転寿司店では前面に出ない商品を投入する一方、炙り系の商品や甘味なども増やしており、「寿司を食べる場所」から「複数の商品を低価格で楽しめる外食店」へと利用目的を広げている。

この方向性は、中国市場の外食事情を考えると合理的である。中国では日本食そのものへの関心が存在する一方、寿司だけで幅広い顧客を取り込むには限界があり、現地の食習慣や嗜好に合わせて選択肢を増やすことが店舗の利用頻度を高めるからである。

① 現地化と意外性の融合

中国のはま寿司を特徴付ける最も分かりやすい要素が、現地化と日本発ブランドとしての意外性を同時に追求している点である。典型例が火鍋であり、2024年に中国店舗を訪問した現地レポートでも火鍋メニューの存在が確認されている。

火鍋は中国人にとって極めて身近な料理であり、寿司と比較すれば圧倒的に日常的な食文化に位置付けられる。したがって、はま寿司が火鍋を投入することは、日本食ブランドとしての独自性を捨てることではなく、中国人が既に持っている食習慣を店舗への来店理由として取り込む施策と見ることができる。

ここで重要なのは、「現地化=日本らしさを弱めること」ではない点である。むしろ、寿司を日本ブランドとして残しながら、中国人が普段から食べる料理を組み合わせることで、同行者の好みが異なる場合にも店舗を選択しやすくなる。

例えば、寿司を食べたい客と火鍋を食べたい客が同じグループにいた場合、寿司専門店では選択肢が限定される。しかし寿司と火鍋を同時に提供できれば、店舗選択における制約が小さくなるため、家族、友人、職場関係者など複数人での利用を取り込みやすくなる。

この構造は、単なるメニュー追加以上の意味を持つ。外食産業では、商品そのものの魅力だけでなく、「その店を選ぶ理由」をどれだけ多く作れるかが重要であり、はま寿司は中国市場でその理由を増やしていると考えられる。

「火鍋」や「炙りブリュレ」の投入

さらに興味深いのが、現地化だけではなく、消費者が写真や商品名を見ただけで興味を持つような「意外性」を商品開発に組み込んでいることである。その代表例として中国店舗で展開されたのが、寿司に甘いカラメル状の風味を組み合わせたブリュレ系の商品である。

2024年の中国店舗訪問記では、サーモンやエビなどを使った「ブリュレ」系の商品が複数存在していたことが報告されている。日本の一般的な寿司の感覚からすればかなり大胆な組み合わせであり、中国市場での商品開発が日本国内と同一ではないことを示す事例となっている。

この戦略の意味は、味覚への対応だけではない。ブリュレという言葉や炙る調理工程そのものが視覚的な訴求力を持ち、従来の寿司を知っている消費者にも「一度試してみたい」という動機を与えるからである。

つまり、中国市場の商品開発では「本格的な日本食」という価値だけではなく、「日本の寿司チェーンなのに、こんな商品がある」という驚きも商品価値の一部になっている。これは若年層や外食を娯楽として楽しむ消費者を引き込むうえで有効な戦略と考えられる。

寿司以外の強力なキラーコンテンツ

はま寿司の強みを考える場合、寿司以外の商品群を脇役と見なすべきではない。日本の店舗でもラーメン、うどん、茶碗蒸し、揚げ物、肉系商品、デザートなどを幅広く扱っており、公式メニューでも寿司だけに依存しない商品構成が確認できる。

これは中国市場でも重要な意味を持つ。寿司が苦手な客、魚介類をあまり食べない客、同行者に合わせて別の商品を選びたい客がいても、店舗内で食事を完結できる可能性が高くなるからである。

外食店においてメニューの幅は、単純に「選べる商品が多い」という意味だけではない。グループ内の需要を一つの店舗に集約できるため、競合店への顧客流出を抑え、来店機会そのものを増やす効果が期待できる。

この点では、はま寿司は「寿司専門店」というより、寿司を看板商品とした総合的な低価格外食業態へ近づいている。ゼンショーグループが持つ幅広い外食事業のノウハウを考えれば、この方向性は偶然ではなく、グループ全体の店舗運営能力とも整合する。

デザート・ドリンクの充実

もう一つ見逃せないのが、デザートとドリンクの位置付けである。はま寿司では現在も寿司、サイドメニューと並んでデザート・ドリンクを独立した商品カテゴリーとして扱っており、期間限定商品としてブリュレ系の甘味なども展開している。

デザートの充実は、女性客や若年層を取り込むうえで特に有効である。食事だけを目的にすると寿司の価格や量が来店判断を左右するが、デザートや飲料まで含めれば、友人同士で会話をしながら長く過ごす場としての利用価値が生まれる。

さらに、寿司店におけるデザートは追加注文を促しやすい。寿司を数皿食べて終わる客に対して、最後に甘味や飲料を追加してもらえば、低価格の商品を中心とする業態でも1人当たりの売上を押し上げることができる。

このため、デザートは単なるサービス商品ではなく、客層拡大と客単価向上を同時に狙える戦略商品と評価できる。

② 「女性一人客」をはじめとする新たな顧客層の開拓

中国市場での急拡大を持続させるには、家族連れや大人数のグループ客だけに依存しないことも重要である。特に注目されるのが女性客や一人客など、従来の「回転寿司」の典型的な利用イメージから外れる顧客層である。

日本でも回転寿司はすでに一人利用が珍しい業態ではなくなっている。実際、2022年の調査では回転寿司を利用した女性の97.5%が利用経験を持ち、「手軽に食べられること」が主要な利用理由となっており、回転レーンから取らず注文する利用者も62.7%に達している。

この変化は、中国市場を分析する際にも重要な示唆を与える。タッチパネルによる注文、短時間での提供、少量ずつ好きな商品を選べる仕組みは、一人客との相性が良く、他人との食事時間を合わせる必要がないという利便性を提供できるからである。

一人客を取り込めれば、店舗の利用機会そのものが増える。家族や友人がそろわなければ利用しない店と、一人でも気軽に利用できる店では、平日の昼食、仕事帰り、買い物途中など利用可能な時間帯が大きく異なる。

女性客についても、重要なのは単に「女性向け商品」を増やすことではない。価格の分かりやすさ、注文のしやすさ、少量注文の自由度、デザートなどの選択肢を組み合わせることで、従来の寿司店とは異なる利用動機を形成することができる。

この点から見ると、中国のはま寿司の戦略は、単に男性中心だった顧客層を女性に置き換えるものではない。「家族で食べる寿司」から「一人でも、友人同士でも、少額でも利用できる外食」へと利用シーンそのものを拡張する戦略と捉えるべきである。

③ 徹底したコスパ路線

そして、この商品戦略を下支えする最大の武器が価格競争力である。はま寿司は日本国内でも低価格を明確な競争軸としており、現在も期間限定で中とろを税込110円とするなど、低価格と高付加価値商品を組み合わせた販促を継続している。

中国市場でも、単に「安い寿司」を提供するだけではなく、安価な商品を入り口として、さまざまなネタやサイドメニューを追加してもらう構造が重要になる。消費者から見れば、少額で複数の商品を試せること自体が店舗利用の魅力となり、価格に敏感な層でも来店しやすくなる。

ここでいうコストパフォーマンスは、単純な最安値競争とは異なる。「この価格ならこれだけ食べられる」という納得感を作ることが本質である。はま寿司は低価格の寿司を核にしながら、火鍋、炙り系商品、サイドメニュー、デザートなどを組み合わせることで、その納得感を強化している。

この仕組みが中国市場で機能すれば、店舗数の増加とともに調達量や物流効率も改善し、さらに価格競争力を高められる可能性がある。すなわち、商品開発、集客、店舗拡大、調達効率が相互に作用する循環が、現在の急拡大を支える構造になっている。

ライバル「スシロー」とのすみ分け構造

中国の回転寿司市場を考えるうえで、はま寿司の急拡大を単独で評価することはできない。日本の大手回転寿司チェーンでは、FOOD & LIFE COMPANIES傘下の「スシロー」も中国市場で積極的な出店を進めており、両社は同じ日本発の回転寿司ブランドでありながら、異なる競争軸を形成しつつある。

特に重要なのは、両社の違いが単純な「高価格対低価格」ではない点である。スシローは日本発の寿司ブランドとしての商品力やブランド認知を前面に出し、はま寿司は価格、商品数、利用しやすさ、現地向け商品を組み合わせることで、より広い顧客層を取り込む構造を作っている。

中国市場では、日本食に対する需要そのものが存在するため、日本ブランドであることは一定の競争力になる。しかし、競合が増えれば「日本の回転寿司」というだけでは差別化が難しくなり、最終的には価格、商品、店舗立地、サービス、ブランドイメージの総合戦となる。

スシローのポジション

スシローは中国市場で先行して認知度を高めてきた日本発の回転寿司ブランドの一つである。2026年には中国本土で100店舗に到達しており、100店舗到達そのものをブランドの成長を示す節目として打ち出している。

スシローの強みは、寿司そのものをブランド価値の中心に置きやすいことである。日本国内で長年蓄積してきた商品開発力や期間限定商品の投入、鮮魚を中心とした商品訴求などによって、「日本の回転寿司を体験する」という目的を作りやすい。

この戦略は、特に中国の都市部に存在する日本食への関心が高い消費者との相性が良い。価格だけで店を選ぶのではなく、ブランド、味、話題性、商品品質などを総合的に判断する消費者に対しては、スシローのブランド力が重要な意味を持つ。

また、スシローは日本の回転寿司文化そのものを海外に展開するという意味でも強い。日本で形成された「回転レーン」「注文端末」「期間限定商品」といった体験を組み合わせることで、単なる寿司販売ではなく、外食体験としての価値を提供できる。

一方で、このポジションには弱点もある。ブランド価値を高めれば一定の価格水準を維持しやすい反面、景気や消費者心理が悪化した場合には、より低価格で多くの商品を選べる店舗に需要が流れる可能性がある。

中国では都市部を中心に消費者の価格意識が強まる局面もあり、「日本ブランドだから高くても利用する」という市場だけを狙うのは限界がある。スシローにとってはブランド価値を守りながら、どこまで価格面で競争力を維持できるかが重要になる。

はま寿司のポジション

これに対して、はま寿司はより大きな市場を狙える構造を持つ。寿司を看板にしながら、火鍋、揚げ物、麺類、デザートなどを組み合わせることで、「日本の寿司を食べたい人」だけではなく、「安く外食したい人」や「いろいろな料理を一度に楽しみたい人」まで対象にできるからである。

この違いは出店戦略にも影響する。特定の高所得層が集まる地域だけを狙うのではなく、一定の人口密度と購買力があり、価格に対する感度が高い地域にも店舗を広げることができれば、店舗網そのものを大きくできる。

中国で2024年6月に60店舗だったはま寿司が、その後わずか数年で約200店舗規模へ到達したことは、この戦略が単なる商品政策ではなく、多店舗化を前提とした事業モデルとして機能している可能性を示している。

つまり、スシローが「日本の寿司ブランドとして選ばれること」を重視するなら、はま寿司は「日本の回転寿司を低価格で気軽に利用できること」をより強く打ち出していると整理できる。両社は同じ市場に存在するものの、顧客が店舗を選ぶ際の判断基準が完全には一致していない。

もちろん、このすみ分けは固定されたものではない。はま寿司のブランド力が高まれば、より高付加価値の商品を増やすことが可能になり、スシローが価格競争力を強化すれば両社の顧客層は重なってくる。

価格競争だけでは説明できない差

両社の競争を「安いはま寿司、高級なスシロー」と単純化するのは適切ではない。回転寿司業態そのものが大量調達、大量販売、標準化された店舗運営によってコストを抑える仕組みを持つため、両社とも基本的には大衆外食市場を対象としているからである。

差が生じるのは、同じ価格帯の中で何を価値として提示するかである。スシローは寿司の商品力とブランド体験を強く打ち出し、はま寿司は商品選択の幅と価格の分かりやすさ、現地化を組み合わせている。

この差は中国市場では特に重要になる。中国の消費者にとって日本食は必ずしも日常食ではないため、寿司だけを目的とする顧客よりも、「日本食を試してみたい」「家族や友人と気軽に食事したい」「価格を抑えて外食したい」という需要を幅広く取り込む方が、店舗数を増やすうえでは有利だからである。

その意味では、はま寿司の火鍋投入は単なる話題作りではない。寿司という比較的限定された需要を、火鍋やサイドメニューによってより大きな外食需要へ接続する役割を持つ。

店舗数拡大がもたらすスケールメリット

はま寿司の強みは、店舗数が増えるほど強化される可能性がある。店舗数が増えれば、食材調達量を増やせるだけでなく、物流網、セントラルキッチン、店舗運営、人材教育、広告宣伝などの固定的な仕組みを多数の店舗で共有できるからである。

これはゼンショーグループの事業構造と非常に相性が良い。ゼンショーホールディングスはすき家、なか卯、ココス、ビッグボーイなど多数の外食ブランドを国内外で運営しており、大量調達と物流、店舗開発、人材育成をグループ規模で蓄積している。

はま寿司の中国店舗が数十店の段階から200店規模へ移行すると、1店舗ごとの成功だけではなく、チェーン全体の効率性が重要になる。例えば食材の調達量が増えれば仕入れ条件の改善余地が生まれ、物流拠点の稼働率が高まれば店舗当たりの物流コストを低下させられる可能性がある。

ただし、スケールメリットには反対側のリスクも存在する。店舗数を急激に増やせば、立地の質、人材教育、衛生管理、食材品質、サービス水準などを均一に維持することが難しくなり、1店舗の問題がチェーン全体のブランドイメージを傷つける可能性がある。

したがって、200店舗という数字は成功のゴールではなく、むしろ新たな経営段階への入り口と見るべきである。今後は出店速度を維持しながら、既存店の売上高と利益率をどこまで確保できるかが重要になる。

ゼンショーグループ全体の事業構造へのインパクト

はま寿司の海外拡大は、単一ブランドの海外成功という意味を超えて、ゼンショーホールディングス全体の海外戦略にも影響する。ゼンショーは従来から牛丼を中心に海外展開してきたが、寿司という日本食ブランドを大規模に海外展開できれば、グループの海外事業に新たな成長軸が加わることになる。

特に中国では人口規模が巨大であるため、1店舗当たりの売上高が極端に大きくなくても、店舗数を積み上げることでグループ全体への寄与を大きくできる。これは「高単価の少数店舗」ではなく、「中価格帯の商品を大量に販売する多数店舗」というゼンショー型の経営モデルと一致する。

2026年3月期のグローバルはま寿司事業は売上高3,202億77百万円、営業利益267億71百万円に達しており、前年同期から売上高、営業利益とも大幅に伸びている。はま寿司はすでに国内だけで完結するブランドではなく、海外展開を含めたグループの成長事業として位置付けられる段階に入っている。

中国で200店舗規模に到達すれば、その効果は店舗数そのものだけではない。中国市場で確立した商品開発や店舗運営のノウハウを他のアジア市場へ転用できる可能性があり、逆に他地域で得た知見を中国へ戻すこともできる。

この循環が形成されれば、はま寿司は「中国で成功した日本の回転寿司チェーン」から、「海外市場を複数抱えるグローバル外食ブランド」へ移行することになる。

海外売上・利益の牽引

ゼンショーにとって海外事業の重要性が高まる理由は、日本国内の人口減少にある。国内市場では人口そのものが縮小するため、既存ブランドの店舗数を永続的に増やすことには限界がある。

これに対して中国を含む海外市場には、都市人口や中間所得層の拡大を背景とした外食需要が存在する。もちろん中国経済の減速や消費者心理の悪化というリスクはあるが、長期的な市場規模そのものは日本国内を大きく上回る。

はま寿司の中国展開は、この海外成長を具体的な店舗という形で実現する戦略である。しかも寿司は「日本発」という分かりやすいブランドストーリーを持つため、牛丼などとは異なる日本食需要を取り込める。

したがって、はま寿司の中国200店舗規模への拡大は、単なる出店ニュースではなく、ゼンショーが国内中心の外食企業から、海外売上と海外利益を成長源の一つとする企業へ移行していることを示す事例として評価できる。

今後の最大の焦点は、中国でさらに店舗数を増やせるかではなく、増やした店舗を高い収益性で運営できるかである。200店舗規模まで拡大すれば、人口の多い大都市圏だけでなく、次の地方都市へ進出する必要が生じ、立地条件や物流効率、人材確保の難易度も変化する。

さらに、はま寿司の強みである低価格路線には限界もある。原材料費、人件費、物流費、賃料などが上昇すれば、価格を維持するだけでは利益率が低下するため、商品単価を上げずに客単価を高める商品開発が必要になる。

その意味で、火鍋、炙り系商品、デザート、ドリンクなどの存在は今後さらに重要になる。低価格の寿司で来店客を獲得し、その後の追加注文によって売上高を積み上げる構造を強化できれば、価格競争と収益性を両立できる可能性がある。

ゼンショーグループ全体の事業構造へのインパクト

中国におけるはま寿司の急拡大は、単独ブランドの成功だけではなく、ゼンショーホールディングスの海外事業全体を考えるうえでも重要な意味を持つ。ゼンショーは牛丼の「すき家」をはじめ、「なか卯」「ココス」「ビッグボーイ」など複数の外食ブランドを運営しており、はま寿司の海外展開が大きくなれば、グループの海外成長を担う新たな柱としての存在感が高まる。

とりわけ重要なのは、はま寿司がゼンショーにとって比較的高い海外展開余地を持つ業態である点だ。寿司は世界的に認知された日本食であり、中国だけでなく東アジア、東南アジア、北米などにも展開可能なため、中国で蓄積したノウハウを他地域へ転用できる可能性がある。

これは、国内市場の人口減少という構造問題への対応という意味でも大きい。日本国内だけで店舗数を増やし続けるには限界がある一方、海外では人口増加や都市化、中間所得層の拡大を背景に外食市場そのものが成長する地域が存在するためである。

海外売上・利益の牽引

はま寿司の海外事業が重要なのは、単純に店舗数が多いからではない。2026年3月期のグローバルはま寿司事業は売上高3,202億77百万円、営業利益267億71百万円となり、前年同期比で売上高28.9%増、営業利益25.4%増という大幅な成長を記録している。

この数字は、はま寿司がゼンショーの中で単なる国内回転寿司ブランドではなく、成長性の高い事業へ移行していることを示している。特に海外店舗の増加が続けば、国内市場の成熟を補完する形で、グループ全体の売上高と利益の双方を押し上げる効果が期待できる。

ただし、海外店舗数の増加がそのまま利益増加を意味するわけではない。新規出店には店舗建設費、人材採用・教育費、物流網の整備費、広告宣伝費などが必要であり、開店直後にはむしろ利益率が低下する場合もある。

そのため、海外事業の評価では「何店舗出店したか」より、「既存店がどれだけ利益を生み、新規店がどれだけ早く投資を回収できるか」が重要になる。中国で200店舗規模に到達した現在は、店舗数を増やす第1段階から、店舗網全体の収益性を高める第2段階へ移りつつあると考えるべきである。

スケールメリットの発揮

はま寿司の強みは、店舗数が増えるほど運営効率を高められる可能性があることだ。寿司チェーンは多種類の食材を大量に調達する必要があるため、店舗数が増えれば仕入れ量も増え、調達、物流、加工、商品開発などの各工程で規模の利益を得やすくなる。

中国で数十店舗しか展開していなかった段階と、200店舗規模まで拡大した段階では、サプライチェーンの設計そのものが変わる。物流拠点を集約し、一定の食材を地域単位で大量調達できれば、店舗ごとの物流コストを低下させる余地が生まれる。

さらに、商品開発にも規模の利益が生じる。中国で開発した人気商品を多数の店舗へ横展開できれば、商品開発にかかった費用をより多くの店舗で回収できるからである。

火鍋や炙り系商品などの現地化商品も、この観点から重要になる。1店舗だけで売れる特殊商品ではなく、多数の店舗で安定して売れる商品を開発できれば、現地化そのものがチェーン全体の収益力を高める仕組みになる。

一方で、店舗数が増えるほど品質管理の難易度も上がる。寿司は生鮮食品を扱うため、食材の温度管理、衛生管理、加工工程、店舗スタッフの教育などを大量店舗で均一化する必要があり、ここで問題が発生すればブランド全体に影響する。

したがって、200店舗という規模は単なる成功の証明ではなく、経営管理能力が試される段階でもある。出店速度を落とさずに品質を維持できるかどうかが、今後の利益成長を左右する。

中国事業の潜在力とリスク

中国市場には巨大な人口と都市部の外食需要がある一方、競争環境は極めて厳しい。中国企業が運営する寿司・海鮮業態だけでなく、日本、韓国、台湾など海外発の外食ブランドも進出しており、消費者が選べる店舗は増えている。

また、中国の消費環境が常に右肩上がりであるとは限らない。住宅市場、雇用、所得、消費者心理などの影響を受けて外食支出が弱くなる局面もあり、低価格業態であっても価格だけで客を維持できるとは限らない。

その意味で、はま寿司の「低価格+豊富な商品」という戦略は一定の防御力を持つ。高額な外食を控える消費者でも、比較的安価に食事を楽しめる店舗であれば需要を維持しやすいからである。

しかし、低価格戦略には利益率という弱点がある。原材料費や人件費が上昇しても販売価格を大きく引き上げられなければ、店舗当たり利益は圧迫されるため、低価格を維持するには調達と店舗運営の効率化が不可欠になる。

ここでゼンショーの企業規模が意味を持つ。多数の外食ブランドを運営することで蓄積した調達、物流、店舗開発、人材育成などの能力を、はま寿司の海外展開にも活用できる可能性がある。

「200店舗」の次に何が起きるのか

中国で200店舗規模に到達したことで、今後の戦略は明らかに変わる可能性がある。これまでは「中国でどこまで店舗数を増やせるか」が重要だったが、これからは「200店舗をどう収益化するか」がより重要になる。

第1に考えられるのが既存店舗の生産性向上である。売れ筋商品の比率を高め、調理や提供工程を効率化し、廃棄を抑えれば、売上高が大きく増えなくても利益率を改善できる。

第2が商品構成の最適化である。低価格の寿司だけでは利益を大きく積み上げることが難しいため、火鍋、炙り商品、揚げ物、デザート、飲料など、比較的追加注文につながりやすい商品を組み合わせることが重要になる。

第3が出店地域の多様化である。上海、北京、広州、深センなどの大都市圏で一定の店舗網を形成した後は、人口規模や所得水準、競争環境、物流コストを分析しながら地方都市へ進出することになる。

ただし、地方都市への拡大は大都市より簡単とは限らない。商圏人口、賃料、人件費、物流距離、食材供給などの条件が異なるため、店舗数を増やすほど1店舗当たりの採算管理が重要になる。

したがって、今後のはま寿司中国事業は「出店競争」から「店舗網の最適化競争」へ移行する可能性が高い。スシローなど競合チェーンも店舗数を増やしている以上、単純に店舗数だけを競うのではなく、売上高、客数、客単価、営業利益率、投資回収期間など複数の指標で競争する段階に入る。

はま寿司の中国戦略が示すもの

ここまでの分析を整理すると、はま寿司の中国での急拡大は、単純な「日本食ブーム」だけでは説明できない。2014年の進出後、長期間かけて市場を検証し、2020年代に入ってから店舗展開の速度を高め、その過程で商品と価格、店舗運営を中国市場に合わせて再構築したことが大きい。

特に火鍋や炙りブリュレなどの特徴的な商品は、はま寿司が日本の標準的な商品構成をそのまま中国へ持ち込んでいないことを示している。寿司をブランドの中心に残しながら、中国人の食習慣や嗜好に合わせて商品を増やすことで、来店動機を広げている。

さらに、女性一人客や若年層などを含めた顧客層の拡大も重要である。一人でも利用しやすく、少額から注文でき、寿司以外の商品も選択できるという構造は、利用頻度を高めるうえで有利に働く。

その結果として、はま寿司は「寿司を食べるための店」から、「低価格で多様な商品を楽しめる日本発の外食チェーン」へと位置付けを広げている。これが、スシローとは異なる競争軸を形成し、中国での店舗拡大を支える要因の一つになっていると考えられる。

今後の展望

今後、中国のはま寿司がさらに成長するかどうかを左右するのは、店舗数ではなく「店舗網の質」である。200店舗規模を維持しながら各店舗の売上高と利益率を高めることができれば、中国事業はゼンショーグループの海外成長を長期的に支える事業へ発展する可能性がある。

反対に、出店を急ぎすぎて店舗当たり売上高が低下したり、人材不足や品質管理の問題が発生したりすれば、店舗数の増加が必ずしも企業価値の向上につながらない。大量出店型の外食事業では、規模の拡大と経営品質の維持を同時に実現できるかが最大の課題となる。

また、スシローとの競争も激しくなる可能性が高い。スシローがブランド力を維持しながら店舗数を増やし、はま寿司が低価格と現地化をさらに強化すれば、中国の日本式回転寿司市場は「ブランド型」と「大衆価格型」という2つの方向へ分化していく可能性がある。

この競争において、はま寿司が優位性を持つためには、単に安いだけでは不十分である。「安いのに商品が多い」「日本ブランドなのに中国人の好みに合う」「一人でも家族でも利用できる」という複数の価値を同時に提供する必要がある。

そして、この複合的な価値を大量店舗で再現できることこそが、ゼンショーが持つ最大の強みである。中国での200店舗規模への到達は終点ではなく、同社がグローバル外食企業として次の段階へ移行するための実験場になっていると評価できる。

2026年9月時点で見ると、中国のはま寿司は「海外進出の実験段階」から「大規模なチェーン展開の段階」へ移ったと評価できる。ゼンショーホールディングスが公表する2026年3月期の資料では、グローバルはま寿司の店舗数は758店舗まで増えており、国内646店舗、海外112店舗となっている一方、中国を含む海外事業の拡大が続いている。

さらに、2026年9月時点の国内はま寿司では既存店売上高が前年同月比で増加基調にあり、4~8月の累計でも既存店売上高は108.3%、客数は101.7%、客単価は106.5%となっている。これは国内での事業基盤を維持しながら海外へ成長領域を広げる余地があることを示しており、中国事業を急拡大させる経営上の余力を考えるうえでも重要である。

ただし、中国での店舗数拡大をそのまま成功とみなすことには注意が必要である。200店舗規模に到達した後は、出店数そのものよりも既存店売上高、客数、客単価、営業利益、投資回収期間などの指標が重要になり、量的拡大から質的成長への転換が求められるからである。

特に注目すべきなのが客単価と客数の関係である。低価格を武器に客数を確保しながら、火鍋、炙り系商品、デザート、飲料などの追加注文によって客単価を引き上げることができれば、はま寿司は「安さ」と「収益性」を両立できる可能性がある。

逆に、低価格を維持するために利益率を犠牲にすれば、店舗数が増えても企業価値への寄与は限定される。したがって今後の中国戦略では、値下げ競争よりも「低価格に見えるが、1回の来店で複数商品を購入してもらえる店舗」を作ることが重要になる。

中国市場での競争は第2段階へ

中国の日本式回転寿司市場は、これから本格的な競争局面に入ると考えられる。はま寿司だけでなく、スシローも中国を含む海外出店を積極化しており、食品・外食企業による海外店舗網の構築が進んでいる。

スシローを運営するFOOD&LIFE COMPANIESの資料では、2026年9月時点のスシロー海外店舗数は325店舗となっている。海外店舗には中国以外の地域も含まれるため、はま寿司中国との単純比較はできないが、日本発の回転寿司ブランドが海外で競争する構図が明確になっている。

両社の戦略が今後も分化するなら、はま寿司は「大衆性と価格」、スシローは「寿司ブランドと商品体験」という競争軸を強める可能性がある。ただし、両社とも相手の成功要因を取り込むことができるため、将来的には価格、商品、店舗体験の境界が徐々に近づく可能性もある。

はま寿司にとって最大の強みは、価格だけではない。ゼンショーが長年培ってきた多店舗運営能力と、食材調達、物流、店舗開発、人材育成などを組み合わせられる点にある。

ゼンショーは2026年3月末時点で国内4,863店舗、海外10,084店舗を展開しており、海外店舗数が国内を大きく上回る規模になっている。これは、はま寿司の中国展開を単独の寿司チェーンの海外進出としてではなく、巨大な外食企業が持つ海外店舗運営基盤の上に構築された事業として評価する必要があることを示している。

ゼンショーの海外戦略との整合性

ゼンショー自身も海外展開について、日本で培った商品開発や店舗運営をそのまま輸出するだけではなく、「現地の文化や嗜好に寄り添いながら」日常食を提供する方向を明確にしている。これは中国のはま寿司が火鍋などを取り入れていることとも一致する。

この点は非常に重要である。海外で日本食チェーンを成功させる場合、「日本らしさ」を守ることと「現地の食文化に適応すること」は対立するように見えるが、はま寿司は寿司をブランドの核として残しながら、周辺部分を現地化することで両者を両立させようとしている。

火鍋はその象徴である。寿司を完全に中国料理へ変えてしまえば日本発ブランドとしての意味が薄れるが、寿司を残したうえで火鍋を加えれば、日本ブランドとしての個性を維持しながら中国人の日常的な食習慣にも対応できる。

この考え方は中国以外の市場にも応用できる可能性がある。例えば地域ごとに好まれる食材や味付け、サイドメニューを変えながら、寿司、低価格、多品種、注文しやすい店舗運営という基本モデルを維持すれば、はま寿司の海外展開は中国以外でも再現可能になる。

つまり中国事業の価値は、中国国内で稼ぐ利益だけではない。中国で成功した「日本食を現地化しながら大量展開する方法」そのものが、ゼンショーグループの海外展開にとって重要な経営資産になる。

スケールメリットの本格化

200店舗規模という数字が持つ最大の意味は、チェーン全体でスケールメリットを追求できる段階に入ることにある。店舗数が少ない段階では、商品開発や物流インフラへの投資負担が店舗数に対して大きくなるが、店舗が増えれば同じ仕組みを多数の店舗で利用できる。

調達についても同様である。多店舗展開によって食材需要が安定すれば、仕入れ計画を立てやすくなり、物流網を効率化できる可能性がある。さらに需要予測の精度が高まれば、寿司ネタや食材の廃棄を抑え、低価格路線と利益率の両立につなげられる。

店舗運営でも標準化のメリットがある。注文、調理、提供、会計などの工程を一定の方式に統一できれば、店舗ごとの差を縮小できる。

ただし、ここには明確な逆方向の力も働く。店舗数が増えるほど、1店舗当たりの小さな問題がチェーン全体へ波及する可能性が高くなるため、衛生管理、食材管理、従業員教育、接客品質を維持するための管理コストも増加する。

したがって、今後のはま寿司にとって「規模の経済」と「規模の不経済」をどのように管理するかが最大の経営課題となる。200店舗を300店舗、400店舗へ増やすだけではなく、店舗数が増えるほど1店舗当たりの効率も高まる仕組みを構築できるかが重要になる。

最大のリスクは「急拡大そのもの」

はま寿司中国事業の最大のリスクは、競争相手ではなく、むしろ自社の急拡大にある可能性がある。急速な出店は売上高を押し上げる一方、店舗管理、人材確保、物流、品質管理などの組織能力が追い付かなければ、既存店の品質低下を招くからである。

特に寿司業態では食材の鮮度や衛生管理がブランド価値と直結する。低価格だからこそ「この価格でこの品質なら十分」という信頼を失わないことが重要であり、一度でも品質面で大きな問題が発生すれば、価格競争力だけでは回復できない可能性がある。

さらに中国市場では、消費者の嗜好変化も速い。今日人気のある商品が数年後も同じように売れるとは限らず、火鍋や炙り系商品のような現地化商品も継続的に改良する必要がある。

したがって、はま寿司に必要なのは「中国人向け商品を一度開発すること」ではない。「中国人消費者が何を求めているかを継続的に把握し、その結果を商品と店舗運営に反映する仕組み」を作ることである。

「約50店→200店超」の意味

今回の「約50店から200店超へ」という現象を長期的な視点で捉えると、単純な4倍増という以上の意味がある。2014年の中国進出から初期の店舗展開までには時間を要し、2020年末には12店舗だったことから、はま寿司は中国市場で長期間にわたって事業モデルを検証してきた。

その後、2024年には中国で60店舗規模に達し、そこからさらに店舗数を大幅に増やしている。つまり、最初から中国市場を大量出店の対象としたのではなく、一定期間をかけて「中国で通用する日本式回転寿司」の形を見つけた後、出店速度を上げたと見る方が実態に近い。

この点から、「爆発的拡大」という表現には一定の妥当性がある一方、その前提には10年近い市場適応の蓄積がある。急拡大しているように見える現在の店舗網は、実際には長期間の試行錯誤を経て成立した結果である。

したがって、今後の成否を判断する際には、現在の出店速度だけでなく、2014年以降の時間軸を見る必要がある。長期の検証期間を経たうえで拡大局面に入ったのであれば、単なる一過性の流行ではなく、ある程度再現性のある事業モデルが確立された可能性が高まる。

まとめ

中国のはま寿司急拡大は、日本の回転寿司が中国で単純に人気になったという話ではない。長期間の市場適応を経て、低価格、多品種、日本ブランド、現地化、デザートや飲料などを組み合わせ、中国人の外食行動に合わせて業態そのものを再設計したことが最大のポイントである。

火鍋や炙りブリュレのような商品は、その象徴的な存在である。日本の寿司文化をそのまま再現するのではなく、中国人が知っている味や食文化を取り込みながら、「日本の回転寿司」というブランドの核を維持することで、より広い顧客層に対応している。

さらに、女性一人客や若年層などを含めて利用場面を広げていることも重要である。少量から注文でき、寿司以外の商品も選べ、比較的低価格で利用できるという仕組みは、家族連れ中心の外食から一人利用や友人同士の利用まで需要を広げる力を持つ。

スシローとの競争では、はま寿司は低価格と商品数、現地化を武器にした大衆型のポジションを強める可能性がある。一方、スシローは日本発の寿司ブランドとしての商品力や体験価値を前面に出すことで差別化を図る構図が想定される。

ゼンショーにとっても、この中国展開は極めて重要である。2026年3月期にグローバルはま寿司の売上高が3,202億77百万円、営業利益が267億71百万円まで拡大していることを考えれば、はま寿司はすでにグループの成長事業の一つとして無視できない規模になっている。

今後の焦点は「200店舗を超えたか」ではなく、「200店舗以上を高収益で運営できるか」に移る。出店速度、客数、客単価、商品構成、物流効率、人材育成、衛生管理を同時に改善できれば、中国事業はゼンショーの海外成長を長期的に牽引する可能性がある。

結論として、中国のはま寿司急拡大は、日本食ブームだけを背景とした現象とは評価しにくい。長期的な市場適応、徹底したコストパフォーマンス、現地化商品、幅広い顧客層への対応、そしてゼンショーの大規模な店舗運営能力が組み合わさった結果であり、2026年は中国事業が「実験」から「本格的な海外成長事業」へ移行する転換点と位置付けることができる。

検証上の注意点

なお、「約50店→200店超」という記事タイトルについては、店舗数の基準日を明確にする必要がある。ゼンショーの公開資料では中国店舗数の開示時点や集計対象が資料ごとに異なる場合があるため、記事では「中国大陸」「海外全体」「期末時点」「報道時点」を混同しないことが重要である。

また、火鍋や炙りブリュレが女性客の増加に直接どの程度寄与したかについては、公開資料だけでは因果関係を定量的に証明できない。したがって、「女性客をつかんだ」と断定するより、「女性客を含む顧客層の拡大を狙える商品・店舗構成」として評価する方が検証記事としては適切である。

同様に、スシローとの比較についても、両社の中国事業の売上高や店舗当たり利益などが同一基準で公開されているわけではない。そのため、店舗数や商品戦略を比較しながら、収益性については推測と事実を明確に区別する必要がある。


参考・引用リスト

  • ゼンショーホールディングス「はま寿司 月次推移」 — 2026年9月時点の国内はま寿司の既存店売上高、客数、客単価、店舗数などの最新データ。
  • ゼンショーホールディングス「2026年3月期 第1四半期決算短信」 — グローバルはま寿司の売上高、営業利益、店舗数、商品構成などを確認するための基礎資料。
  • ゼンショーホールディングス「ZENSHO STORY/世界展開」 — 2026年3月期の国内外店舗数と、ゼンショーの海外展開方針を確認する資料。
  • ゼンショーホールディングス「会社概要」 — 2026年3月末時点のグループ会社・海外事業体制を確認するための資料。
  • ゼンショーホールディングス「会社案内」 — 中国におけるゼンショーグループの店舗展開と、現地文化・嗜好に合わせた海外戦略を確認する資料。
  • FOOD&LIFE COMPANIES「中期経営計画」関連資料 — スシローの海外展開、中国大陸を含む海外戦略、海外事業の拡大状況を確認する資料。
  • FOOD&LIFE COMPANIES「月次情報」 — 2026年9月時点のスシロー国内外店舗数を確認する資料。
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