SHARE:

メキシコ上院が憲法改正案を可決、外国勢力による選挙介入阻止へ

改正案では、外国政府や外国企業、国外組織などが選挙活動に資金提供したり、デジタル工作を通じて有権者に影響を与えたりした場合、選挙管理当局や司法機関が選挙結果の取り消しを判断できるようになる。
メキシコ、首都メキシコシティの議会上院(Getty Images)

メキシコ議会上院は29日、外国勢力による干渉が確認された場合、選挙結果を無効にできるようにする憲法改正案を可決した。国家再生運動(MORENA)を中心とする与党連合が主導したもので、サイバー攻撃や外国資金による世論操作への警戒が背景にある。法案は賛成多数で可決され、今後は州議会での承認手続きに進む。

改正案では、外国政府や外国企業、国外組織などが選挙活動に資金提供したり、デジタル工作を通じて有権者に影響を与えたりした場合、選挙管理当局や司法機関が選挙結果の取り消しを判断できるようになる。また、候補者や政党が外国勢力と協力していたことが判明した場合には、当選無効や立候補資格停止などの措置も可能になる。

オブラドール前政権以降、メキシコでは主権保護を重視する動きが強まってきた。特に近年はSNSを利用した情報操作や、国外から流入する政治資金への懸念が高まっている。与党は「民主主義を守るための防衛策」と強調し、外国からの不透明な影響力行使を防ぐ必要性を訴えた。

今回の法改正の背景には米国との緊張関係もある。メキシコ政府は近年、麻薬対策や移民政策を巡り、米政治家やシンクタンクが国内政治に影響を与えようとしていると繰り返し批判してきた。とりわけ、米保守系団体がメキシコ国内の市民団体に資金提供しているとの疑惑が議論を呼び、与党は「外国勢力による政治介入の一例だ」と主張している。

一方、野党側は今回の改正案に強く反発。「外国干渉」の定義が曖昧で、政権が恣意的に選挙結果を覆す口実になりかねないと主張した。特に国際機関や外国メディアによる選挙監視活動まで規制対象になる可能性を懸念する声も出ている。野党議員の1人は議会で「民主主義防衛の名の下に、政権が権力を強化する危険な法案だ」と訴えた。

メキシコでは2027年に中間選挙を控えており、今回の法改正は今後の選挙制度や政治運営に大きな影響を与える可能性がある。専門家の間でも評価は分かれている。サイバー攻撃や外国による情報工作が世界的な問題となる中、一定の法整備は必要だとの意見がある一方、司法や選挙管理機関の独立性が十分でなければ、政権による政治利用につながるとの懸念も根強い。

今回の改正案は民主主義を守るための制度強化なのか、それとも政権の権限拡大につながるのか。メキシコ社会では今後、選挙の公正性と国家主権のバランスを巡る議論がさらに激しくなりそうだ。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします