SHARE:

メキシコ、外国勢力による選挙介入阻止へ、下院が憲法改正案可決

改正案は賛成307ー反対128(棄権1)で可決された。
2026年5月21日/メキシコ、首都メキシコシティ、シェインバウム大統領(ロイター通信)

メキシコ議会下院は28日、外国勢力による選挙介入を選挙無効の理由として追加する憲法改正案を可決した。法案は与党・国家再生運動(MORENA)と他政党の賛成多数で承認され、上院で審議入りする見通しだ。可決されれば、外国政府や海外組織による資金提供、偽情報拡散、サイバー攻撃などが選挙結果に影響を与えた場合、選挙そのものを無効と判断できるようになる。政府は「国家主権防衛のための措置」と説明しているが、野党は「政権に都合よく利用される危険がある」と強く反発している。

改正案は賛成307ー反対128(棄権1)で可決された。シェインバウム(Claudia Sheinbaum)大統領記者会見で、「外国からの干渉から民主主義を守る必要がある」と法案を支持した。一方で、「どの行為を介入とみなすかは慎重に定義しなければならない」とも述べ、法文の曖昧さが課題であることを認めた。

今回の改正案では、従来の不正選挙や違法資金供与に加え、「外国勢力による介入」が新たな無効理由として憲法に明記される。背景には、近年世界各地で問題化しているSNSを利用した情報操作やサイバー攻撃への警戒感がある。与党は外国政府や企業、国際的利益団体が選挙結果を左右しようとするケースを想定している。

しかし、野党側は「介入」の定義が極めて曖昧だと批判する。保守系野党などは、「政府が不利な選挙結果を覆すために恣意的運用を行う恐れがある」と警告した。特にSNS上の言論や海外メディア報道まで対象になりかねないとの懸念が広がっている。野党議員の1人はX(旧ツイッター)への投稿で、「批判的報道や外国機関の調査まで介入とされれば、民主主義そのものが損なわれる」と主張した。

メキシコでは過去にも選挙介入を巡る論争が繰り返されてきた。2006年大統領選では当時のオブラドール(Andrés Manuel López Obrador)候補が「政府や企業による違法介入があった」と主張し、大規模デモに発展した経緯がある。今回の法改正論議でも、こうした記憶が政治的対立をさらに激化させた。

専門家の間では、AI技術を利用した偽情報拡散や世論操作が今後の選挙で大きな脅威になるとの指摘も強まっている。政府は「新時代の選挙防衛策」と位置づけるが、法的基準が不明確なまま導入されれば、逆に政治的不信を拡大させる可能性もある。

改正案は今後、MORENAが支配する上院で承認を得た後、州議会の批准を経て成立する。2027年総選挙を前に、メキシコでは「民主主義防衛」と「政治利用リスク」の間で激しい議論が続く見通しだ。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします