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メキシコ、カルテルの支配に苦しむ地域はW杯楽しめず、暴力が常態化

メキシコ代表は大会で勝利を重ね、戦いを続け、各地のファンゾーンや広場では多くの人々が声援を送っている。
2026年4月26日/メキシコ、シナロア州クリアカン、銃撃事件が発生した現場(AP通信)

FIFAワールドカップが共同開催国メキシコを熱狂に包む一方、麻薬カルテルの暴力に苦しむ地域では祝賀ムードが広がらず、住民が恐怖の中で試合を見守る現実が浮き彫りになっている。

メキシコ代表は大会で勝利を重ね、戦いを続け、各地のファンゾーンや広場では多くの人々が声援を送っている。しかし、カルテルの抗争が続く西部ミチョアカン州や北西部シナロア州、中部ベラクルス州などでは事情が大きく異なる。銃撃や誘拐、爆発物を搭載したドローンによる攻撃が日常化している地域では、人々は外出を控え、自宅で静かに試合を観戦するケースが目立つ。

シナロア州クリアカンでは近年激化しているカルテルやギャング間の対立によって商店の営業時間短縮や外出自粛が常態化している。代表戦が終わっても街頭で歓声を上げる姿はほとんど見られず、飲食店やバーも客足が伸び悩んでいる。住民からは「勝利はうれしいが、安心して祝える状況ではない」との声が聞かれる。

政府は大会期間中、10万人を超える治安要員を投入し、開催都市を中心に警備を強化している。シェインバウム(Claudia Sheinbaum)大統領は殺人事件の発生件数が減少傾向にあると強調し、海外から訪れる観光客に対して安全性をアピールしてきた。しかし、治安問題の専門家は、依然として多くの地域で犯罪組織の支配や失踪事件、恐喝が続き、統計上の改善だけでは住民の不安は解消されないと指摘する。

一部の地域では、W杯が暴力に覆われた日常を一時的に忘れさせる貴重な機会となっている一方、その祝祭は限定的なものにとどまる。住民の中には「試合を見ている間だけは現実を忘れられる」と語る人もいるが、試合終了後には再び緊張した日常へ戻らなければならない。

世界最大級のスポーツイベントはメキシコに国際的な注目と経済効果をもたらしている。しかし、その熱狂の陰では、暴力の脅威によって歓喜を素直に表現できない地域が存在する。国全体が一つになって代表チームを応援するという理想とは裏腹に、カルテル支配の影響を受ける住民にとってW杯は、希望と現実が交錯する複雑な大会となっている。

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